働き方に関する本を書いています(2021年3月出版予定)。その内容を順次ご紹介して行きます。

●満足度の高い会社(株式会社LIFULL)

日本最大級の不動産・住宅の情報サイト「ライフルホームズ」を運営している株式会社LIFULL(株式会社ネクストから2017年4月に名称変更)は、2017年3月に、リンクアンドモチベーション社主催の「ベストモチベーションカンパニーアワード2017」で第1位に選ばれた他、GPTW(Great Place to Work Institute Japan)が世界50か国から選ぶ「働きがいのある会社」ベストカンパニーに7年連続で選出されるなど、最も働きがいのある会社の一つです。

同社執行役員で、人事の責任者である羽田幸広さんは、『日本一働きたい会社のつくりかた』(PHP)で、LIFULLが働きがいのある会社になった秘密を紹介されています。羽田さんがLIFULLに入社される前に在籍しておられた会社では、社員のことを考えず、会社の利益だけを重視した会社のやり方や、成果を上げるために必死で頑張った社員が酷い扱い受けて退職して行くことなどに常々疑問を感じておられました。そして、2005年にLIFULLに移籍後、人事担当になったものの、それまで人事の経験がなかった羽田さんは、とても単純に、「自分が社員ならどんな環境で働きたいか」を考えて、以下のようなことを大事にしてこられました。

■自分がやってもらって嬉しいことをやり、やられたら嫌なことは控える

■やらされ仕事ではなく、自分の意志で仕事ができる環境

■一緒にいたいと思う人と働く

■会社に貢献した人が報われる

羽田さんは、このような会社を作って行くために、2008年1月には、「日本一働きたい会社プロジェクト」を開始しました。当時323名の社員のうち、80名が自分の仕事をやりながらこのプロジェクトに参加したということから、羽田さんの力もさることながら、社員の皆さんの会社を変えたいという思いが相当強かったことが分かります。

このプロジェクトでは、キャリアデザイン、キャリアディベロプメント、キャリアエントリー、評価の4テーマについて議論がなされています。ここには、役員と人事以外に有志の社員が加わっていたのです。一般の社員が、会社の運営に関わる内容に自由に参加できたというのは、私には非常な驚きで、新鮮でもあります。

一人ひとりの社員が、自分達が会社を動かしているんだと感じたら、会社とは一部の経営者だけのものではなく、まさに自分達のものと感じられるのでしょう。社員一人ひとりが会社を経営しているような気持になるのかも知れません。

一人ひとりの社員が会社経営に参加できるということは、社員が大切にされているということです。私は2020年9月に開催された働き方EXPO2020で羽田さんの講演をお聴きしました。その中で最も印象に残った言葉は、「会社が社員を大切にすれば、社員は会社を大切にする」というものです。

人間同士の関係ならば、このことは当然の事として、皆さん良く理解されていると思いますが、社員対会社となると、必ずしもそうはなっていません。会社は社員に給与を払っているので、会社は社員よりも強い立場にあります。「会社は会社の方針が最優先で、そのために社員を大切にできないん場合があってもやむを得ない。それがいやな社員は辞めればいいんだ」とあからさまに言わないまでも、そうなってもやむを得ないという考えの会社はまだまだ多いように思います。

ところで、会社とは実態のないもので、実際は人が会社を経営しています。会社と社員との関係とは、経営者と社員の関係、即ち、人間同士の関係なのです。羽田さんの言葉を言い換えれば、「経営者が社員を大切にすれば社員は会社を大切にする。」となりますし、さらに言い換えれば、「上司が部下を大切にし、社員同士が互いを大切にし合えば、皆が会社を大切にする。」ということになります。

羽田さんが素朴にお考えになったことが、一人ひとりの心を動かし、やる気を引き出して、LIFULLが「働きがいのある会社」になったのですから、人は誰でも、適切な環境で働けたら、大きな力を発揮することができるのだなと感じました。

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