働き方に関する本を書いています。2021年3月に出版予定です。

ここではその内容を順次ご紹介して行きます。

●変化を恐れない

 信念を持つとか、意志が固いということは良いこととされることが多く、これらは、気持ちがふらふらしないで、一旦決めたことを守り通すという印象を与えます。確かにそのような面も必要ですが、考え方には常に両面があります。「意志が固い」の反対は、いい加減、軟弱となるかもしれませんが、柔軟性がある、適応力があるとも言い換えられます。

 一人の人間の考えることが、何十年もずっと同じで変わらないという方が不自然かも知れません。今まである方向に進んでいたけれども、どうもこちらではないなと思ったら、潔く方向を変えることも必要です。そのことは恥ずかしいことでも何でもありません。

 また、方向を変えたことで、方向を変える前にあれこれやっていたことを、「寄り道」と考え、無駄なことをした、時間を浪費したと考えることも当たっていません。私達が現在あるのは、全てこれまでの自分自身の行動の結果なのです。あのときこんなことをしたけれど、あれは間違っていたと後から考えることもあるかも知れません。しかし、そのとき真剣に考えて行動したのであれば、後悔する必要はありません。横道にそれたからこそ、分かることもあるのです。

 コンピュータが進歩して、今後の自分の前に現れる全ての別れ道が予見できて、それら全ての道の行先を予測し、それらを比較して、最良の道が分かるとします。コンピュータが選んだ道を誰もが選択したとしたら、間違いない一生が待っているでしょうが、人生は随分つまらないものになるでしょう。コンピュータが選んだ最良の道以外は、全て失敗、寄り道、時間の無駄遣いとされるのです。

 こう考えると、色々なことに迷い、躓き、悩みながら選択することがとても貴重な経験に思えて来ます。旅行でも、ネットに載っていたきれいな景色を確認して帰って来るだけでは面白くありません。そこで出会った人との短い触れ合い、観光案内には出ていないけれど、とても素敵な場所があるのを発見したこと、人から聞いたところに行ってみたくて、滞在を一日延ばした、そういうものが旅に彩を与えてくれるのです。

 ですから、一応方向を決めて歩き出した後は、その先で出会う人や様々な出来事を楽しみながら、頭と心を柔らかくして、道草、引き返し、迷子になることを楽しみながら進むのが良いのです。どこかに辿り着くのが旅ではなく、どこをどんな風に歩いたかが旅なのです。

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