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「JAMPの視線」No.78(2021年6月27日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2021年6月27日

政府の成長戦略会議で取りまとめられた「成長戦略実行計画」が今月18日の臨時閣議で閣議決定されました。その内容は、様々な分野での取組みが網羅されたボリューム感あるものではありますが、弊社で国際金融都市構想の実現に向けた政府・東京都の取組みをご支援させて頂いていることから、私は、「第13章 重要分野における取組」の「6. 国際金融センターの実現」における取組み施策について、とりわけ関心をもって読ませて頂きました。
この「6. 国際金融センターの実現」は、全体でも10行程度の記載に留まっており、その内容も、事前に各種メディアでも報道されていた通り、概ね予想通りのものでしたが、最後に記載されている、「年金等国内の大規模運用機関の運用方針を含む海外金融機関の関心が高い情報を戦略的に発信する」という記述に、少なからず驚きを感じました。
かねてから弊社があちこちで主張している通り、国際金融都市構想の実現を阻む最大のボトルネックは、巷で言われているような税率の水準や英語でのコミュニケーションが困難なこと、日本株市場への信認等ではなく、ひとえに東京を中心とする日本において、事業機会が乏しいことであると考えています。即ち、海外の資産運用会社やその他金融機関にとって、日本に進出したところで、儲からないので進出しないということに尽きるということです。海外金融機関にとって魅力的なのは約2,000兆円にまで積みあがった巨額の個人金融資産等へのアクセスであり、そこで事業機会が見いだせるのであれば、多少のコスト(税金や言語コミュニケーション等もコストの一種)を負担したとしても、喜んで参入したい金融機関は多いと確信しています。
ところが、年金基金をはじめとする国内機関投資家は新興・海外資産運用会社への運用委託には非常に慎重であり、また、個人向け資産運用プロダクトの提供においても、銀行や証券会社等の販売金融機関はもっぱら国内資産運用会社のプロダクトばかりを販売しており、海外資産運用会社にとっては、日本に所在する日系資産運用会社と何らかのパートナーシップを構築し、そこ経由で機関投資家や販売金融機関にアプローチするという迂遠なやり方を取らざるを得ないというのが現状です。もちろん、実際の構造はそれほどシンプルではなく、運用会社評価コンサルティング会社やゲートキーパー等のステークホルダーのインセンティブ構造が複雑に絡み合っているのですが。いずれにせよ、いかに政府や東京都が国際金融都市の旗を掲げ、振り回しても、機関投資家や販売金融機関に強いインセンティブ等が無い限り、変わりようはありません。
一方、政府が国際金融都市構想に懸命であっても、機関投資家や販売金融機関にはそれぞれの受益者や顧客に対するフィデューシャリーデューティーがあり、受益者利益に直結しない理由で運用方針やプロダクト提案を調整するというのは困難であることも事実です。国際金融都市構想を推進するのが金融庁や経済産業省であり、GPIF等の公的・私的年金基金の運用を監督するのが厚生労働省であるという省庁間の役割分担もそのインセンティブ設計を進めようとした場合のボトルネックのひとつになるでしょう。
そういう様々なことがらを考慮すると、今回の「成長戦略実行計画」に盛り込まれた「年金等国内の大規模運用機関の運用方針を含む海外金融機関の関心が高い情報を戦略的に発信する」というのは、年金等の機関投資家の運用方針を調整するのは現実的に難しいことは関係各所も重々承知しているものの、海外資産運用会社等にとっては事業機会の不足こそがボトルネックであるという問題意識を正確に理解し、政府としてそこに取り組むという意思表明のひとつであると私は解釈しました。「単なる情報発信に効果なんて期待できない」という意見もちらほらと聞かれますが、そうではなく、本施策そのものに効果がないことはその通りかもしれないものの、政府として正確に問題意識を持ち、課題設定を行い、取り組む姿勢を明らかにしたことが何よりも重要であると考えるものです。日本の国際金融都市構想はいよいよこれからが本番です。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一) 

2021年6月20日
【「スマホ銀行」4年で4倍、世界で300社 国内地銀も始動】
大原のコメント→
銀行が提供する金融サービス(機能)は主に「資金移転(決済・送金)」と「資金供与(融資)」であり、いずれもその金融サービスが対象とする経済活動に伴う資金需要の時期は現在もしくは近い将来であり、金額も推計が容易であるため、利用者が専門家の助けなく利用しやすいという特徴を持っています。
そのため、もちろんスマホアプリやツールの利用に関するサポートは必要になる可能性はあるものの、金融サービスそのものを利用するための専門家のサポートの必要性は比較的小さいことが一般的です(ex コンビニでコーヒーを買った時のSUICA決済やAmazonで物品を購入した時のクレジットカード決済をイメージして頂ければわかりやすいと思います)。
一方、その他の金融サービスである「資産運用」と「リスク移転(保険)」は、資金需要の時期が遠い将来であり、そのためもあって金額の推計も容易では無いという特徴があります。特に、資産運用商品は利用(契約)の翌日から時価が変動し始めるため、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/5948905?ref=user_121187

2021年6月20日
【JPモルガン、英ロボアド大手買収 デジタル銀参入へ拡充】
大原のコメント→
英国・Nutmegとの出会いは、私が従来型資産運用会社を飛び出し、スタートアップ起業家として転身したきっかけとなった私的に大きな出来事であり、久々にニュースでその名前を見て、懐かしく感じます。
従来型資産運用会社で様々な新商品開発・営業に携わるなか、資産運用商品の飽和による付加価値のコモディティ化と利潤低減に対して、言語化できないまでも悶々と悩んでいた私にとって、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/5950137?ref=user_121187

2021年6月23日
【メガ追い詰めた大物金融庁OB激白、地銀に決定的に欠ける「三つのモノ」】
大原のコメント→
地域銀行の今後の提供サービスにおいて、エクイティ・デジタル・コンサルティングの3点が不可欠であるということや、問題は地域銀行の数ではないということ等、全く同意です。
企業部門の資金余剰、少子高齢化、低金利等の環境変化を受け、従来型サービス・事業モデルが通用しなくなってきていることは異論が無いと思われます。
地域の法人・個人のお客様に対して、預貸中心のサービスを提供するという硬直的なサービス・事業モデルから脱却し、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/5957136?ref=user_121187

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2021年6月22日
【りそな、女性管理職4割以上に…グループ6社で30年度までに】
長澤のコメント→
本記事のように、女性行員の管理職への積極的登用はもちろん賛成ですが、得てしてリテール営業に比べ法人営業や本部勤務の方が管理職となる可能性が高いと言われるなかでは、一般に女性行員の比率が高い営業店をはじめとしたリテール部門のキャリプランをしっかり行員に示す、具体的には、リテール部門でもしっかり実績を積むことで、法人営業に引けを取らない評価を得ることができるということを示すことが、組織全体のモチベーション向上、生産性向上には重要かと思います。
 金融庁のモニタリングレポート(※)においても、投資信託等の販売を行うリテール部門に「若手職員を多く配置する傾向が見られたが、販売員としての明確なキャリアプランを設定していないなど、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/5953625?ref=user_6551307

メディア掲載情報

■メディア掲載:「金融ビジネス 最前線の変革者達」
第19回 STOCK POINT株式会社 代表取締役 土屋清美氏
「金融マーケティングの“見えざる革命”」
https://www.jamplatform.com/news/2021/06/24/2194/

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