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よみがえるダンジョンの思い出 / LEGEND OF GRIMROCK

 週末はSTEAMのセールで買った"Legend of Grimrock"というゲームで遊んでいた。これは、かつてAtari STやAmigaなどの海外PCでリリース(1987)されていた"ダンジョンマスター"のゲームデザインを踏襲したRPGで、2012年リリースの作品である。僕のPCゲーム歴はちょうどその頃から止まっていたので、今頃になって「おもしろい、おもしろい」と言いながらプレイしているのである。

 本作のオリジナルとも言える"ダンジョンマスター"の話になるが、日本ではX68000(1990)やFM-TOWNS、コンシューマではスーパーファミコン(1991)などに移植され、一定の人気を得ていた。学生時代の友人はスーファミで遊んでいたし、僕自身はX68000版を懸命に遊んだ記憶がある。4人のキャラクターでパーティを組み、3Dで描かれる迷宮を歩き回るファンタジーRPGだ。特徴的だったのは、同じ3Dダンジョンを舞台としたウィザードリィなどと異なり、リアルタイムに状況が変化するゲームだったということである。特に、モンスターと対峙したときには遅滞なく状況を判断し、各キャラクターの持つ武器や魔法のアイコンを素早くクリックして戦闘を行わなければ、あっという間に全滅してしまう緊張感のあるゲームだった。

 さて、"Legend of Grimrock"に話を戻そう。ゲームをスタートすると、実に簡潔にストーリーが語られる。グリムロック山の山頂にある大きな穴から突き落とされた囚人4人が、迷宮と化した山の中をさまよいつつ、山の麓にある出口を目指すという話のようだ。決して長々と語られない前置きに、まず好印象。

 ゲーム画面を見ただけでダンジョンマスターフォロワーとわかるゲームデザイン。もう直感的に何をどうすればいいのか理解できる。おそらく、ダンジョンマスターを知らなくても操作に困ることはないだろう。シンプルながら、優秀なインターフェースデザインだ。

 ゲームは、ダンジョン内の仕掛けを解いて道を探しつつ、モンスターと戦ってレベルを上げながら下層への階段を見つけることで進行していく。パズル的な謎解きを要求される箇所もあるが、それほど難しくはない。壁にそれっぽくルーン文字など書かれていたりするがなんのことはない、クリックすると英語で説明が出る。雰囲気を大切にしつつ、遊びやすく作られていて安心できる。ちなみに英文それ自体も難しくないので、日本語表示には対応していないものの、チュートリアルも含めてプレイにはそれほど困ることはないだろう。

 前述したとおり、戦闘はリアルタイムに行われるため、とにかく手に持った武器のアイコンをクリックするのみ。ヒット&アウェイで、後退して敵の攻撃を避けることもできる。リアルタイムではあるが、アクションと言うほどのテクニックは必要とされず、最初の戦闘からとっつきやすい。この辺りのゲームバランスがこのゲームに対する敷居を下げていて、本当に遊びやすいつくりになっている。

 もちろん、クリックして殴るだけでは芸がない。ファンタジーらしく魔法も用意されている。ルーンのアイコンを組み合わせて、魔法発射ボタンを押せば、ちょっとした武器より遥かに強力な魔法をぶっ放すこともできる。これがまた爽快なのである。魔法攻撃はルーンの準備や、MPとのトレードオフで通常攻撃よりほんのちょっと発動までの難易度が高めというのがまた、ファンタジー的にリアリティがあってよい。この、本当に『ほんのちょっと』難しいだけってところがとてもいいのだ。絶妙なバランス。

 ダンジョンの構造は割とシンプルである。しかも、オートマッピングですぐに地図を参照できるので、無駄に迷子になってさまよい歩くこともない。冒険心を満たしつつ、ストレスフリーに歩き回れる3Dダンジョンとなっている。これ、囚人たちかんたんに脱出できちゃうんじゃないの?と心配になってしまうぐらいだ。

 しかし、だからといって高をくくっていると、突然強力な敵が現れて全滅したりするから、決して油断してはならない。安易にはクリアできない絶妙な難易度に調整されている。本当にゲームバランスのよさに舌を巻くゲームだ。一度やられても戦術を考え、工夫することできっとその強敵は乗り越えられる。そうやって挑戦しようと思わせるレベルデザインが素晴らしいゲームなのである。

 さて、冒頭でも述べたように、2019年11月末のSteamセールでこのゲームを購入したのだが、今回のセール価格は592円。まだクリアはしていないが、このゲームがこの価格で遊べるなら実にお買い得だ。かつてダンジョンマスターにハマった人も、くらーいダンジョンに潜っていく雰囲気が大好きな人も、きっと楽しめる1本だろう。7年前のゲームながら、それほど古さを感じさせないグラフィックも好感触だし、今から遊んでみるのはいかがだろうか。

 ちなみに続編もあるということで、本作をクリアした暁には、そちらにも挑戦しようかと考えている。いや、こういう楽しいゲームが出てくるから、Steam漁りはやめられない。そう考えると、Steam自体が地の底深く続くダンジョンのようなものなのかもしれない……などと考えつつ、今日もダンジョンをさまよい歩くことにしよう。


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