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【映画】インスティゲイターズ 〜強盗ふたりとセラピスト〜

大学の後輩、野坂尚也が吹替に出ているというのもあって鑑賞。
Apple TV+の長編先品(ドラマシリーズの方が長いけど、要は映画みたいなフォーマットの単発作品ということ)で、劇場公開はしない方の映画です。
先日、Apple TV+はジョージ・クルーニーとブラッド・ピットの『ウルフズ』の劇場公開を中止したのが話題になりました。
日本では『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』の入りが良くなかったのがいけなかったのかな。
洋画離れの昨今、スターが出ている大作でも劇場公開が難しい状況なんでしょうか。

『インスティゲイターズ』はクルーニー+ピットの次ぐらいの世代のスターであるマット・デイモンとケイシー・アフレック主演のバディもののクライム・コメディで、悪役(悪徳市長とその裏金を狙う犯罪組織と、双方に悪役がいるわけですが)にアルフレッド・モリーナ、ロン・パールマン、トビー・ジョーンズと豪華なキャスティングです。
カーチェイスが配信作品とは思えない派手さで、車が破壊されまくります。
建物の破壊も複数回あります。

映画としては、犯罪に手を染めることになった心に傷を持つマット・デイモン、一緒に計画に参加するケイシー・アフレック、この二人が現金強奪に失敗して逃走するんですが、そこにセラピストのホン・チャウが絡むことで面白くなります。
主役の二人のメチャクチャさに対して冷静で客観的、しかし共感的な姿勢を示すこともできるセラピストという人物配置はすごく面白くて、クライム・ムービーへの
視点が広くなったり深くなる感覚があります。

彼女がヒロインであることでの映像的な地味さというのはあるんですが、このあたりは『アーガイル』でも感じられた、映画のヒロインを演じる俳優の姿に幅を持たせようとの意思はあるのかなと思いました。
ホン・チャウ演じるリヴェラ医師は圧倒的に説得力があって、やたらと頭のいいアジア系の女性っていうキャラクターにはベストマッチです。

ただ全体には、もうひと味あるといいかなとは思ってしまうところがあって、リヴェラ医師のもうひとつの面が描かれたりとか、そういうのもあるとさらに満足度が上がりそうなんですが、短めの尺におさえる娯楽作品としてのちょうど良さもあります。
悪徳市長が政治資金パーティでためこんだ裏金を奪う、っていう始まり方には、おっと思ったのですが、その関係の描写はそこそこ荒唐無稽でそんなにリアリティがあるわけではないので、クライムアクションであってコメディでもある、っていう見方で良いのでしょう。

野坂尚也も吹替では、金庫番や狙撃隊の指揮官などで活躍。
でも盛り上がるシーンだったのあって、本人に教えてもらうまで全然気づかなかった……

監督のダグ・リーマンは『ボーン』シリーズで有名ですが私はそれは観てなくて、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』をBDで、『カオス・ウォーキング』を劇場で観ました。
どっちも、ちょうど良い湯加減とちょっとの物足りなさ、みたいな感じだったので、今回もそれに近いです。

本当は、こういう映画が普通に劇場にかかる世の中になって欲しいんだよなーって思ったりもしてます。
自分が必ず観に行く、っていうことはないんだけど、「今日は映画館で何か観ようかな」っていうときに選ぶのに困らないぐらいのラインナップとして、こういう作品がいくつもあって欲しいんですよねー。
つまり観ない可能性もあるけど揃えておいてくれ、っていう、ないものねだりですから「勝手なこと言うな」って話なのはわかってます。
これが、現代の映画興行とりわけ洋画の貧しい状況そのものってわけですね。
みんな劇場に行こうぜっていう話です。

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