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学生起業家がVCからの評価を高めるために 〜社会人起業家との比較優位性を示すには〜

シードVCのジェネシア・ベンチャーズでインターンしている水谷圭吾(@keiggg_gv)と申します。

本noteでは、私がVCでインターンさせていただく中で気づいた、VCから資金調達を受けたい学生起業家が、VCとの面談において意識したほうが良いことを紹介します。学生起業家や起業家予備軍の方々にはぜひ読んでいただきたいです。

結論を一言でまとめると、
社会人起業家との比較優位性を示せれば評価がポジティブになりやすい
ということです。

VCは「起業家/チーム」をどう見ているか

VCがスタートアップへの投資判断をする際に何を意識しているか/何を重点的に見ているかについて、よく語られるのは「起業家/チーム」「参入市場」「事業/製品」を見ている、ということです。

その中でも「起業家/チーム」について、世界的VCのアンドリーセン・ホロウィッツの一号社員であるスコット・クポールは、彼の著書「VCの教科書: VCとうまく付き合いたい起業家たちへ」のなかで、VCが起業家たちの「チーム」についてどう思考しているか、こう述べています。

「今後、この起業家(チーム)よりも優秀な起業家がこの領域に目をつける可能性はあるか?
そんな人が現れるのを待たずにこの起業家に投資するのはなぜか?」
というのをVCは絶対に考えなくてはならない

これは、起業家のビジネスアイデアがどれだけ魅力的であっても、後からより優秀な起業家が表れ、簡単に飲み込まれてしまう可能性が高ければ、その起業家への投資は難しい、ということです。インターン先のジェネシア・ベンチャーズのキャピタリストの方々とお話していても、この可能性の分析というプロセスは投資判断において必ずなされているように思います。

「後からより優秀な起業家が表れ、飲み込まれる可能性」をどう分析するかについてですが

・起業家やチームがどれだけ優秀か
・その参入市場に詳しく、起業意欲のある人はどれほどいるか
・先行者利益が大きい市場かどうか(≒参入障壁を作りやすいかどうか)

という3つの因数に分解できると考えています。

中でも2つ目の「その参入市場に詳しく、起業意欲のある人はどれほどいるか」についてですが、例えば、今、【ECサイトのコンサル事業】で起業しようとしても、その領域に強い人は楽天などのメガベンチャー出身者などに多く、起業意欲の高い人が多そうだと予想されますが、【ハイブランドな芋けんぴのD2Cブランド】で起業するのは、そもそもニッチな市場である上、その領域に強い人の母数も少なく、その領域で起業しようとする人は少なそうだ、ということになります。

VCから資金調達を受けたい起業家は、VCが「後からより優秀な起業家が表れ、飲み込まれる可能性」を分析する、ということを頭に入れたうえで面談に臨むことで、VCから高い評価を受けやすくなる、と考えています。
また、特に学生起業家は、社会人起業家よりもこのポイントを意識すること必要がある、という仮説を持っています。
なぜなら多くの参入領域において、学生であるという時点で、事業会社出身の社会人起業家に見劣りすることが十分に考えられうるからです。

学生起業家が意識した方が良いこと

社会人起業家の多くは、事業会社での経験を活かした領域で起業します。その場合、事業会社での経験が他の人にとっての参入障壁となりますが、それは業界に特化したペインを解決するソリューションを提供する事業などにおいて顕著です。
例えば建設業のDX事業で起業しようとするのは、建設業での勤務経験がない人にとっては非常に難しいことが予想されます。そもそも建設業のペインに気づくのは建設業界で勤務していた人でないと難しいでしょう。

学生起業家について考えてみると、事業会社での経験がない分、事業会社出身の社会人起業家に見劣りし、VCからの投資判断がネガティブな方向に働きやすくなる、ということが考えられます。

よって、VCから投資を受けたい学生起業家は、自分たちのチームが事業会社出身の起業家予備軍よりも優秀で、この事業で勝ち抜けることができる、ということを十分にアピールする必要があると考えています。

具体的に自分たちの比較優位性をどう伝えるか

では、具体的にどのように、自分たちが他の社会人起業家よりも優れていることを伝えればよいでしょうか。

私は主に2つのアプローチがあると考えています。
一つ目は「学生の実態は学生が一番よく分かっている」という比較優位性、もう一つは「新規性の高いこの領域に取り組んでいる社会人はほとんどいない」という比較優位性の示し方です。

「学生の実態は学生が一番よく分かっている」

一つ目の「学生の実態は学生が一番よく分かっている」というアプローチは、学生をメインユーザーに持つ事業や、学生ならではのペインを解決する事業の場合に使えるでしょう。

例えば、フードデリバリー領域で大学生をメインユーザーとし、既に50万人以上のユーザーを持つSnackpassは、「学食が遠い上、混んでいて行きたくないが、毎日フードデリバリーするのはお金がかかりすぎる」という学生ならではのペインを解決しています。実際、創業者のKevin Tan氏はイェール大学に在学中にこのサービス提供を開始しています。

また、サービスリリースから3年で累計90億円を調達した、スキマバイトアプリのTimeeも、大学生の利用者が多いことが予想されるサービスである上、創業者の小川さんは立教大学在学中にアルバイトの非効率さを痛感し、会社を創設されています。

学生のペインは学生が一番よく分かっている、というのは間違いない事実であり、この点で学生起業家は社会人起業家に比べ比較優位性を持ちます。

「新規性の高いこの領域に取り組んでいる社会人は少ない」

二つ目の「新規性の高いこの領域に取り組んでいる社会人はほとんどいない」というアプローチは、ブロックチェーンやVtuberといった今までにない技術や産業での起業に特に使えるでしょう。
このアプローチは一つ目のアプローチよりも汎用性が高いです。学生をメインユーザーとはしない事業であっても「新規性が高い」「この領域に知見のある人は少なく、起業しようと思う人が少ない」ことを伝えることは不可能ではないと考えているからです。

また、上述したように「先行者利益が大きい(=参入障壁を作れる)」というアプローチと、事業の新規性の高さを掛け算してVCへ訴求することも効果的だと考えています。「新規性の高いこの事業をプレーヤーが少ない今のうちに攻めて拡大できれば、大きな参入障壁を築くことができる」という戦略を納得させられれば、起業家が事業会社での経験のない学生であっても投資判断がポジティブに動きやすいと考えています。

そのVCは学生起業家によく投資しているか?

また、全く別の考え方として、学生起業家への投資経験が豊富なVCにある程度絞って面談する、というのもポイントになりうると考えています。VCのホームページからポートフォリオを見たり、学生起業家のプレスリリースなどから投資しているVCを見ると、学生起業家にも積極的に投資しているVCをある程度定めることができます。

また主観的な感覚ですが、500万円程度から投資を行っているプレシードVCは、学生起業家に投資するケースが多いように感じます。

まとめ

本noteでは、私がシードVCでインターンさせていただく中で気づいた、学生起業家のVCとの面談の臨み方についての仮説を紹介しました。もちろん資金調達の手段はVC以外にも複数ありますが、VCからの資金調達を検討する際に、少しでも参考になれば幸いです。

ジェネシア・ベンチャーズからの投資に限らず、VCからの資金調達を検討されている学生起業家の方々、いつでもDM(@keiggg_gv)での相談お待ちしております。シードVCでかなり裁量権を持ってインターンさせていただいているからこその、VC側の考えなどにおいて、お伝えできることがあるかと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

水谷圭吾(@keiggg_gv)

#起業 #VC #資金調達

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