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恵文社と作り手の人々 vol.1 ヴィレッジトラスト つくだ農園

日差しが少しずつ強くなり出した夏のはじめ、生活館ミニギャラリーで開催される梢夏子さんの「食卓まわり展」にあわせ、ジャムや赤しそ酢をお取り扱いさせていただく「ヴィレッジトラスト つくだ農園」さんにお邪魔させていただきました。

つくだ農園さんは、京都・大原の山間にある棚田で15年以上に渡り有機農業を続けられている農家さん。代表の渡辺雄人さんと奥さまの渡辺民さん、そして将来独立を目指す研修生とともに、日々、土や野菜づくりと向き合っていらっしゃいます。

この日出迎えてくださったのは、畑仕事とともにジャムや赤しそ酢など加工品の製造やWebの管理運営を担当されている渡辺民さん。農業との出会いや、ジャムや赤しそ酢の製造をはじめられたきっかけなどについてお話を伺いました。

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お話を伺った渡辺民さん。
生活館ミニギャラリーで開催中の梢夏子さん「食卓まわり展 2」にお越しくださいました。

加工品づくりをはじめたきっかけ

Q. なぜ加工品づくりをはじめられたのですか?

一つは保存性を高めるためです。シーズンに沢山採れるものの中にはやはり形の悪いもの、売り物にならないものがどうしても出てくるので、そういうものを加工したいと思ったのがきっかけです。

加工をするにしても、お店を持っているわけでも、作れば一度に売り切れてしまうわけでもないので、長く貯蔵できてなおかつ品質を保てるものを考えたときに、保存食品の中でも、びんに詰める「びん詰め製造」という業種が一番自分たちに向いていると思ってはじめました。

Q. どのように商品化されているのでしょう?

もう随分前に買った外国の本なので、日本の野菜が載っていなかったりもするのですが、この中に野菜のジャムの項目があるんです。こういうものとほかの本も組み合わせて、自分の野菜がどんなジャムに向くのかということを自分なりにイメージして、商品化しています。

本を見て、書かれている数量ややり方を見て、自分の野菜を見て、商品化するという方法です。試行錯誤ですね。そのままでも十分に美味しい野菜を無駄なく、なおかつよりおいしくするにはどうすればいいか、というのがいつも出発点にあります。

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ジャムづくりの参考にされている書籍。これらをベースに、自分たちの野菜がどんなジャムに向くのかをイメージし、商品化されているのだそう。上から二冊目『発酵の技法』は当店店頭・オンラインショップでもお取り扱い中。

有機野菜と果物のジャム

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Q. ラインナップの中で、玉ねぎのジャムがとても意外でした。

実は玉ねぎのジャムは、チャツネなどの流れからヨーロッパではすごく一般的なんです。これは自分で使うのが一番多いジャムですね。カレー、サラダのドレッシング、あとは唐揚げの下味、何にでも入れます。焼くと香ばしい玉ねぎ味が出るので、チーズと合わせてマフィンを作ったり、お菓子作りにも合います。

Q. 西洋人参のジャムの鮮やかな色やみずみずしさも印象的でした。こちらはどのように作られているんでしょう?

人参ジャムの色はカロテンの色で、結構品種によって含有量が違うんです。シーズンで三種類くらい作付けする中で、一番カロテンを含んだ、収穫量の多いものをジャム用に選んでいます、

みずみずしいのは多分砂糖の量ですね。通常売られているものは糖度が60%くらい。うちはあまり甘くしたくないということもあって、40-50%くらいで糖度が低いので、割とさらっとしています。

Q. 新生姜やビーツのジャムのおすすめの食べ方があれば教えてください。生姜はカレーにも合うと仰っていましたが。

生姜はチョコレートにも合うので、チョコレートケーキに新生姜ジャムを入れて、砂糖を通常の半分にして作ったりします。

ビーツは生地がピンク色になるので、マフィンにしたらすごくかわいくて、よくやります。

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加工品の作業場にて。「今、とてもいい状態」だというビーツは丸々としてすべすべ。
近年スーパーフードとしても注目を集める野菜の一つ。

大原の名産・有機赤しそのお酢

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大原の名産「縮緬赤しそ」を使って作られたお酢。
原品種に最も近いと言われる大原の赤しそは、色鮮やかで香りがよいのが特徴。

Q. 赤しそ酢はどういったきっかけで作られるようになったんですか?

銀閣寺の中東さん(注1)がお野菜を買ってくださっているのですが、赤しそを作っているならと教えてくれたのがきっかけです。京都のお酢、千鳥酢と合わせることも教えてもらいました。米酢なのでさっぱりとして、赤しその香りが引き立ちます。

*注1:「草喰なかひがし」主人・中東久雄さん。毎朝、山野や畑へ足を運び、その日に摘んだ山菜や野草、畑で収穫した野菜を中心とした生命力ある料理を提供されています。

農業との出会い

Q. 大原という場所を選ばれたのはなぜですか?

今から15年くらい前、同志社大学の大学院で地域課題を研究していました。農村の地域課題を解決するために拠点を設け、ワークショップなどができる場所を作ろうということで民家を借り、その管理人として私たちが住み移ったのがきっかけです。

そのときは農業をやるつもりは全くなかったのですが、地域課題を探したときに、担い手不足や耕作放棄地など、通常の日本が抱える農業の問題点が山積していたんです。そこでやはり農業は避けて通れない、と。そして目の前に広がっていた棚田がとても美しかった。ぜひ、ここで農業をしたいと思いました。

Q. 具体的な農業のやり方はどのようにして教わられたんですか?

20年くらい有機農業をやっていらっしゃる方のところに夫が弟子入りし、週2、3回通って研修に行きました。学生と農業、二足のわらじでその方に師事して独立しました。14代続く農家さんで大変に厳しい方でしたが、本当に技術がある方だったので、その方のところで学べて本当によかったです。

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年間約60種類の野菜を栽培されるというつくだ農園さん。収穫したてのみずみずしい野菜。
(写真提供:ヴィレッジトラスト つくだ農園)

Q. 「農家になる人が増えてきた」というようなことが少し前から言われていますが、現場では実感されていますか?

そうですね。私たちのところは特に、独立したい人を積極的に入れて育てる、ということを十年くらいずっとやってきました。二人から多いときで四人くらい、途切れずに来ていますね。二年から四年で独立していく、というパターンが多いです。

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この日伺ったご自宅横の作業小屋では、収穫した野菜を届けるため、作業をする研修生の方々が。

Q. どのような方が来られますか?

多くが新規就農といって、色々とやりたいことを探した結果、農業をやりたくて入ってくる方々です。親元が農家ならそこで研修ができるので、よそへ行くことはあまりないんです。だからほとんどが非農家出身。色々な背景の方が来られるので面白いですよ。

他にも、一般の方を対象にした「有機農業塾」というものを主催しています。これには、私たちと一緒に有機野菜を育ててみたい方々が来られます。家族連れも、もちろんお一人での参加も受け入れていますので、色々な世代、家族構成の方が来られます。

インタビューを終えて

このあとも野菜づくりについてお話を伺うなど、色々なお話を聞かせていただきました。

青果店、飲食店への販売のほか、家庭へ旬の野菜を届ける「野菜BOX」、有機農業を体験できる農業塾など、有機野菜を身近に感じてほしいとさまざまな形で魅力を広められているつくだ農園さん。

「そのままでも十分に美味しい野菜を無駄なく、なおかつよりおいしくするにはどうすればいいか、ということがいつも出発点にある」という渡辺さんの言葉に、土や野菜、そして自然と真摯に向き合っていらっしゃる日々の積み重なりを感じました。

ご縁あって、今回お取り扱いさせていただく運びとなった、ジャムや赤しそ酢。びんの中には、素材の新鮮なおいしさがぎゅっと凝縮されています。毎日の食卓の中で自然と手が伸び、幅広く使える懐の深さ。生で食べるのとはまたひと味異なるおいしさを、梢夏子さんのラベルデザインとともにお楽しみください。

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当店でのお取り扱いについて

生活館店頭・オンラインショップにてお取り扱い中です。
【オンラインショップのページはこちら】
※商品ラインナップは季節によって入れ替わります。


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(写真提供:ヴィレッジトラスト つくだ農園)

話してくれた人

ヴィレッジトラスト つくだ農園

京都大原で2009年から有機農業をスタート。
Organic is ordinary.
毎日の”あたりまえ”のなかに、有機野菜を。

HP:https://www.villagetrust-tsukudafarm.com
Instagram:@tsukuda_farm_kyoto


聞き手:藤林・岡本 書き起こし・文:岡本 写真:藤林


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