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高打率を叩き出すオルフェーヴル×キングカメハメハ

2022年フェアリーSを制したのはオルフェーヴル産駒のライラック。私自身本命に推した馬ではあるため推奨理由については動画等で話した通りだが、新馬戦後の短評は以下の通り。

前半1000m63.7のスローペースを好位で運び、直線はノーステッキで抜け出して完勝。ペースが遅いため勝ち時計は平凡だが、レースセンスと伸びしろの大きさはしっかりと示した。4代母スカーレットインクに遡る名牝系で、ブラックホール(19年札幌2歳S)の3/4同血の弟。オルフェーヴル×キングカメハメハはショウリュウイクゾ(21年日経新春杯)などが出るニックスで、サンデーサイレンスを3×4でクロスする形もバランスがいい。さらに本馬はノーザンテーストの5・4×4の影響を強く受けたマイラー体型で芝の1600m前後が適条件だろう。

新馬戦後の短評

ノーザンテーストの4×4・5を中心としたタフなマイラーで、緩急の小さい中山マイル戦は得意条件の1つだろう。牝系から受け継ぐパワー血脈も魅力の一つだ。

ライラック

これは、3/4同血の兄ブラックホールが3F別ラップ36.0-37.1-37.3という2歳馬としては非常にタフな2019年札幌2歳Sを制したことも同様だ。

ブラックホール

ノーザンテーストは1982~88、90~92年と10度のリーディングサイアーに輝いた大種牡馬。Lady Angelaの3×2という野心的な名牝のインブリードが最大の特徴であり、小柄な馬体はHyperionの影響を多分に受けた証といえるだろう。自身はマイラーであったが、種牡馬としてダービー馬やオークス馬を複数輩出したことはHyperion由来のスタミナがその根拠となっている。Northen Dancerの筋肉量とHyperionの底力や成長力を受け継いだのが本馬であり、インブリードのきつさから主張の強い種牡馬ともいえるだろう。ダイワメジャー≒ダイワスカーレットやドリームジャーニー=オルフェーヴルの走りにはその影響を強く感じる。

ノーザンテースト

ちなみに、ブラックホールはゴールドシップ産駒であるからノーザンテーストについては4×5でインブリードする形だ。

また、ライラックについてはオルフェーヴル×キングカメハメハのニックスについても触れなければならない。同組み合わせの成績は以下の通り。

オルフェーヴル産駒のJRA勝ち上がり率

アベレージの高くないオルフェーヴル産駒において、母父キングカメハメハの産駒はJRA勝ち上がり率53.1%という高打率をマークしており、代表産駒にはショウリュウイクゾ(2021年日経新春杯)、タガノディアマンテ(2020年ステイヤーズS2着)、ホウオウピースフル(2020年フローラS2着)などがいる。

もともとステイゴールド系とキングカメハメハとの相性は良く、父の産駒ではインディチャンプやステイフーリッシュが出ている。これは、馬格のカバーとHyperion+Nasrullahの増強がカギとなっているが、オルフェーヴルにおいてはLt. Stevens=Thongという名牝系のインブリードも大きく貢献しており、ステイゴールド系全体よりもさらに高い効果が見込める。

そのため、同血脈を持たないゴールドシップではキングカメハメハ肌との相性の良さはやや落ちるといえるだろう。唯一の勝ち馬がブラックホールであり、同馬はノーザンテーストのインブリードにより父のネジを締めたと考えるほうが自然か。

ライラックは今回も身体を減らして万全のデキだったとは言い難い。心身ともに幼い馬だけに、今後の成長力に期待だ。


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次回の更新もお楽しみに!

≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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