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NHKマイルカップを振り返る~勝敗を分けたいくつかの『誤算』~

馬は生き物。生き物で行うレースも当然生き物だ。何があるかは分からない。

何があるか分からないというのは競馬の基本であって、それは常に頭に入れておくべきことだ。今回のNHKマイルCでは落馬が発生したが、このようなアクシデントも含めて競馬だろう。

もちろん落馬がなければまた違ったレースになっていた可能性は高い。ただ全てタラレバ。仕方ないと割り切るしかないんだよな。ネット上では藤岡への批判の声も相次いでいるようだが、最終的に賭けているのは自分自身だ。

今回のNHKマイルカップは、スタートからゴールまで、いくつかの誤算が重なった上に成立したレースだったと思う。これらの誤算を、パトロールビデオなどで見ながら振り返っていく。今回は特に、VTRを見ながら読み進めていってほしい。

さて、週中Twitterにも書いているのように、このレース、勝負を分けるポイントは『グレナディアガーズの動き』だと考えていた。

入った枠がちょうど真ん中。グレナディアガーズがポジションを取りに行くことは、ポジショニングの鬼である川田が騎乗する時点である程度分かっていた。

ポジションを取り切った後、外の馬をブロックすれば内が有利になるだろうし、外の馬をブロックできなければ外の馬が有利になるだろうことは、枠の並びからある程度推測できる。

だからこそ、マスクはそれまでの東京芝のレースで、川田の進路取りを見ていた

●本日の川田の騎乗馬
3R ミッキーセレスタ
5R サンキューレター
9R ロードシャムロック
11R グレナディアガーズ

太字にしたレースが芝。川田は4鞍中3鞍が芝で、3Rに乗った後は9Rまで芝に騎乗しないという日程だった。

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これは東京4R。1着赤レイモミは道中外目を回っているが、2着黒メイレンシュタインがラチ沿いにいる。3着青フォレスタも内目を通っている。この時点で内は走れる状態だ。

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話は前後するが、これは東京3R。赤ミッキーセレスタの川田は道中、ラチ沿いを走っている。かなり馬場を読んで騎乗する川田が、3Rでラチ沿いを通って4着になっているのだ。

ミッキーセレスタの敗因自体は切れ負けっぽかったから、川田としては『ラチ沿い自体は通っても問題ない』という心理が、3R終了後あったと思う。

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これは東京7R。1着橙カフェサンドリヨン、2着桃ボマイェ、3着緑スワーヴドンが、道中外目で1列に並んでいる。このレースだけ見ると外目の差し有利だ。

ただ34.1-35.3という前後半ラップ的には、差し有利になっても驚きはない。実際4Rでメイレンシュタインがラチ沿いから抜けたように、内は使えていた。

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実際8Rでも、ラチ沿いで溜めていた白サトノジェネシスが1着。隣にいたガロシェが3着。特に内の馬がラチ沿いを開けることもしていない。悪かったらジョッキーたちも内を開けるからね。

つまりこの時点で、馬場はほぼフラット、ラチ沿いはペース次第ではないかという推測が成り立つ。

ポイントとなったのが、そんな中で行われた9Rの湘南Sだったと思う。

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1着橙ハーメティキスト、2着緑モンブランテソーロ、3着桃カルリーノは道中、直線と外を回っている。

ところが、馬場をよく読む川田が騎乗した赤ロードシャムロックは、道中ラチ沿いを回り、直線でもラチ沿いを通っている。押し込まれて走っているのではなく、直線で右からムチを叩いているように、あえて内ラチ沿いを通らせていると見ていいだろう。

しかし外にいた3頭にまるっと交わされてしまった。川田は3Rで内を通って以降、芝を走っていない。それまでのレースを見て、『まだ内は使える』という判断もあってのイン突きだったと思う。

湘南Sの前後半3Fは34.0-34.9。例年のNHKマイルより速いペースだから、その分外差しが決まったとも言えるが、それまでのレースから、『ペースが緩めば内前』、『ペースが流れれば外差し』こういう具合の馬場だったのだろうね。ある意味オーソドックスな馬場とも言える。

ただ川田には、『ラチ沿いを走ったら外に交わされた』という事実が残る。これにより、真ん中枠のグレナディアガーズで内を開けて回り、直線も真ん中より外目を走るというプランが出来上がったのではないか。

結局この川田のプランがレースに影響を与えることになった

●NHKマイルCの出走馬
黒 ルークズネスト
灰 バスラットレオン
茶 タイムトゥヘヴン
青 グレナディアガーズ
黄 ソングライン
緑 ランドオブリバティ
橙 シュネルマイスター
桃 グレイイングリーン
水 ピクシーナイト

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さすがにこのレースで、バスラットレオンの落馬に触れずに話を進めるわけにはいかないだろう。藤岡佑介がバスラットレオンに一本背負いを食らっている。これが最初の誤算。

レース後矢作師は「前回はゲートの中が悪かったが、今回は反応が良すぎたくらい」と語っているのだが、前走ニュージーランドトロフィーのパトロールなどを見ても、そこまで馬は暴れていない。これは推測になってしまうが、矢作師なりにジョッキーをかばう気持ちから出たコメントなのかもしれない。

藤岡としては、引いたのは内枠。バスラットレオンは遊ぶ面があるから、現状ハナか、最低限3番手以内にはつけたい。中団からだと危うさを見せるかもしれないからね。

ちょっとでもゲートを遅れてしまうと外から前に入られてしまう。相当ゲートの出し方を気にしていたと思う。重心が後ろに寄るとゲートを上手く切れないから、いつも以上に前目に構えてたのではないかな。

そうしたら、バスラットレオンが1、2歩目で躓いてしまった。重心が前目に寄ってる分対処しきれず、そのまま落ちてしまったと見るのが自然。仕方ないといえば、仕方ない。何年もジョッキーをやっている人間にもここまで気を遣わせる、それがGIという存在なのではないかな

結果的に落馬となってしまい、バスラットレオンから買った人間はその時点で終わってしまったわけだが、落馬はこのレースに限った話ではない。競馬に人が乗る限り落馬という案件はついて回る。これに関しては割り切るしかないと思う。

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ただ仮にバスラットレオンを買ってない人間にとっても、この落馬の影響は大きかった。あくまでタラレバになるが、バスラットレオンが順調にスタートを切っていれば、灰色の○囲み部分に入っていった可能性が高い。

つまり黒で囲んだ部分にいる馬は、バスラットレオンの後ろで競馬をすることになるから、最後の直線でもっと自分の進路を確保できた可能性がある。バスラットがそのまま垂れた可能性もあるし、こればかりは何を考えても推測でしかないがね。

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バスラットレオンが落馬したことで、代わりにペースを作ることになったのが水ピクシーナイトだった。

このピクシーナイト、レース前に租界の雑談板で『発汗が目立つ』と書いたのだが、返し馬が終わった後、ゲート裏の輪乗りあたりから一気に発汗が目立つようになってきた。福永がレース後「パドックは落ち着いて良かったが、返し馬からレースに近づくにつれてエキサイトした」と言うのも分かる。テンションが上がっているのが見た目から伺えた。

これが2つ目の誤算。福永は困ったと思う。引いてしまった枠は大外。前に壁は作りにくい。そもそも先行させて良さが出るわけだから、前に壁を作って折り合わせていてはポジションが悪くなる。

切り換えた福永は、あえてスタートからピクシーナイトを直進させた。馬群から離して折り合わせる手を取ったんだ。これは以前阪神JFの回顧で、メイケイエールに触れた時にも書いたね。上手いジョッキーは大外などに入ると、スタートからまっすぐ走らせて折り合わせる。昔だとトゥザヴィクトリーで武さんがやっていた手だ。

ところがピクシーナイトは、それでもハミを噛んで進んでしまった。福永が「いつもはリラックスした逃げを打てるが、今日は道中から張り切り過ぎて、オーバーペースになった」と言うように、ここまで行ってしまったのは福永としては誤算だっただろう。

音無師が「今回は控える形で」と言っていたあたり、本来は折り合わせて番手くらいのイメージだったのだろうが、ここまでハミを噛んでしまうと抑えにくい。

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掛かった水ピクシーナイトの内に目を向けると、緑ランドオブリバティ石橋がラチ沿いに進出しようとしている。ランドオブリバティが通ったラインを横切るように、青グレナディアーズ川田は切り返して外を狙った。

前述したように、川田としては真ん中かやや外目のラインにいたい。湘南Sでイン突いて負けているからね。そのためにも、外目のポジションを取りにいこうとしたわけだ。

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ただそんなに簡単に外に出してもらえないのがGI。外目に出そうとしたら、更に外からやってきた桃グレイイングリーンの武藤にブロックされてしまったのだ。ここでグレナディアガーズはエキサイトしてしまった

Twitterでも触れたように、レース前のグレナディアガーズは発汗が目立った。ピクシーナイト同様、精神面はギリギリだった可能性がある。川田としてはスムーズに、繊細に進めたかっただろうが、引いた枠は真ん中。本人も簡単に外に出せるとは思っていなかっただろうね。

グレイイングリーンは抽選突破組。これもタラレバになってしまうが、グレイイングリーンが抽選に落ちていれば、こんなところでブロックされていない。グレナディアガーズがすんなり外の番手を取って、橙ホウオウアマゾンの外のポジションを、もっとリラックスして走れていたかもしれない。

あくまで仮定の話だが、抽選の一つ一つにも意味があることを改めて確認できるシーンだったと思う。

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ここで注目したいのは黄ソングライン池添のポジションだ。青グレナディアガーズ川田の真後ろというポジションを獲得している

以前菊花賞回顧で、ヴェルトライゼンデ池添がコントレイルの後ろを取ったという話を書いたことがある。池添の上手いところは人気馬の後ろの確保。基本的に競馬は強い馬の後ろはベストポジションになりやすく、池添の意識の高さにはいつも唸るね。このポジションを獲れたことで、最後大接戦の2着まで頑張れたと見ていい。

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水ピクシーナイトの作ったペースは速かった。

●21年NHKマイルC
12.2-10.2-11.3-11.6-11.6-11.4-11.4-11.9
前半400m 22.4(過去10年最速)
前半600m 33.7(過去10年最速)

福永が「オーバーペースで逃げてしまった」と言うように、ペースがとにかく速かった。前半400m、前半600mはどちらも過去10年で最速。

2番手のホウオウアマゾンに騎乗していたのは『精密機械』『セイコー製』とまで言えるレベルでペースを間違えない武さん。たぶん『かなり速い』と思いながら乗っていたと思う。

仮にバスラットレオンが落馬していなかった場合、ピクシーナイトが大外から掛かるのはバスラットがいても変わらなかったろうから、ペース自体はほぼ一緒だったと思う。ただホウオウアマゾンあたりはもう1列後ろで脚を溜められたから、結果は変わった可能性は残る

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ここで怪しくなっていたのが緑ランドオブリバティだ。過去にホープフルSで外に飛んでいき競走中止、スプリングSでも外に飛んでいく素振りを見せてボーデンと接触していた問題児。

ランドオブリバティは自身から見て左に行くところがある。この画像を見ても分かるように、乗っている石橋脩ちゃんが右側に重心を傾けている。だいぶ雰囲気が怪しい。

確かにラチが左にある左回りなら、これ以上内に飛んでいかない(ラチを飛び越えたら別、障害入り要検討)から、左回りのほうがまだ回れる。

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外目を見ると青グレナディアガーズが、馬場の色が変わった部分のやや外を走っていることが分かる。川田は3Rや9Rでラチ沿いを走っていたが、伸びなかったことで完全に切り換えたんだろう。

同じく馬場をよく読む福永や武さんはその内を平気で走っているから、内は『すごく良くはないが普通に走れる』という状況だったのだと思う。川田は万全を期してこの色が変わるギリギリのコースを通ったのだろうね。

その後ろを見ると黄ソングラインも似たようなコースを通っている。ただ茶タイムトゥヘヴンもギリギリのラインを通りたかったのか、ソングライン池添を内からブロックするように回っているんだよね。

最後、シュネルマイスターとソングラインの差はハナ差。ここでタイムトゥヘヴンに内からブロックされ1頭分外を回されていなければ、勝ったのはソングラインだったかもしれない。

その橙シュネルマイスターは、更に後ろ、色の変わるギリギリのラインを虎視眈々と前を狙いながら追走しているんだよね。怖いよ、ルメールってジョッキーは。いつもいやらしいところでチャンスをうかがっている。

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4コーナー入口。12.2-10.2-11.3-11.6-11.6-11.4-11.4-11.9 この太字の部分。このレースで若干ながら緩んだ付近のワンシーン。

先ほど書いた緑ランドオブリバティが、より怪しくなっている。たぶん脩ちゃんがササらないように外に重心をかけた分だろう。更にその外にいる黒ルークズネストにモタれかかるように回っているのだ。

ルークズネストはランドオブリバティを背負ってコーナーを回らなければいけない。これは見た目以上に苦しかったと思うよ。だってこのレースで唯一、若干緩んだところで内からやってきた負荷を背負わなければいけないわけだから。

レース後ルークズネストの幸が「直線を向いて手応えがなくなった。こんな馬ではない」と話していたが、急速に手応えが無くなったのは、道中ハイペースだったこと、ちょっと緩んだところで負荷が増えたことによるものだと思う。

スプリングSでランドオブリバティについて、当分レースに出さないほうがいいのではないか、と書いた。確かに左回りでは曲がれてはいるものの、明らかにスムーズではない。実際隣の馬にモタれかかっている以上、今後の路線、間隔は再考しなければいけないと思う。

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12.2-10.2-11.3-11.6-11.6-11.4-11.4-11.9

過去10年最速ペースでこれだけ外を回った青グレナディアガーズの判断は正解だったかどうか、これは何とも言い難い。距離ロスはあったかもしれないし、これだけ外を回って馬場のいいところを走れたからこそ3着に残れたかもしれない。

ただ明確に意思を持って馬場を選びに行っているから、中途半端さはないよね。これだけ厳しいレースで外外を回り最後まで粘っている以上、やはりグレナディアガーズの能力は高い。

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青グレナディアガーズが大回りでコーナーを回ったことで、外の馬たちは直線に向いてスペースを選びやすくなった。もしグレナディアがグレイイングリーンの外ピッタリを走っていたら、後続は更に外を回っていたことだろう。

グレナディアが大回りで回った分、内の馬たちがゴチャつく中、外の馬たちは進路を選べる追い風が発生した。ただでさえペースは速い。この時点で内<外が確定したと考えていい。

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外差し有利展開になった残り400m付近。茶タイムトゥヘヴンが青グレナディアガーズと黄ソングラインの間を狙おうとした。

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ところが内にいた青グレナディアガーズ川田は左手にムチを持っている。外の黄ソングライン池添は右手にムチを持っている。

馬はムチを叩かれた逆のほうに動くわけだから、ソングライン→ ←グレナディアガーズという形になる。当然その2頭の間は挟まったり、詰まったりするリスクが高い。

正直グレナディアガーズ川田が左手にムチ持ってるんだから、外に行くことは後ろから見て察し、内に行くことはできたと思う。それでいてムチの持ち手とは逆の、いかにも詰まりそうなスペースに行ったタイムトゥヘヴンのデムーロの判断はどうなんだろうか

ここでタイムトゥヘヴンがグレナディアガーズの内に行っていたら、3着はあったと思う。それくらい重要なポイントだった。もったいないね。

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残り200m。黄ソングライン池添は右ムチを叩いて、内の青グレナディアガーズを競り落とそうとしている。

たぶん手応え的に、グレナディアガーズを競り落とせばいけると思ったんだろうな。誰でもそう思う。池添の意識は完全に内に行っている

外から来ているシュネルマイスターに気づくのは少々難しかったと思うな。ジョッキーの中にはオーロラビジョンで後ろの馬の位置を確認している武豊というバケモンがいるが、GIの残り200m、内に行くか外に行くかで言えば、自分から見えている位置にいるグレナディアガーズのほうに寄せていくのは当然だ。

もし、もしだよ。ここで右後ろにいるシュネルマイスターの存在に気づいていたら、ソングライン池添は左ムチに切り換えて、外と併せ馬に行っていたはずだ。グレナディアガーズを競り落とすメドは立っていたからね。

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ゴール手前。脚色的には完全に黄ソングラインが勝つ勢いだったんだが、今回のレースで最後の誤算が起きる。右ムチを入れられ続けていたソングラインが、左手前に変わった瞬間に内にモタれて、ラチ沿いに流れてしまったんだ。この最後の池添の誤算が勝負を決定づけた。

これは画像で説明できないところだから、パトロールビデオを見てほしい。残り50m手前くらいから池添のコントロールが利かず、追えなくなってしまっている

ハイペースを外を回りながら追走して、最後グレナディアガーズを競り落としたあたりでいっぱいいっぱいだったんだろうな。池添の対応を見る限り予期していなかった感じだし、手前変わった瞬間にモタれていくなんて、手前が変わってみないと分からない。

俺からすると仕方ない気しかしないんだが、池添の「この差だし本当に悔しい」という気持ちも痛いほど分かる。3コーナーで外に振られてなければ、直線で後ろのシュネルマイスターの存在にもっと早く気づいていれば、など様々なタラレバはあるが、やはり一番大きいのはこのモタれだった。

全力を出し切ったからこそ起きたものだろうし、桜花賞で大きな不利を受けながら、詰まった間隔でよくここまで走り切ったと思う。敢闘賞が授与されるべき走りだった。

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改めてこの写真を見ると、橙シュネルマイスターのルメールが、黄ソングラインが内にモタれだしているのをしっかり見てるんだよね。ルメールの視線がソングラインを向いている

たぶん残り150くらいまでは勝てると思ってなかったんじゃないかな。確かにシュネルマイスターは追うほど伸びていたが、ソングラインの脚色的に2着濃厚と一瞬思ったはず。ところが残り50手前から、ソングラインがモタれた。

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絶好のチャンス到来だよね。これはマジでパトロールビデオを見てほしいんだけど、橙シュネルマイスターのルメールは、ゴール直前まで左ムチを叩いている。

ところが残り3完歩付近でムチを打つのをやめている。そして内のソングラインを見ながら、右腕だけ動かして、微妙にタイミングをずらし、『調節』している。

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決勝戦手前だけシュネルマイスターのハナが前に出ているんだよな。武さんやノリさんといった一部のトップジョッキーはハナ差を合わせてくるが、残り3完歩からの『合わせ』が上手過ぎ。

もちろん元々のタイミングも良かったから、合わせやすかったとは思う。タイミングは完璧。ハナ差だけ出て見事1着。たぶん本人の中では最悪同着という感触だったはず。パトロール見ると、若干リズムが変わっているからたぶんワザとやっている。

道中追走に苦労していたから、本質的にペースの速いマイルは忙しいんだろうな。今日に関しては流れ、そして最後のソングラインの斜行が味方した部分はある。2000m自体はやや長く、少しペースの速い1800が本質的には合うタイプだと思う。いずれ中山記念で買いたい。

ソングラインは最後モタれてしまった分の負けだが、つまり全力を出しているし、池添も張られた、モタれた以外は完璧な騎乗だった。右回りも問題ないが、左回りはよりいいね。いずれは1400向きにシフトしそうな気配がある。オーロカップとかで買いたい。

グレナディアガーズはこのハイペースを外を回りながら粘り通したわけだから、改めて実力を示した形だ。ただレース前の発汗は目立ち、道中もかろうじてコントロールが利いている状況。

正直距離が長い。マイルはジョッキーが上手くごまかしてこなしているようなもの。これまでの数字を踏まえると、適性は1200~1400にあるはず。来年の高松宮記念が楽しみ。フランケル産駒は突然勢いが止まるから、それがなければ1200のGIを勝てる馬だと思う。

もう少し大人になってきたら、1400のGIを求めてオーストラリアを試すのもありだと思う。馬は強い。

4着リッケンバッカーの力があるのは過去の未勝利の数字から分かる。ただ今日は前半ついていけていなかったし、展開、ペースのおかげで拾った4着でもある。マイルの一線級となると、もう少し追走できるようになりたい。1800のオープンとかなら侮れないかな。

5着ロードマックスもペース、展開に恵まれている。タイムトゥヘヴンもよく走っているが、道中通ったコースも良かった。惜しむらくは残り400の判断。あれがなければ3着はあった。

9着ホウオウアマゾンはペースが厳しかった。まだまだ未完成の部分が大きく、母ヒカルアマランサス、叔父カレンミロティック同様古馬になって更に良くなる馬だろう。現状ここまで走れているあたり、素質は相当。GI勝ちはどうかも、重賞2、3つ取れるだけのポテンシャルは感じる。

10着ルークズネストも同様にペースが厳しかった。そして3、4コーナーの負荷。これも厳しい。ファルコンSの数字を考えれば、ジョッキーの言う通り『こんな馬ではない』。1400m以下なら、こちらも重賞を再度勝てる。

一番の楽しみは12着ピクシーナイト。ここまでの数字的に、この馬は1200mのGIでもいい勝負になる素質を秘めている。大型馬であること、脚元に難しいところがあること、そして今日のようにテンションが上がって暴走することなど、課題は山積しているものの、逆に言えば伸びしろしかない

今年のNHKマイルCは戦前書いてきたように、非常にレベルが高かった。この世代のマイル戦線はこれまでの未勝利、1勝クラスの数字も全般的に良く、今回大敗した馬たちが次走以降平気な顔して巻き返してくる可能性が高い。

シュネルマイスター戦』として、今後馬券的に役立つレースになるだろうから、ぜひ覚えておきたい一戦だったと思う。


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