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漢字のミスリード 「絶対音感」と「上流工程」

日本語の漢字には多くの場合、複数の意味があります。その漢字が言葉の意味をミスリードさせている場面は結構多くあるなという気づきです。

よくある誤解として「音と楽しむと書いて音楽」がありますが、楽しむという意味での「楽」と、音楽や雅楽、楽器の「楽」は異なります。

このような些細な誤解のみならず、世の大きな歪みも実は漢字のミスリードによって発生しているのではないかと自分は思います。

同じく音楽の話ですが、日本の音楽教育は「絶対音感」を重視しすぎていると言われています。実際に和声やメロディなどを聴き取る上で大切な能力は「相対音感」であることは明らかなのに、どうして絶対音感を重視するのでしょうか。

これは私の主観的な見解ですが、「絶対音感」の「絶対」という漢字がミスリードを引き起こしていると思っています。

絶対音感の「絶対」は「相対」に対する言葉ですが、一般的に「絶対」は「絶対に試合で勝ってみせる」など、強いインパクトのある言葉でもあります。また同じ「ぜったい」でも「絶体絶命」などの言葉があり、これが「絶対音感信仰」を引き起こしているのではと考えます。

次に、IT業界などで使われる「上流工程」という単語を見ていきます。

上流工程
ハードウェアやソフトウェア開発の工程の流れのなかで初期の段階に行われること。一般的には、顧客の要求から仕様を決定し、大まかな設計をするまでの工程を指す。これに対して、実際の開発や製造を下流工程という。
ASCII.jpデジタル用語辞典

何かを開発する上で、設計図を作る工程を指すことが多いと思います。しかし、この言葉が非常に大きな誤解を生んでいるように自分は考えます。

数日前から社会人として働き始めた友人が「自分の仕事は設計書を下に流すこと」と言っており、ふと、なぜ実作業として開発を行う人間は「下」なんだろうと思ったのです。それは上流から下流へと水が流れることに作業フローを例えているからですが、その友人の言葉から微かに感じる差別的なニュアンスに疑問を覚えました。

近年、どのような業界でも現場のクリエイターや開発者が立場的にも給与的にも優遇されていないことが問題になっていますが、実はこの「上流工程」という単語の意味に引っ張られている部分があるのではないかと思います。

舞台の言葉でステージの「上手(かみて)」「下手(しもて)」がありますが、何も「下手」に立っている役者ミュージシャンは「下手(へた)」だ、なんて思う人はいないとは思います。しかし、どうも「上流工程」という単語の「上流」には引っ張られている人がいると感じます。

簡潔に言えば、「上流工程」の「上流」を、「上流階級」の「上流」と勘違いしている人がいるのではないかと自分は考えますし、このようなミスリードを引き起こしてしまう表現は、何か別の言葉を(個人的にも)代用したいなと自分は思います。

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