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不味いワイン?

私は”全てのワインは美味しいんです!そうじゃないのは貴方の心が汚れてるからだ !"なんて言うつもりないですし、決して言いません。

断言します、不味いワインは日本にもフランスにも沢山あります。
逆に、そう言えない人の舌を信用できますか?
全ての料理、全てのワインは美味しい、なんて言ってる人が居たとしたらそれは偽善でしょう。
偽善は偽ですから、信頼は得ません。

ワイン醸造

ワイン生産の現場において、大きく二つに分けるならば栽培・醸造になるのではないでしょうか。

国に関係なく、またワインメーカーの中にも、畑信者が多く、葡萄の質、畑が、テロワール(一応、人力、天気、土地のはずが、この言葉は、ほぼ地質を表す言葉の様に使用されていると感じます)が100%と言います。
しかし、これは大きな誤りと思った方がいいです。
シンプルに考えるだけでも、
ある日本酒メーカーがスペインのカマルグの米を使用しても、その蔵の味、高品質な日本酒を造ります。これはある日本酒メーカー本人が認めています。

また三つ星料理人なら、スーパーの食材からでも、周辺のフレンチよりも美味しい料理をつくれると思いませんか?

勘違いして頂きたくないのは、
私が畑で働くことが嫌いで、経験もないから、こんな事を言っているんだと思わないでください。

私が今まで働いてきたドメーヌ達は全て葡萄畑を所有していますし、このグループの全体の表写真は私の手。
今も会社設立の為に物件、葡萄を探し回りながら、毎日、畑で汗をかき、現在も手を汚しています。

だからこそ、葡萄栽培、畑がワインの質100%ではないです!と言い切ったとしても信じてもらえるのではないでしょうか。

テロワールと言う名の下に細かく、ワインの個性を栽培に求め、地質から説明し始めたのはここ最近ですからね。
ワイン業界のコマーシャル的な部分の一つです。

そもそも、葡萄栽培のアプローチ、目的は葡萄の風味を変えるものではありません。
他の農作物と同じです。病気への対策は当たり前、葡萄の安定した品質と、その品質を落とさない様にギリギリまで収量を上げる努力をする。これが葡萄栽培です。

話を醸造に戻し、醸造の全体像についてお話します。

日本酒の醸造も似ている部分もあると思いますが、
ヴィンテージなどの観念がなく、同じ風味、同じ品質の酒を、年一回だけの醸造ではなく、ある期間(大手の日本酒メーカーなら夏でも毎日醸造できるでしょう。また並行複発酵で、より醸造技術が複雑と言うのは存じております)造る。
その際に杜氏の舌で見極めて全ての工程を感覚で判断している、なんてことはあり得ないと思います。
私は日本酒業界で働いたことがありませんが、ワイン醸造と同様、必ず数値、温度、糖度やphなどの基本になっている値、折れ線グラフ等とトレースして発酵を行っていると思います。そうでないと品質のバラつきがでます。

要は発酵の際には必ず科学的な分析によって、発酵をトレースしていく作業が必要であり、この理想的な数値はドメーヌによってそれぞれ違います。またブルゴーニュでも殆どのドメーヌは軽く樽などにチョークで書いていて、毎年の記録を残してない所が多いです。そういう人達のワインはやはりそのレベルに留まります。

具体的に

例えばエマニュエル・ルジェは低温浸漬は勿論ですが、必ず最高温度27度を越えないように発酵させると本人が言っておりました。
アンリジャイエとの違いも聞きましたが、それは機会があれば話ます。
この醸造は本当かどうか分かりませんが、あの抽出が薄く芳香で、風味はオートコートでも新樽による骨格の支えがあるワインを飲むとあーなるほどな、と思うところがあります。この場合、亜硫酸無添加と野生酵母での発酵は少し無理があります。

また、悪い例なら、例えば全房でやるならば必ずphが上がります。
それぞれの値は品種やヴィンテージによって変わりますので、本や雑誌に書いている数値は当てになりません。これだ!と言う値はその土地の醸造経験のある人間しかわからないです。
ですので、もし私が日本でワインを造ろうとするものなら日本のワインの個性を消す、醸造をすることになるでしょう。

私が醸造するならピノで、ph3,4の葡萄が入ってきたら絶対に健全な発酵は期待できません。
また赤ならまだしも、白で全房でマセラシオン、亜硫酸無しでやるならば、ある程度の事をしなければ、日本だと豆香、大茶豆のような、
フランスだとネズミ臭と呼ばれる乳酸菌とブレタノマイセスが生み出す、アセチルピロリンという香りにマロラクティック発酵後半から汚染されやすくなります。
所謂、自然派というワインにこの風味が多く、畑のミネラルでも、品種本来の味でも、テロワールでもなんでもないです。
ブルゴーニュのワイン造る人間からしたら葡萄の本来風味ではなく、完璧に失敗した醸造の味です。
現にこの香り、味がしたらワイン愛好家のフランス人はそのワインを飲みませんし吐き捨てます。私の働いていたドメーヌはこの香りの為、あるグラン•クリュを全部廃棄しました。

私は所謂自然派ワインの肯定派ですし、好んでよく飲みます。それは前回の投稿の写真を見ればわかると思いますが、ただ、フランス人が買わないワインを、無知な日本のワイン消費者に自然派ワインとして冠をつけて大量輸出する。
本当に日本にワイン文化を広めたい、日本人にフランスワインを伝えたいと思う人、私ならやりません。

今やボルドー、Dijonやボーヌの学校で、学び、資格を取った、ドメーヌで収穫した、一定期間畑で働いた、なんてアジア人は珍しくないです。

難しいのは現地でフランス人と対等な立場で働き、出世すること。
東大卒で、資格を持ってすぐ起業できたとしても、いきなりゴールドマンサックスと同じ金融業で、現地アメリカの企業と渡り合うことにはできないでしょう。
リヨンの料理学校を卒業して、資格を取って、すぐに料理長として働こうとする子がいるのならば、現場の料理人達は呆れると思います。
また、活発で、やる気のある青年が、"学校は行ってないです!理論も基本も何も分からないですが、去年収穫をあるドメーヌでやったんで働けます!”など言われても、"そうですか。"としか応えられません。

しっかりと勉強し、その上で、現場できちんと普通の社員として働く。
学校の論文だけ読んで語られても、それは机上の空論、また、たった一年の研修、実践だけで語られても、説得力ありません。

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Winemaker en Bourgogne(France) フランス🇫🇷ブルゴーニュ地方 葡萄栽培者、ワイン醸造家
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