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放送大学のこと

2014年4月から2018年3月までの4年間、放送大学に在籍していた。

通信制の正規の大学で、当然大卒の資格が取れる。
全国に学習センターがあって、学生はどこかの学習センターに所属する形となっている。
卒業要件124単位の内、20単位は面接授業と呼ばれるスクーリングに参加し実際に授業を受けなければならないが、地方在住でも近くの学習センターで行われる授業に参加すれば時間や交通費等はそれほどかからない。私は小旅行のようなつもりで参加していたが、ごく近くで開かれる面接授業にしか参加したことがない。それでも泊りがけで少し遠くの土地に行くのは楽しかったし、実際に学友とああでもない、こうでもないと言いながら授業を受けるのは結構楽しかった。

私のように働きながら大学に実際に通うというのは、近くに夜学でもないと難しい。特に地方に住んでいるとなかなかそういった大学はないから、放送大学はメリットしかないように思えた。
また、通信制の場合はスクーリングがどうしてもネックになるが、私の場合は最低限の単位しか取らないと決めていたし、電車で2時間以内の所にしか行かないことにしていたので、たとえ授業の翌日が朝早くからの仕事であってもどうにか乗り越えられていた。

また普段の学習は、放送授業と呼ばれるテキストとネット配信の授業によって行う。今はオンライン授業でレポートやディスカッションなんかも出来てしまうらしい。
パソコンやiPadでも見られるので、いつでも気軽に学べるのが私の性に合っていた。最もこの頃は介護の仕事に就いており、初任者研修だとか業務を覚えるだとか、とにかく新人としてやるべき事がてんこ盛りだった。十二分に学べたかと聞かれたら耳が痛いところではある。
それでも、休日や仕事の後にはパソコンで授業を見て、テキストを読み、単位認定試験の為に過去問に取り組んだ。

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働きながら勉強するのは心身共に疲弊するものの、よく聞く『単位やばいかも~』とか、『どの授業取ろうかな』とか、大学生の台詞を自分が言えることにささやかな喜びを感じていた。
私は故あって高校を卒業して早々に社会に出たのだけれど、大学で好きな勉強をしたいという気持ちもあるにはあったのだ。大学に行ける頭があるのかどうかは別として。
大学進学を考えなかったのは、金銭的な事情も大きいが、放送大学はこの費用もかなりリーズナブルだ。
放送授業1科目(2単位)がテキスト込みで11,000円。
面接授業は1科目(1単位)5,500円。
124単位ギリギリで卒業するとして、放送授業104単位(52科目)、面接授業2は最低限の20単位(20科目)とする。

放送授業52科目×11,000=572,000
面接授業20科目×5,500=110,000
合計682,000円

70万弱で大卒の資格が取れるのである。
最もこれは授業料のみなので、入学時の諸費用や面接授業での交通費や宿泊費、食費が必要にはなってくる。結構痛い。
それでも、普通に大学に通うことを考えれば相当お安いと思うのだがどうだろう…。

そもそも放送大学に入ったのは、ひとえに大卒の資格が欲しかったからである。

この記事の中に、このように書いている。

・目標は社会福祉士
・社会福祉士国家試験の受験資格を得る為に、通信制の大学を4年で卒業
・通信制の専門学校に入り、1年8ヶ月の過程を修了
・学生となる約6年の間は介護職に従事、介護福祉士を取得する

社会福祉士国家試験の受験資格を得るには様々なルートがあったが、私には放送大学で大卒資格を得て、専門学校に入るのが一番現実的だった。地元でなるべく労ぜず勉強していくなら最善だったと今でも思う。何より金銭面でダメージが一番少ないルートだったのだ。いやこれでも相当無理したけど。奨学金とか国金とかフル活用したなあ。ボーナスの度にまとめて返済してたから、当然貯金も出来ないし。
そんな苦労も今となっては良い思い出だ。

放送大学在学中、私は目標である社会福祉士の試験勉強に役立ちそうな科目を選び単位を取りまくった。当然福祉分野が主になるが、それだけというのも何だかつまらなくて、情報系、心理学や哲学の科目も結構取った。
私は高校時代結構アレな成績の持ち主だったので、社会人の多い通信制大学と言えど、やはり難しいと感じる科目が大半だった。授業を聞いてもまるで理解出来なくて、単位認定試験をとりあえず突破できればいいや、と、試験対策のみだった科目もある。
そんな、お世辞にも勤勉かつ誠実な学生とは呼べない私ではあったけれど、どうにかこうにか4年での卒業を叶えることが出来た。

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お分かり頂けるだろうか。この学位記を手にした時の喜び。
遠い昔に憧れた大学生活とはかなり違っていたけれど、確かに自分の努力でこれを掴み取った。すごい。すごいぞ自分。
大学卒業は通過点だったのだが、この時の私は全てをやり終えた顔をしていたに違いない。

卒業して2年。カリキュラムや授業の方法などいくらか変わっているようだ。
この記事を書くにあたり久し振りに放送大学のサイトを訪ねたが、入学を検討していた時のように心が躍ってしまった。
実はこの放送大学、大卒資格を得る為に4年~10年在籍出来る他に、半年ないし1年在籍することも出来るのだ。学びたい科目だけどうぞ、という形。
今なら福祉とはかけ離れた科目を選ぶだろうな。『初歩からの物理』とか。
大学の『初歩から』なんて、きっと中学で挫折した私には物凄く難易度が高いのだろうけれど。

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