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1/4187(キナリ杯を終えて)

1/4187

応募総数、4240件。
受賞作品、53件。

今回受賞とならなかった作品が4187件。
うち1件が自分だ。

分かっていたことのようで、若干どこかに淡い期待もあったような。
昨日の受賞発表を経て、双方を行き交う心は一旦落ち着いた。

久しぶりだった。
こんな想いを持ったのが、久しぶりだった。

キナリ杯のきっかけ

岸田奈美さんについては、いいねやRTをされたツイートが流れてくるのを見て、存在を知っていた。

その岸田さんが『おもしろい文章コンテスト「キナリ杯」』を開催するという。
noteに書かれた概要を見て、興味が湧いてきた。

自分は当時(というか前からだし今もだが)、「文章を書く」「書いたことで自分の想いや好きなもの、紹介したいことを伝えていく」ということに、しっかり取り組みたいと思っていた。

そこに舞い込んできた「キナリ杯」。
応募作の投稿はnoteで、ちょうど自分も利用している。題材は「おもしろい文章」で、書きやすそう。何なら賞金まで出る。

自分の想いと、コンテストへのハードルの低さ(「低いと思っていた」ということ)が、俄然意欲を湧き上がらせた。
応募期間も長い。チャレンジすることに決めた。

岸田さんの考える「おもしろい」の要素に、

誰かや何かを猛烈に愛し、魅力を語っている

があった。
となれば、自分が書くのは「ラジオ」しかないだろう。そう思って、投稿したのが今回の文章だった。

日数としては、2~3日程度で書き上げた。4000字程度だが、その量の文章を書くことが久々だった。
誤字脱字がないか校正めいたことはしたが、内容については基本的に変更をしなかった。
書くことの路線を決めたら、大きく迷ったり筆が止まったりすることはそこまで無かった気がしている。

設定を済ませて公開ボタンを押す前に、若干の逡巡があった。
公開した後も加筆修正はできるようだが、おそらく自分はしないだろう。とは言え、ずっと下書き保存して応募しないわけにもいかない。
今回はこれでOKだと言い聞かせて、公開した。

明らかにキナリ杯の参加がきっかけで、自分の中にいいリズムができた。
取るにも足らないような日記レベルのものや、自分の好きな本の紹介が中心だが、今日まで「文章を書く」ということを続けられている。文章を書くためにインプットすることや、経験すること、メモが増えた。
応募した文章に「スキ」が付くのも嬉しかった。

受賞発表日を迎えて

結局、受賞発表となる昨日まで、応募作に加筆修正は加えなかった。受賞発表日が近づくほどに少々ソワソワもしたが、結果は出てしまうものなのだからと気持ちを落ち着かせた。

応募作の全てに「スキ」を付けられないことへのお詫びを、岸田さんがツイートされていて、運営を1人でされている大変さを感じた。
応募作は4240作。選出される受賞作は(最初より増えたといっても)53作。その全てを読み、全てを選出し、その上で応募者から寄せられる疑問や懸念にも対応しなければならない。
ここ数日は慌ただしさしかなかったのではないだろうか。

受賞発表の前に、岸田さんはこう書いている。

わざわざ頭の中を目に見える言葉にして、文章を書いて、noteで発表というド面倒なことをやってくださった時点で、選ばずともみなさんが優勝

ものすごく分かると同時に、本当に正直なことを言うならば、「いやいやいや」と思う部分がほんの少しだけあったことも否めない。

「杯」という名前のついた文章コンテスト。賞金が用意されていて、しかもその賞は協力してくれる多数のかたのおかげで倍増している。自分の淡い期待はまさにそこにあった。
簡単に受賞できるものではないし、自分が惜しみなく努力をしたのかというと何も言い返せない。だが、一種の「賞レース」に臨んだような気持ちも、確かにそこにはあったのだ。

賞を取ろうという想い、賞金を得られたらという想いで応募をした人も、ゼロではなかっただろう。

発表の時間を迎えて、時間ごとに紹介される作品と、その作者を確認する。タイトルや画像を見るだけで惹かれる作品がやはり多い。
作者は自分でも名前を知っている著名な方から、BKBさんやサンシャイン・坂田さんといったお笑い芸人、ライターや文章を書くことを仕事にされている方が多く、納得をするほか無かった。
ただ、受賞者の中にはそうでない(と思われる)方々もいて、この猛者たちの中で光る作品を投稿し、賞を受賞したということは「すげぇ」の一言に尽きる。

「超無限優勝」の1作品までの紹介が終わって、受賞作品が全てラインナップされた。
その瞬間に、自分の作品は「1/4187」になった。

閉会式・講評生放送を経て

受賞発表を全て終えて、Twitterでの「講評生放送」があり、ここまで来たらと見てみることにした。
晴れやかな顔の岸田さんがいた。

1ヶ月間のコンテストの全てを終えた達成感もあるのだと思う。だが、受賞発表までの2~3日はほぼ寝ておらず、4000を超える作品を読んでこの笑顔が出来るのかと、単純にそのすごさも感じた。

講評の冒頭に岸田さんが発した言葉で、自分は報われたような気持ちになった。

悔しさが残った人もいると思います。

報われるという言い方はおかしいのかもしれないが、最終的に「悔しさ」みたいなものは残ったのだ。万全の努力をしたわけではないのに。いろいろやる余地はあったのに。

文学賞であったり、M-1などのお笑いであったり、「賞レース」というものに参加するとはこういうことなのかと、それらはもっと熾烈なものなのかもしれないが、極々わずかながらに想いを知った気がしていた。

その後で岸田さんが話した、岸田さんの希望が、そんな自分の想いを少々変えた。

「キナリ杯」を書き物のフェスにしたい。

あぁ、そう考えればいいのか。
自分は「キナリ杯」というフェスに参加したのか。

主催者が「4000人もこのフェスに集まったんだぜ。すげぇだろ!誰より主催者のあたしが楽しんだけどな!全部見たぜ!」と、さも満足そうに感想を述べている。

賞金のカンパに協力した方々は、自身の名がついた賞の受賞者を「すげぇだろ!こいつが自分の名のついた賞を受賞したんだぜ!GRASS STAGEに立ったのはこいつ!」と紹介する。

受賞をし、GRASS STAGEに立った人は、それに驚き喜ぶ。
受賞できず、ステージに立てなかった人も、GRASS STAGEに立った人を称え、それぞれの作品を賛美する。

さながらヘッドライナーの終演後の花火のように、後夜祭が行われる。

悔しさはある。でも楽しかったし、嬉しかった。なんかハッピーになった人も多いんじゃないか。今回はそれが自分の「キナリ杯」だったのだ。

1/4187だ。悔しい。
1/4187だ。でも悪くは無い。


失うものはゼロ、得たものしかない。
文章を書くという習慣、もっと努力しなければという気持ち。これが得られたのだから、今回の収穫は上々だ。

また「キナリ杯」は開催される。それまで1年近くの期間がある予定のようだ。
文章についてもっと色々高めよう。今回受賞された方の作品を読もう。岸田さんが講評で言われていた書籍を読もう。毎日文章を書くようにしよう。

次回は応募が10000件を超えるかもということだ。受賞作はどのくらい・・・・・・?どう考えたって倍率は上がる一択だ。でも参加はする。GRASS STAGEに立つことを目指す。

本当に今回「キナリ杯」に参加して良かった。
岸田さん、本当にありがとうございました。

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