ラジオフリーク~若干引くほどのラジオ愛を~

引っ越した。
前の引っ越しから1年も経っていないのに。

しょうがなかった。
父の転勤だったから。
生まれ故郷は既に離れていたので、
今の場所に居続ける理由も無かった。

新しいところに行くのはいつだって。
楽しみだというドキドキと。
どうなるんだろうというソワソワと。
言いようの無い複雑な感情が渦巻く。

また新しい場所で、新しい生活が始まる。

これが自分の、「ラジオ」の始まり。

引っ越し、ラジオの始まり

中学に入学して1ヶ月、
最初のゴールデンウィークに引っ越した。

小学校の卒業まで半年という最後の夏に、
生まれ故郷を離れてから、
今度は1年足らず。

ずっと過ごしてきた場所にはもう居ないし、
何より父の転勤だし、
引っ越しをしないという理由は特に無かった。

田舎だった。
後々もう何回か引っ越して過ごす場所を変えるのだけど、
その中でも一番の田舎だ。
電車は1時間に1本(現地の人は「汽車」と言っていた)。
山に囲まれ、野生の動物も頻繁に出てくる。
デパートなんてものは無く、娯楽施設といえば(当時は)
スーパーの横の小さいゲームセンターと、
昔のコンテナボックスのようなカラオケくらい。

学校が始まればすぐに友達はできたけれど、
中1の自分がまだまだ慣れない新しい生活の中で、
ふと聴き始めたのがラジオだった。


それまでの自分とラジオの繋がりは、
父の運転する車の中で聴いていた程度。
ローカルFM局の放送だし、
知らないオジサンが喋ってるし、
本当に「車の中で流れるもの」のイメージ。

引っ越す直前に仲良くなった友達が、
「ラジアンリミテッドのコーナーのオープニング曲がヤバい」
と何かに書いていたのを妙に覚えていて、
だから聴いてみるかと思ったのもきっかけだった。

親の持っていた古めのラジカセを部屋に持ってきて、
何となくツマミを回してチューニングしてみる。
「うわ・・・・・・ブリグリだ」
the brilliant greenが喋っているのが聴こえてきた。

その後も嵐は出てくるし、
色んな曲も聴けるし、
メインの喋り手の人はよく分からないけど、
とにかく飽きない、面白い。

自分のラジオの始まりは、
平日の22時から聴く「ラジアンリミテッド」だった。

金曜の夜になると、
ラジアンリミテッドは放送が無い。
その代わりに喋りだしたのは、

「キムタクがラジオやってるんだ・・・・・・!」

木村拓哉さんだった。
「木村拓哉のWhat's up SMAP!」だ。

当時の中学生は誰しもが観ていたんじゃないかというTV番組、
「SMAP×SMAP」(スマスマ)
でもきっとラジオはみんな聴かないだろうし、
キムタクがTVでは話さないようなことを喋ってるし。
そういう思いが、自分をさらにラジオにのめり込ませた。


ラジオ熱中時代

毎日夜はラジオを聴いて、
何なら朝、学校に行くまでの時間もラジオを聴いて。
テスト前で時間があれば、
勉強をしながらラジオを聴いて。

ずっとラジオを聴いていた。
福山雅治さん、石井竜也さん、恵俊彰さん、桑田佳祐さん、
FMラジオの虜だった。

友達とラジオの話が出来るのも、
楽しくてたまらなかった。
友達はAMラジオを聴いていて、
自分の古めのラジカセでは、何故かAMラジオは聴けなかった。

それが中学校の技術の授業で、
ラジオも聴けるライトを作ることに。
家に持って帰ってAMラジオが聴けるようになった瞬間、
もう嬉しさしか無かった。

そこからは深夜もラジオを聴きだして。
誰しもが通る道なんじゃないかという番組、
オールナイトニッポンを聴きながら、
自分のラジオの世界は広がるばかりだった。


高校2年の夏、またその時は来た。
引っ越しだ。

ずっと過ごしてきた場所にはもう居ないし、
何より父の転勤だし、
引っ越しをしないという理由は特に無かった。

受験が視野に入ってくる頃だし、
中途半端な時期の引っ越しだし。
何となく人間関係が出来上がっている中に入っていくのは、
少々難しい部分もあった。

ラジオを聴くことは変わらなかった。
むしろラジオが当時の自分を、
支えてくれている部分は大きかった。

その頃には携帯電話も持っていたから、
中学時代の友達とメールをする中に、
ラジオという共通の話題があるのも楽しみだった。

好きな人たちが語りかけてくれて、
流行りの曲から聴いたことのない音楽まで様々流れてくる。
それだけで毎日頑張れた。


好きすぎてラジオを「作る」

時は少々流れて、
大学にギリギリで入学してからも、
基本的にはラジオを聴き続けていた。

据え置きのラジカセやコンポを使って聴いていたのが、
MP3の音楽プレーヤーを手に入れたことで、
もう家じゃなくてもラジオを聴いていた。

通学に1時間かかる電車内は、
常にFM福岡の番組が耳を占拠する。

大学に入るまでは、全国で流れる番組、
有名人がパーソナリティを勤める番組を聴くのが中心。
大学入学を機に、一気に地元FM局のローカル番組を
聴く機会が増えた。

朝は「MORNING JAM」
昼は「ラジ★ゴン」「ブチカン」
夕方は「GOW」

福岡の有名パーソナリティが進行し、
コーナーやリスナーからの投稿も、
やはりローカル色を感じるものが多い。

有名番組のようにドキドキする事や、
大笑いをするようなことは少ないのかもしれないが、
いつも同じペースで流れる声やコーナーが、
気持ちを穏やかに、心地良くさせてくれた。


ラジオが好きすぎた自分は、
「ラジオを作る」ということも経験した。
FMラジオ局で、幸運にもADとして1年間働く機会を得たのだ。

5分程度の番組だったが、
自分たちで関連する情報を探し、アポイントを取り、
録音機材を持って取材に行く。
気になるイベントや取り組みがあれば足を運び、
主催者・参加者の声を聴く。

プロデューサー、ディレクター、番組専属のパーソナリティと
チームを組んで番組を制作していく。
肝を冷やすような失敗や、衝突することもあったし、
ADなので貢献度の割合で言えばそこまで大きくもないかもしれない。

けれど、自分が大好きなものの作り手側にまわるという、
本当に夢のような経験が出来た1年だった。
「現場」に足を運んで仕事ができた、
「現場の人」と会って話ができたという、
ミーハーな気持ちも勿論あった。
でも、自分が関わって作ったものが、
自分の好きなラジオを通して流れる。
この経験を通して、ラジオをもっと好きになったことは
言うまでもない。


今とラジオとこれからと

1年間のラジオ局での制作経験を経て、
ラジオ愛はさらに深まるばかり。

それに拍車をかけるように、
もっとラジオを聴く機会を与えてくれたのが、
「ラジオアプリ」だった。

最初は「LISMO WAVE」
FMラジオ局のみではあったが、
全国47都道府県のラジオが聴けるという、
ラジオ欲を満たすこれ以上にないアプリ。

ジャニーズのタレントが担当するラジオは
(おそらく権利上の関係から)聴けなかったり、
CMも流れないものがあったりと、
当時はまだまだ未開の部分も多かった。

でも全国のラジオが聴けるというだけで、
なんだかもう満たされた気がして。
あぁ、自分のためのアプリなんだなと思って。

そこから更に時を経て、
「Radiko」がラジオアプリの代表格になった。

有料ではあるが、
今では全国のAMラジオ局・FMラジオ局の放送が聴ける。
これで月額400円弱とか、実質タダだ。

ジャニーズタレントの放送も基本的には聴けるし、
CMだってその都道府県のものが流れてくる。
その日の放送が終わった番組だって、
1週間のあいだは遡って聴くことができる。

中学生の頃から聴き始めたラジオが、
今ここにひとつの到達点を見た気がしている。
ラジオを聴くということについて、
基本的に困ることはないような気がしているのだ。


ラジオの楽しみ方は、大人になった今、
中学生の自分からみればうらやましくなるほど
変わってしまった。

福岡で暮らす今も、休みの日は
関東地方のラジオ放送を聴く日々。
「たまむすび」「Skyrocket Company」「アフター6ジャンクション」
「土曜朝6時 木梨の会。」「FUTURESCAPE」「TOKIO HOT 100」

挙げていけばキリが無い。

自分のお金で旅行が出来るようになってからは、
行った先々のローカルラジオ局の放送を聴くという
ちょっと変わった、でも自分にとってはこれ以上ない
旅の娯楽も手に入れた。

でも、よく言われる
・ラジオは1対1のメディア
・自分に語りかけてくれるのがラジオ
これはいつまでも変わらない部分のひとつ。
中学生のころに自分を熱中させたラジオの魅力は、
今なおラジオに惹かれさせる大きな要素だ。

メールを送って読んでもらえれば嬉しいし、
大好きな番組のイベントがあれば足を運びたい。
好きなパーソナリティがオススメするものは、
自分もそれを経験したい。

そして、出来ることならラジオを「作りたい」。
曲がりなりにも一度経験した作り手の醍醐味を、
どんな規模でもいいからまた経験したい。


ふとしたきっかけで、ここまで楽しみを広げられるなんて、
今ここまで書いてきて、自分でもちょっと驚いている。

ラジオは古いなんていう人もいるし、
無くなるんじゃないかということも常々言われている気がする。
でも、災害時にはラジオの必要性が都度挙げられて、
今なおラジオが消えるということは無い。
(ラジオ局の経営云々となると全く違う話だとは思うけど)

むしろアプリやインターネットを通じて聴く機会は増えた。
ただ「聴く」だけじゃなくて、番組のイベントなどを通じて
「経験する」ということもまだまだ沢山ある気がしている。

聴き方だってさらにどんどん変わっていくだろうし、
放送の仕方だって今まさに変化している最中だ。

とにかくこれからのラジオにも、
自分は期待しかしていない。

ラジオ、いいよ。面白いよ。

言いたいことは、本当はこの13文字に尽きる。
きっと同じく面白いと思ってくれている人は居て、
でも自分と同じ道は辿っていないはずで。
そんな人たちにも改めて言っておきたいのでもう一度。

ラジオ、いいよ。面白いよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?