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#9「めんどくさい」のひみつ道具① 「時間メーター」

めんどくさいの哲学 #9

 前回、坂口恭平さんのnote「生きのびるための事務」を参考にして考案した24時間の円形スケジュール表…長くてめんどうなので名前をつけましょう。時間が見えるから「時間メーター」というのはどうかな。文字盤みたいなのでダイヤルというのも考えたんですが、なんかメーターの方がしっくりくる気がします。ドラえもんのひみつ道具みたいでいいかもしれません。

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 ところでこの時間メーター。めんどくさいと付き合うための、強力なひみつ道具でした。今までも、やらなきゃいけないことがあると、箇条書きにしたり(いわゆるTo Doリストですね)はしてたのですが、どうも実感がわかないというか、使い勝手が悪かったのです。ところが時間メーターで書き出すとちょっと違う。なんかかなりいい。そのよさを以下に列挙すると…

①それぞれのピース・オブ・ケイク(ひと切れのケーキみたいな形)が、文字通り朝めし前に感じられる(a piece of cakeは「かんたん」の意味)。
②ピース・オブ・ケイクの大きさによって、時間の長さが直感的に見える。
③遊びやのんびりする時間、食事や風呂の時間までスケジュールに組み込めるので、めんどくさいことのリストにならない。

 この③番は意外な発見でした。そういやTo Doリストって、やらなきゃいけないことのリストなので、めんどくさいことのリストです。当然ながらそれは「嫌なことリスト」みたいなものなので、見ても心が躍りません。むしろげんなりさせられます。ところがこの時間メーターは、「ヨガ・コーヒー1時間(けっこうたっぷり)」「昼寝・読書1時間」なんてものまで書いてあります。最近はDAZNで野球観戦する時間なんかも書き込んでいて、今日の時間メーターには「ロッテ×ヤクルト(交流戦)」も入ってます(笑)。つまり、いつ「めんどくさい」をするかだけでなく、いつ「楽しい」をするのかもスケジューリングできるツールなのです。

 こうなってくると、「めんどくさい」は、ここでちょっとかんばれば、「そのあとヤクルト戦観てよし」という褒美がもらえることも明確なので、やる気もアップ。「めんどくさい」が色褪せてきます。人は、10時間でアップしなければならない仕事があったとすると、10時間まるまる仕事をするような気がしてしまいますが、実際、10時間まるまる仕事なんてできるものではありません。でも時間メーターを使うと、途中、安心して昼寝したり、読書したりもできます。だって、10時間後にはアップすることが見えているのですから。また、これは仕事があるときにかぎらず、休日にも極めて有効でした。ぼくはやりたいことがいろいろあるのですが、その整理に役立つのです。

 ところで自分としては、ひじょうに画期的! 世紀の大発明! くらいの気持ちの時間メーターなんですが、妻に見せたら、「うーん」という顔をしました。
「だって、やりたいことに没頭しているときも、時間が来たらやめなきゃいけないんでしょ? そういうのはどうかな。自分のそのときの気分に合わせたいのでは?」とのこと。
 確かに、あらかじめ決められた通りにやるっていうことに、抵抗がある人もいるかもしれない。ぼくとしてもこれまでの人生、アドリブでやってきました。自然の流れに身をまかせて、そのときそのときの気分で行動するのが「自由」というものだと思ってきました。でもここへきて、その「自由」のおかげで、何もできないような気がしていたのです。

 ここしばらく、日曜日の夕方がすごーく憂鬱でした。あれもやりたい、これもやりたいのに、結局、食事の支度しかせず、酒飲んで寝ちゃうんだな。こんな土日を繰り返して、ぼくは死んでいくのかもしれない。暇がないわけじゃありません。何かがやりたくて手を出してみても、他にもやりたいことがいろいろある。ひとつやると別のことが気になって、結局ひとつのことにも集中ができない、という感じなのです。気分にまかせている間に、人生の残り時間が少なくなって、やりのこしたことがいっぱいあるような気がしてきました。
 そんなわけで、もう気分なんかに振り回されるのはいやなのです。気分っていったって、そのとき見た映画や動画に感化されたり、家族の気分に左右されたり、仕事の心配に影響されたり、いろいろな外的な要因に振り回されていて、別に自分の自発的な「自由」とは、あまり関係ないのでは? という気持ちになっていました。
 そんなときに思いついたのが、この時間メーターでした。ぼくにとっては、これは、まさに救世主。世紀の大発明なのです。

 しかし時間メーターは、これさえあれば安心、というものでもありません。これだけでは不十分なのです。そのことについてはまた次回。

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