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#10 「めんどくさい」のひみつ道具② 「とにかくタイマー」

めんどくさいの哲学 #10

 前回紹介した時間メーターは、やらなきゃいけないこと、やりたいことを24時間の円盤に書き込むTo Doリストでした。これを書くことによって、めんどくさいことの全体像が見えるとともに、やりたいことも目に見えるので、ばくぜんとしためんどくささが具体的になって、かなり気が楽になる。へたするとこれを書いただけで、仕事が終わったような気分になれます。

 ところがこれには、落とし穴があります。当然のことですが、やらなきゃならないことの時間が来たときに、スパッとその作業に集中できない場合があり、スケジュールがグダグダになってしまうのです。
 これ、まあ予想はしていたんですが、実際やってみるとやっぱりそうでした。一瞬、メーターを書いただけで終わった気になった自分の浅はかさにあきれ返りました。

 でも、そんなときに役立つのが、この「とにかくタイマー」です。いや、前回、スケジュール表に「時間メーター」と名前をつけたのが、思いのほか気に入ったので、これにも名前をつけてみました。名前、重要ですね。ル・グインの「ゲド戦記」というのは、魔法使いの話なのですが、そこでは名前が重要です。世の中のものには、普通の名前の他に「本当の名前」があり、魔法使いは、本当の名前を知っていて、それを呼ぶとものを思い通りにできるのです。名前をつけるというのは、そんな呪術てきな何かがあるのではないでしょうか。ただのタイマー・アプリを「とにかくタイマー」と名付けると、なぜか親しみが湧いたり、特別な力が備わるような気がする(気のせいではありますがね)。

 とはいえまあ、なんてことないタイマーのアプリです。私が使っているのは、アップストアから無料でダウンロードした「ClockX」というもので、いつも他のアプリより前に表示されます。で、分数をセットし、リターンボタンを押すとスタートします。

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 これをどうするかというと、このタイマーを20分にセットし、「とにかく」20分間は、ぶっつづけで作業をするのです。わき目もふらず。一心不乱に。そうすることで、とにかく作業がスタートするのです。これは意外と効果がありました。何だかわからないがとにかく20分間せかされる感じもあるし、「とにかく」20分という限定感もいい。これから2時間と考えると、どうしても「めんどくさい」が頭をもたげてしまうのですが、20分というのはギリギリ、まあそのくらいならいいか、と思える時間です。

 何か作業を始めるときというのは、スタートダッシュにエネルギーを使うものです。まず、いろいろなことを考えなくてはならない。この仕事を終えるには何が必要なのか、いま不足しているのは何か、どういう順番でやれば効率的なのか、といった、いわゆる「段取り」を考える必要があり、これが「めんどくさい」のです。これが整ってしまえば、あとは段取り通り作業をしていけばいいので、慣性で進んでいく感じがあります。

 妻の家のおばあちゃんは、農業を営んでいた人ですが、その口ぐせが「仕事するより回ししろ」というものだったそうです。「回し」というのは、その地方の方言なのかどうかわかりませんが、段取りの意味だそうです。おばあちゃんは、「めんどくさいの哲学」に通じていたのだと思われます。

 「仕事するより回ししろ」。回しするなら「とにかくタイマー」を使え。というのが、「めんどくさい」を克服する、第二のひみつ道具です。

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