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「ひらがな」が英語の読み書き教育に役立っていた話 (1/2)

Nardagani(ナーダガニ)ってご存じですか? 私もつい先日まで知らなかったのですが、アメリカで開発された文字の読み方を学ぶためのプログラムで、“子ども向け発音記号” という感じのものです。

きっかけは YouTube でした。画面右側のリストに挙がっていた TEDx のサムネイルを軽い気持ちでクリックしてみると、そこにはナーダ・ピッケスリーさんによる、なんとも素敵なストーリーが。しかも Nardagani のベースは日本語の「ひらがな」だというではありませんか。

TED 翻訳者の私には、TEDx の良質なトークを見つけると「日本語字幕は付いているかな」とチェックする癖があります。アラビア語、フランス語などの翻訳はあるけれど、日本語はありませんでした。トークには日本が出てくるし、教育的に有意義な内容だし、なによりほっこりできる。日本の人たちにもぜひ見てもらいたい。じゃ、つくるか。

というわけでサクッと訳し、日本語チームの仲間の協力を得て、着手からわずか1週間ほどで日本語字幕を公開することができました。(Many thanks to Yoshie Asahara & Naoko Fujii.)


さて、この翻訳にまつわる小ネタを2回に分けてシェアしようと思います。今回は「Nardagani という名前の由来について」。次回は「このトークをヒントに、日本人の英語学習について考えたこと」です。

「ナーダ… ガニ」?

翻訳に取りかかり、まず最初に思ったのは「Nardagani の『ガニ』って何?」ということでした。いや、固有名詞なので翻訳としてはカタカナにするだけで済むのですが、個人的に気になってしまって。「ナーダ」は開発者の名前。でも「ガニ」は?蟹?

こういうときの常套手段は公式サイトや開発者に関する記事、動画などから周辺情報を集めること。たとえば公式サイトに「名前の由来」みたいな記述があればスッキリ解決です。しかし、捜査は難航しました。「Nardagani とは」はあってもプログラムの内容や利用方法ばかりで、「ガニ」の謎に迫っているものは見当たりませんでした。

しかもこのナーダさん、TEDx での控えめなご様子から感じられるとおり、ネット上での露出が非常に少ないのです。やっと見つけたのが、今年2月に地元で開かれた著書の出版記念イベント。ここで「ガニ」が話題に上る保証はありませんが、なんとなく良い予感がしたので動画を見てみました。ちなみに、この動画の中でナーダさんは「ステージに立つのは2017年の TEDx が人生初で、これが2度め」とおっしゃっています。どうりで見つからないはずですよね。

名前の由来を探してたどり着いた動画でしたが、思いがけずナーダさんの兄を探す物語に惹きこまれることになりました。詳しくは動画と著書でどうぞ。

そして私が求めていた瞬間は、15分を過ぎたところで突然やってきました。開発したプログラムに名前を付けることになり、「『ナーダなんとか』にしたら?と提案されて…」来たっ!うんうん、それで?なんで「ガニ」なの?

「『ガニ』がいいんじゃない?『オリガミ』みたいで日本語っぽいし、って言われて。そうしました。」

うぉぉ、そう来たか。ノンネイティブならではのノリ。なるほどー。

(次回につづく)


Photo by Josh Applegate on Unsplash

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