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自分に必要な学習を選んで、実行する

会話を聞く書き起こす評価するというステップを経て「自分の英語を上達させるために、これをやる」と決めたら、実行あるのみ。英語が好きな人にとってはお待ちかねの、好きじゃない人にとっては観念してのぞむ、レッスンがはじまります。

STEP 7 レッスン

このステップでは、受講生が自分にとって重要な課題を自分で選択し、取り組みます。どんなレッスンにするかという全体像。何をいつまでにやるかという具体的なスケジュール。実際の学習と、振り返り。プログラム前半をまとめあげると同時に、後半のIndependent Studyに向けて、徐々に一人でできることを増やしていきます。

まずは「会話する」以降のステップを振り返りながら、コーチとともにブレインストーミングをおこない、計画を立てます。ここでのキーワードは、「もう一度チャンスがあったら?」です。

「もう一度チャンスがあったら?」と考える

自分の英会話を聞き直し、トランスクリプト(会話を文字化したもの)を見返すと「あぁ、ここがまずかったんだ」と気づくことがあります。そんなときは「もう一度チャンスがあったら?」と考えてみます。

現実には、同じ相手と同じ場面で同じ会話をすることは二度とありません。でも、近い将来あなたが今回と同じような会話をする可能性は非常に高いのです。たとえば、出身地、趣味や職業などは、新しい人と出会うたびに話題にのぼります。また、あなたのあいづちの打ち方や間(ま)の取り方などの特徴は、相手や場面に関わらず、会話をする上で繰り返しあらわれるものです。

「評価」までのステップで気になったところがあれば、その場面に戻って“テイク2”を撮るつもりで、今度はどう言うか考えましょう。単語や発音、文法など英語のこと? あいづちを増やす・減らす、クッションになる一言を挿入するなどコミュニケーションのこと?「レッスン」を利用して、自分で“台本”を修正し、同じ場面の会話をよりスムーズに、自信を持って運べるように準備します。

レッスンの内容

受講生がつくるレッスンは、特定の文法項目の復習、発音の練習、コミュニケーションに役立つ情報収集など、多種多様、多岐にわたります。

たとえば、過去形をおさらいし、それを使って、毎晩寝る前にその日の出来事を書き留める。/ɜː/ の口の形をYouTubeで学び、音声認識で自分の発音が正しく聞き取ってもらえるか試す。「いいね」系の表現をリストにまとめ、自然に言えるようになるまで練習する。などなど。

備えあれば、憂いなし。しっかり準備をしておけば、実際に“テイク2”に遭遇したとき、「来た!」とばかりにとっさに反応できる可能性が高まります。受講生が「本当にそのときが来て、ちゃんとできたんです!」と興奮ぎみに報告してくれることがありますが、それはもう、めちゃくちゃうれしいものです。

少し前までできていなかったことが、自分の努力によってできるようになった喜び。こうした経験は記憶によく残り、成功体験としてこれ以降の学習に影響しつづけます。

「i + 1」…なのかも?

アメリカの言語学者で教育者の Stephen Krashenは、言語学習者のもつ現在の力を「i」として、そのちょっとだけ上にある知識を与えることが上達につながると考え、「i + 1」という概念を発表しました。この概念は世界中で広く知られている反面、「何をもって『i』とするのか、測りようがない」「何が学習者にとっての『+1』に当たるか、個人差が大きすぎる」「『+1』(ちょっぴり上)と『+3』(だいぶ上)とを見分ける方法がない」など、多くの批判にさらされています。

批判はごもっとも。少なくともオリジナルのままでは、「i + 1」を科学的に論証することは不可能でしょう。でも、受講生たちが自分の手の届く範囲で学習項目を選び、「もう一度チャンスがあったら、今度はこうするぞ」と準備をし、「実際にチャンスが来て、できた」と喜ぶ姿を見ていると、「これって『i + 1』だよな」と思います。ま、「i」を”データに基づいて適切に評価した結果、学習者本人が現在の自分の力だと認めたもの”、「+1」を”学習者が自ら設定し、コーチの了承のもとに与えられる、高すぎず低すぎない学習項目”と定義し、学習者が自主的に学習をおこなった場合…とか、長ったらしい条件付きになりそうですけど。

なにはともあれ、これで前半のトレーニングは終了。次のステップからは、「自分で考えた学習を行う」に入ります。


Photo by bruce mars on Unsplash

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