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【お店雑記】「しか」と考えるか、「も」と考えるか。

今日はお客さん、1組しか来なかったなぁ。

と、ぼやくことがある。そのたびに立ち止まって、「はて、1組 ”しか”なのか?」と思い直して首を振る。ちがう。いや、事実そうなのだけれど、うーん、なんだかちがうような気がする。

”しか”と思ってしまう中身には、期待が込められていると思う。今日はたくさん来てくれるだろう。1組なんてことはありえないよね。結果、1組だったらなんだか損した気分になる..ということなのだろう。

でもね、その1組が大きかったりする。

たとえば、初めて作家もののうつわを買いにきたお客さん。
ドキドキしながら草々にくる。インスタを眺め、地図をみて行き方を調べて、道中も期待と少しの不安が入り混じりながら、くる。その様子は、入ってきたときと、帰るときの顔を見ればわかるのだ。そうして、ある一つのうつわの前で立ち止まって選ぶ瞬間はいつ見ても眩しい。


お父さんの還暦&退職祝いを探しにきたお客さん。
湯呑みを探しているといっていたから、私も腕まくりして色々な湯呑みをテーブルに並べた。真剣に悩む後ろ姿を見ていると、なんだかお父さんの気分になったようでうれしくなった。もうどれを選んでもよろこぶよぉ、と心のなかで涙ぐんだ。

そうして選んだのが、どっしりした湯呑み。
「お父さんっぽくていいねぇ」と言い合いながら紙袋を渡すとき、ホッとした彼の表情が忘れられない。


そうそう!今日は、友だちの結婚祝いに花器を選びにきたお客さんがいた。
友だちは普段あまりこういう作家のうつわを使わないようで、この花器からなにか新しい世界が開けたらいいなぁと。じっくり見ながら、どんな花が合うかなぁと想像しながら選んでいたようだった。

これもまた、きっとうれしい。いや、きっとじゃないな。絶対にうれしい。たとえ友だちが花器を持っていたとしても、選ぶ過程には色んなことが詰まっているからだ。私も不器用なラッピングで後押しした。



こういうお客さんがきてくれるたびに、”しか” ではないよなぁ。今日、お店あけてよかったなと心から思う。誰かの心がほぐれたり、誰かの気持ちが大切な人へ伝わったり。その良い循環がいつしか渦となって、なにか大きなものに変わっていくのかもしれない。だからね、これからは、

今日はお客さん、1組も来てくれたよ。

そう言おうと心に決めた。強がりではなく、”も” を積み重ねた先に広がる景色を見てみたいと思ったからだ。

***

うつわと暮らしのお店「草々」

住所:〒630-0101 奈良県生駒市高山町7782-3
営業日:木・金・土 11:00-16:00

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