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うつわが見せてくれる、景色。

うつわを使っていると、その日によって目にうつる景色が変わることがある。でこぼこな形、ニュアンスのある色、ざらざらした手触り..毎日見ているはずなのに、その日の気分や食材の合わせによってハッとすることがあるから面白い。

これはどういうことかというと、例えば、食べながら初めて出会ううつわの表情に見入ったりする。

この写真を撮ったときも「あっ」と思って、箸を止めた。
食材の残りや汁気が、うつわとともにひとつの景色となっていて。じわじわ感動がきた。
「身体のこんなところに、ホクロがあったのか」というような感じで、「うつわのこんなところに、こんな表情があったんだ」とまじまじ見つめてしまう。これはきっと、食材がのっていなかったら見えなかった景色だ。

ときには重ねてみたり、高台まで眺めたりすることもある。

輪花皿(りんかざら)。

このうつわには必ずお漬物をのせていて、上から見たときの形がきれいでお気に入り。食器棚にしまうとき、重ねながらいつもウキウキしてしまう。繊細なものだから欠けないよう気をつけている。


これは、とても小さな豆皿なんだけど高台が美しくて、たまにひっくり返して眺める。小柄なのに力強いたくましさがあって感心する。よく、小さな花をのせたり、紅茶のティーバッグを置くのに使っている。


うつわの縁も好きだ。
ポンッと真ん中にパンやらケーキを置いたときに、その食材が引き立つようにほどこされているさりげないデザイン。

こういう縁が好きで、食べながら、よく指でなぞってしまう。
食べ終わったあともすぐにしまわないで、佇まいが美しいからうつわをしばらくそばに置いておく。本を読みながら、文章を書きながら、たまにちらちらと見る。ただそれだけのことなのに、心が少しだけ満たされた気分になるから不思議だ。

お正月に食べたお雑煮。

今年は実家の神奈川に帰れなかったから、家でゆっくり過ごそうと奮発して漆のお椀を買った。このつややかでなめらかな表情と口当たりを感じながら、今年はたった一杯のお椀でも、こうして心を込めてつくって満足できる自分でありたいなと願いながら味わった。


心がそわそわしているとき、ふと食材の隙間から出てくる愉快な表情にも癒されたりする。

このうつわに描かれているイラストが大好きで、とくに左下にちょこんと出てくる謎の生物がお気に入り。これは陶芸家 脇山さとみさんがつくったものなんだけど、彼女曰く、「うさぎちゃん」なんだって。会うといつもこのうさぎちゃんの話で盛り上がる。漬物の間から見えるこのゆるさが、「なるようになるさ〜」と合言葉のように唱えてくれているようで励まされる。
半目なのもまた、いい。

そうそう、ちょうど今朝、脇山さんからDMがきて、私がプレゼントした赤かぶのお漬物をのり巻きにして食べたんだって。

うつわの柄と食材の色がきれいに折り重なって、すてきだなぁと朝からにやにやしちゃった。他の人が食材を盛ったうつわを眺めるのもまたいいな。


***


うつわの使い方や向き合い方って人それぞれだけど、私にとってうつわは、『心のバロメーター』だと思う。時間や心にゆとりがあるときは、ゆっくり眺めることで新しい景色との出会いがあるし、せわしないときはふとした瞬間に目に入った景色にぐっと心を掴まれたりする。その瞬間、現実世界に引き戻されたように、うつわと私の間にゆっくりした時間が返ってくる。

毎日、ご飯をつくって、うつわを選んで、食べて、眺めて、洗って、食器棚にしまって..。この繰り返しは単調なようで、とても大きい。生活の根幹になるからこそ、私はうつわに助けられているなぁと思う。自分をおだやかに保つきっかけを、私はうつわから気づかないうちにたくさんもらっている。一つひとつのうつわに思い入れがあって、出会ったときの気持ちや陶芸家さんの顔が使うたびに思い浮かぶ。



今、次のインタビューの準備をしている。

再来週に奈良の陶芸家、「尾形アツシ」さんの工房へ行って話を聞く予定だ。私は、尾形さんがつくるうつわの表情がとても好きだ。毎日、使って眺めていてもいっこうに飽きない。それどころか、見るたびに新しい景色を見せてくれる。いったいどうして、こういうものがつくり出せるのか、尾形さんは普段どんなことを考えて、どんな景色をみているのか、とてもとても気になる。だから機会をもらえたこと、とてもうれしくありがたいことだなと噛み締めている。

また、今年からインタビューの質をあげたいと思っている。
陶芸家さんにはせっかく貴重な時間をいただくから、お互いにとって、このインタビューを飛躍するような場にしたい。聞くこと・話すことで、新しい扉が開かれるような、そんな機会にしたいし、詠んでくれる人の心に豊かに響いていくような、そんな文章を書きたい。
そういう思いから、私のインタビューnoteに編集者さんをつけることにした。文章を書きはじめたときから、「いつか編集をお願いするならこの人!」という尊敬する人がいて、今回ドキドキしながらオファーしたら快く受けてくれることになった。うれしいのと同時に、気が引き締まる思い。より心を込めて、質のいいものを届けていきたい。
春にはアップできる予定なので(きっと..!)、また読んでもらえたらうれしいです。

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