1本100円の大根を楽しめる人生を。
「大根の皮、捨てちゃいかんで!」
年末に料理をしていたときに、言われたこと。
私は今まで大根の皮を厚めに切ってはなにも意識せずゴミ箱にポイしていた。このときも、いつも通りポイしようとしたらこう言われたのだ。
「大根の皮は最高においしいんよ。塩漬けやきんぴらにしても、いいんだから。」と簡単レシピを伝授してもらった。
それから、大根を買うことが楽しみのひとつになった。朝市で大根を見ると皮の様子をみて「おいしそう」と想像してしまう。葉っぱも栄養があっておいしいからふりかけを作ろうとかスープにしてみようとか、主菜とのバランスを考えたレシピアイデアがぐるぐると頭の中で膨らむ。
大げさな言い方かもしれないけれど、あの一言で私の世界は変わってしまったようだ。
教えてくれたのは風の栖のオーナーで、もったいない!捨てない!精神のかたまりの人だ。毎日、暮らしの知恵や工夫をたくさん教えてくれる、私にとっては奈良のお母さん的存在。
そんなオーナーと、今日ゆっくり話す機会があった。
今の大変な状況やこれからの不安話からはじまり、最終的には例の、大根の話になった。
「お金の使い方は人それぞれだけど、私たちはさ、1本100円の大根を楽しめる人生でいようね」
それからこの日もまた、新たなレシピを伝授してもらった。
大根の葉っぱをごま油とにぼしで炒めると出汁がいい感じで滲み出て、最高においしいということ。フライパンの動かし方や油の量など細かなコツも教えてもらった。1本の大根をどこまで楽しめるか、色々試してみながらおいしいにたどり着くとうれしいよね、という話でひたすら盛り上がった。
つつましさの中に見つける小さな楽しみは、積み重なると生きる自信になるのかもしれない。大根やオーナーからそんなことを教わっているようだ。
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