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【お店雑記】はにかむ姿と出会いの瞬間。

「やっぱり尾形さんの鉢はいいわねぇ」「今日はね、見野さんのデザートカップを探しにきたの」

先週来てくれたお客さんがこんな話をしてくれた。その方はリピーターさんでさらっと言っていたんだけど、この言葉をあとで思い返してじわじわとうれしくなった。だって、主語が「尾形さん」や「見野さん」と陶芸家さんの名前になっているからだ。

きっとお客さんの中では、「尾形さん」や「見野さん」がどんな人なのか、あるていどイメージができあがっているんだと思う。実際に会ったことはないだろうけれど、私の話やSNSの情報、実際に使ってみることで頭のなかにぼんやりできているのだろう。使うたびに「尾形さんの鉢」「見野さんのデザートカップ」だと分かったうえでつかうのだろう。

これって..すごくないですか。

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たまに、お客さんからこんなことを聞かれる。

「このお店は " なに焼き "を置いているのですか?」

聞かれるたびに、いつも一瞬言葉を探してしまう。こういうときほんとうは奈良でお店をやっているのだから「赤膚焼(あかはたやき)です」というのがスマートなんだろうなぁと思う。それか、「有田焼」や「清水焼」というと、あぁ絵付けがあるものね、とイメージしやすいんだろうと思う。それぞれに歴史や伝統があるし、つくりかたも確立されている。私も家で使っているし、いつか草々にも置きたいなぁとは思っている。

しかし、いま草々に置いてあるうつわは少しだけちがう。同じ陶磁器なんだけど「〜焼」というジャンルのうつわはない。しいていえば…伊賀焼?みたいなものはあるけれど、実際に陶芸家さんに聞くと使っている土や釉薬がちがうのでやっぱり「〜焼」とくくれないことが多い。では、どんなものを置いているのか。さらにしいていえば、「だれがどこでつくったのか」がはっきりわかるようになっているものだと思う。工房をたずねインタビューをして日々たくさんお話して、聞いた話、見た風景や感じたことを、ことばや写真を尽くして届けている。

だから、お客さんからその「かけら」を感じるととってもうれしい。それはありのままでなくてもよくて、自分なりの妄想を吹き込んでもいい。事実と離れていたっていい。そこに寄り添っているのが、ただ無機質なものでないということだけで、お店をやってよかったなぁと心から思うのです。


旅先で、ふらっと入ったお店で、「いいもの」に出会えるとラッキーだなと思うことがある。あとで調べて有名な人がつくったと知ると、「やっぱり自分は見る目があるなぁ」と自慢げになるし、そうじゃないとしても「掘り出し物を見つけちゃったぜ」となる。結果どちらに転んでもよくて、そのとき大事なのは、「いいもの」に出会えたかどうかなのだ。誰かの目ではなくて、自分の目で確かめて決めて選ぶこと。自分の嗅覚をたよりに、見つけるということ。



「脇山さんの湯呑みにひとめぼれしちゃった」
「あら、また吉川さんのオーバル皿を選んじゃった」



初恋やかつての恋人と会ったときのようにはにかむ姿や出会いの瞬間を、これからもお店でたくさん見届けていきたいなぁと思う。


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うつわと暮らしのお店「草々」

住所:〒630-0101 奈良県生駒市高山町7782-3
営業日:木・金・土 11:00-16:00

▼インスタグラム
https://www.instagram.com/sousou_nara/
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