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銀行員が本音で語る 第8回【融資編】

今回は融資について持論を書いていきます。

融資をセレクトしたのには理由があります。それは新型コロナによって企業の借入ニーズが一気に増えているからです。民間・政府系問わず、銀行も資金調達ニーズに対応するため必死に動いているのが現状です。

新型コロナの資金繰り支援策については、3月7日に記事を投稿しました。(記事の投稿以降、資金繰り支援策は拡充してます。現在の支援策を知りたい方は、経済産業省や中小企業庁のホームページをご覧ください)

本稿では「融資のマクロとミクロの効果」について考察し、持論を伝えていきます。借入を検討している人、経営者、若手銀行員、融資について知りたい方は参考にしてみてください。


信用創造

銀行には大きく3つの機能がある。

①預金
②決済
③融資

では銀行の最大の武器はなにか?
それは融資による信用創造だと考えている。

信用創造を簡潔に説明すると、「銀行が融資すると、世の中全体の預金が増える」ということだ。融資することによって、元手となる預金の何倍もの資金を供給することができる。

下記のホームページから具体例を引用する。

【例)X銀行に100億円の預金残高があった場合】
1. X銀行は1割(10億円)を銀行の金庫に保管して、残った90億円をA社に貸し出します。
2. A社は、借りた90億円をすぐには使わないので、X銀行のA社口座に預けます。
3. するとX銀行の預金額は、額面上 合計190億円(もともとあった100億円+A社からX社に預けられた90億円)ということになります。
4. X銀行は、A社から預けられた90億円のうち10億円を残して、80億円をB社に貸し出します。
5. B社も、借りた80億円をすぐには使わないので、X銀行のB社口座に預けます。
6. するとX銀行の預金額は、額面上 合計270億円(上記190億+B社からX社に預けられた80億円)になりました。

銀行が貸し出したお金は、A社90億円+B社80億円で170億円です。最初にあった100億円が、預金と貸し出しを繰り返すことによって、お金が何倍もの規模に広がることを「信用創造」といいます。

融資は「ちゃんと返済してくれる」という信用の上に成り立っている。そして融資が実行されると、世の中の資金量は増える。つまり貨幣が創造される。信用創造とは「信用が貨幣を創造する」ということだ。

マクロ的に見た時、この信用創造こそが融資の最大の効果である。


次項からは「企業から見た融資の効果」(ミクロ的効果)を中心に論考する。

資金繰り安定

企業にとって「守り」の効果を持つ。

経済を人体としてイメージしてほしい。
細胞組織=企業、血液=カネで考えると分かりやすいと思う。

血液の循環が良いと細胞も活性化して働いており、健康な状態なのはお分かり頂けるだろう。すなわちカネが上手く回っている時は消費活動も活発であり、企業の資金繰りも問題は無い。景気がいいと言われる状態だ。

経済面で見た新型コロナの脅威は消費行動の縮小、需要の蒸発である。カネという血液が経済という人体に回らなくなる。血液供給が止まった細胞組織=企業は死滅する(倒産)。これが現在進行形で起こっていることだ。

誤解されがちなのが倒産の定義だ。最近よく「人手不足倒産」という言葉を目にする。しかし人手不足が倒産の直接的原因になることはあり得ない。「業績が悪化して倒産」も半分間違っている。倒産とは支払いができない状態を指すからだ。損益ではなく、資金繰りで倒産するかが決まる。損益が黒字だろうと、資金繰りが悪化し支払いができなかったら倒産する。

銀行の融資は、人体では心臓の役割を果たしている。信用創造により貨幣という血液を作り、循環させる機能がある。新型コロナ対応融資は企業や個人事業主の資金繰り安定を目的としている。分かりやすく言うと、倒産防止のための融資である。

平常時には、このような融資はまず実行されない。何故ならば、支払い(費用)を収入(売上)で賄えてない状態だからだ。売上が急減しようと、企業は人件費や賃料などの固定費は支払い続けなくてはいけない。キャッシュアウトの方が大きい企業とは、言い換えれば赤字企業となる。通常、銀行が赤字の補填のために融資することは無い。融資の回収可能性が低いからだ。

しかし今は非常時だ。倒産すれば、その従業員も職を失い雇用が悪化する。雇用が悪化すれば、消費も悪化する。消費が悪化すれば、企業の業績と資金繰りは更に悪化する。まさに悪化のスパイラルだ。そのスパイラルを防止するために、銀行は保証協会と連携しつつ資金繰り安定のための融資を行っている。

資金繰り安定とは、借入により手元キャッシュを増やしておくことだ。いざという時の支払いを確保し、倒産リスクを減らす効果がある。

手元資金をどれくらい確保するかに正解は無いが、個人的には月商の3ヵ月分はキャッシュを持っておくことを推奨したい。

レバレッジ効果

企業にとって「攻め」の効果を持つ。

レバレッジとは「テコの原理」のことを指す。
FXでレバレッジを使ったことがある人もいるだろう。銀行融資では、不動産投資でよく使われる。レバレッジ効果について、具体例が掲載されているホームページを下記に引用する。

例えば、1000万円の自己資金があったとします。その1000万円で、年間80万円の家賃収益が見込める投資用不動産を購入したとすると、利回りは8%です。しかし、1000万円を頭金として、年間240万円の家賃収益が見込める3000万円の物件(借入れ2000万円)を購入したとしましょう。「見た目の利回り」は同じく8%ですが、収益は3倍に跳ね上がっています。これが、「レバレッジ効果」といわれるもので、より積極的な不動産投資の考え方です。

レバレッジ効果とは、自己資金以外に借入を併用することにより投資する金額を増やし、結果として投資収益を大きくするものだ。言い換えると銀行から借入を利用することで、自己資金の何倍もの大きな投資をすることが可能となる。

借入によるレバレッジを活用している代表的な企業の一つがソフトバンクGだ。米携帯事業者スプリントの買収、英半導体設計のアーム・ホールディングスの買収の際にも銀行から何兆円単位の借金をしている。

借金をテコに成長をめざすのが「レバレッジ経営」だ。

今まで不動産や企業買収などの「投資」におけるレバレッジを解説したが、これは「事業」にも当てはまる。中小企業の経営者にとって最大の投資先は、その事業だからだ。事業が拡大する可能性が高く、且つ利益が見込まれるならば、借入によるレバレッジ効果も検討に値する。

その場合、気を付けなければならないことは2点ある。

①事業が借入返済以上のキャッシュフローを生み出すのか?
②借入の金利負担以上の利益を出せるのか?

金利と返済がある以上、借入にはリスクを伴う。
リスクとリターンをしっかりと検討することが大切だ。

期限の利益

企業にとって銀行から「融資をすぐに返済しろ」と言われない効果を持つ。

期限の利益とは、約束した返済日までにお金を返済すればいいという権利のことだ。内容については分かりやすいホームページから引用する。

期限の利益とは、お金の返済は期日までにすれば良い、という債務者と債権者(銀行や貸金業者など)との約束事。そもそも返済日を決めるのは、債権者から「明日全額返して!」と突然言われても困るからです。いつまでに返せば良いのか、返済日をあらかじめ決めることにより、債務者は返済の目処を立てることができます。そして、「返済日に返す」ということは、それまでは返さなくていいということ。その「返さなくてもいい」ということを「利益」と表現されています。

銀行から借入を行う際は、金銭消費貸借契約書という契約を締結する。この契約書に金額・期間・金利・返済方法・返済日・返済金額などが記載されている。そして契約して融資が実行された後、余程のことが無い限り、銀行は「すぐに全額返済して」とは言えない。

「余程のこと」が「期限の利益喪失事由」と呼ばれ、具体的には下記となる。

民法上では
①破産手続開始の決定を受けたとき
②担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
③担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき

銀行契約上では
①約束の期日までに返済しなかった場合
②財務状況で重大な虚偽があった場合
③契約する時に虚偽の申告をした場合
④担保物件で競売手続きが開始した場合 など

伝えたいことは、業績が悪化しようと期限の利益喪失事由に該当しなければ、銀行は無理やり回収できないということ。いわゆる「貸し剥がし」はできないことだ。

借入期間が長期になるほど、期限の利益は効果が高まる。

借入を短期で調達するか、長期で調達するかにも正解は無い。しかし期限の利益を享受するためには、借入の一部でいいので、なるべく長い期間の融資を借りておいた方がいい。

まとめ

銀行最大の武器は、融資による信用創造だ。
世の中のカネを増やすことができるのが融資である。

企業にとっての融資の効果は主に3つ。

1.倒産という最悪の事態を回避する資金繰り安定
 (守りの借入)
2.借入をテコにして成長を目指すレバレッジ効果
 (攻めの借入)
3.借入の期間を確保できる期限の利益
 (借入の時間)

本稿で融資の知識を深められ、銀行との良好な取引の一助になれば幸いだ。


【あとがき】
このシリーズも8回目です。今回は銀行の中核事業である融資について書いてみました。このシリーズの記事作成には凄く時間がかかります(笑) 色々と勉強し直すことも多いので、自分のためにもなってますが。

新型コロナによって、資金繰り安定のための借入需要は急激に上がってます。政府や都道府県なども資金繰り安定政策を打ち出してるので、経営者の方々は活用をご検討ください。まさに非常事態ですが、明けない夜はありません。そう思いながら、自分にできることをやるだけです。


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1982年生まれ。銀行の法人営業担当者です。銀行・金融・人生のアップデートを中心に発信していきます。連絡先:siguresui@gmail.com またNewsPicksというSNSでも毎日コメントしております。https://newspicks.com/user/1870561

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コメント (2)
信用創造はMMTを勉強した時に概念を知ったのですが、驚きました。
融資と銀行への理解が180度変わりました。
岩切さん
役に立てたなら嬉しいです!
多分、銀行員でもちゃんと理解できてる人は多くないと思いますよー。
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