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早慶戦で観た「帰ってくる場所」の存在

僕にとって初めての早慶戦は大学1年生の春。

スタンドの応援席で観戦していましたが、地鳴りのするような歓声を自分の野球人生で初めて聞きました。

神宮球場で観戦されたことがある方、そして今年の夏の甲子園を観られた方ならわかると思いますが、塾員(慶應では卒業生を塾員と呼びます)も総立ちで肩を組み、「若き血」を歌い、塾を全力で応援します。

東京六大学野球の文化として、学校を挙げての応援合戦はありますが、早慶戦は別格の雰囲気を創り出しています。

特に慶大は月曜日まで試合がもつれ込む(先に2勝した大学が勝利となるため、土日で決着が着かない場合は決着がつくまで試合をし続ける)と授業自体が休講となります。

それだけ野球の早慶戦というものは、学校を挙げての大イベントだということです。

学生野球が全盛期の時代には、立ち見が存在するほどの盛り上がりを見せ、現在は約3万人の観衆が神宮球場に詰めかけます。

大学野球でこれだけの人数が集まる試合はありません。全国大会の決勝戦でもこんなに人は集まらないです。

僕は関西学院高等部の出身なので、関西学院大学 VS 関西大学の戦い、関関戦を観戦したことがあるのですが、甲子園球場の内野席が少し埋まる程度でした。

そのあたりが高校野球との違いとしてありますね。
僕自身、大学野球は選手のレベルも高いですし、学生らしい泥臭さも観れるので、もっとたくさんの人に観てほしいとは思いますが…

そもそも大学野球を観に来ている人は大学の学生や卒業生、一定数の大学野球ファンがいるのかなといった印象です。

そんな中、伝統の早慶戦はテレビでも放映されるイベントとなっています。

早慶戦を観たことをきっかけに、早慶への進学を希望する方も多いかと思います。大学で神宮の舞台で活躍するために、中学や高校から入学を希望する方もいらっしゃいます。おそらく僕自身も入学前に現地で観ていたら、相当な憧れを持っていたでしょう。

実際に初めて体験した大学1年生の春には、いつか自分自身もこの大舞台でプレーをしたい。
そんな想いを巡らせていました。

グラウンドで体感する早慶戦は、相当なプレッシャーがありました。
早稲田の応援の圧、威圧感は凄まじいもので、試合中に鳥肌がめちゃくちゃ立ちました。

それに加えて、早稲田の強さが倍増するんですよね。
事前に戦略分析やミーティングも重ねるのですが、確実にそれ以上の力を出してきます。

それが早慶戦です。

学生時代には、負けたくない、という一心で早慶戦に臨んでいましたし、早稲田に勝てば優勝という展開での敗戦も経験したので、どちらかというと悔しい想い出の方が多くあります。

ただ、社会人になった今は、早慶戦という場がひとつの「帰ってくる場所」になりました。

後輩たちに頑張ってほしい、慶應に勝ってほしいという想いだけでなく、誰と一緒に観に行こうかだったり、今日は誰と会えるかなといった想いも巡らせることができます。

一緒に戦ってきた仲間とまた肩を組んで、母校を応援できることは人生の喜びとなっています。

また学年が被っていた方々だけでなく、初めてお会いする塾員の方々とも分け隔てなく肩を組んで応援することもあります。

野球が好きかどうかは関係なく、母校を純粋に高い熱量で応援しています。

学生時代には感じ取ることのできなかった早慶戦の姿がそこにはありました。

卒業生は総じて、慶應義塾のことが好きで、他の学校とは比べられないくらいの愛校心があります。

社会人になった今、仕事やプライベートの中でもそれを感じており、各地方で三田会が開催され、同じ価値観や環境で過ごしてきた方との交流は日々の生活をより充実したものにしてくれています。

これだけの母校愛を創り出す学校は、日本にはないと思います。

今年の甲子園では、それが相手校へ与えるひとつのプレッシャーとなりました。
僕自身は大学の4年間、塾にお世話になりましたが、直接的な母校ではない慶應義塾高校の応援にも積極的に参加しました。

他の大学において、付属の高校が全国の舞台に立った時に、どれだけの人が応援に行くのでしょうか。

これだけの組織を創り上げている文化、そのものに凄みを感じます。

卒業生にとって「帰りたい場所」がそこにはあります。

早慶戦は、現役世代にとっては「戦う場所」となり、卒業生にとっては青春を思い出す、そして新たな希望に胸を躍らせる「帰ってくる場所」になっています。

こんな場所を創り出してくれたご縁や環境に、ぼくは感謝したいです。

また1年後、新しい自分で帰ってこれるよう、頑張りたいなと思います。


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