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rakugo1000 (220) : 神田伯山「グレーゾーン」

いつもここでは、落語、とくに新作落語・創作落語をメインに1日1席とりあげて、「落語にはこんな噺があるよ」「江戸の風が吹かない、いまの私たちの生活に近い噺があるよ」というのを紹介しているのです。
新作・創作落語を主体にしていることもあり、オチ(サゲ)まで書いてしまうと楽しみを奪ったりしてしまうので、すごく曖昧なことを書いて、日々、自分自身悶々としたりするのですがw 

今日はもうたぶん二度と聴くことのできない新作講談の1席をとりあげます。いまだこの噺を聴いた感動が抜けず、冷静に書けてる気がしないのだけどw

概要
中学からの親友、吉田誠と柿本力。ふたりはしょっちゅうつるんでいる仲だった。高校生にあがってから毎日柿本は「誠さん、プロレスの話してよぅ」と吉田にプロレスの話をせがんでいて。柿本の知らないプロレスラーの連戦記録などのエピソードをはなし、常に吉田は得意げにしている。
日々、プロレスの話ばかりデカイ声でしている二人を、意地悪な同級生が茶化してきたりもする。けれど、それも論破する吉田。すべてのイチャモンをけちらせるくらい、それくらい彼の知識はすごかった。
ところがある日、学級委員長が、「プロレスは八百長だ」と言い出す。
これに真っ向反論する吉田だが、委員長もひるまない。翌年プロレスの伝説のレフリーによる暴露本が出て大いに失望する吉田…。
そして吉田は、柿本に「俺はガチンコで勝負がしたいから落語家になる」と突如宣言。あまりの展開にびっくりする柿本。「相撲の世界だって八百長だらけ。でもそこで八百長せず名を残した横綱大乃国みたいな人もいる!おれは大乃国になる!」と高らかに言い、瀧川鯉昇に入門。瀧川鮒八と命名される。
新作落語の世界で唯一無二の作品を書き続け、鮒八はのしあがっていくのだが…。

今日聴いた噺
20/02/17 新宿末廣亭二月中席夜の部「神田伯山真打昇進・襲名披露興行」
桂鷹治 ちりとてちん
桂小すみ
瀧川鯉八 おちよさん
柳亭小痴楽 一目上がり
コント青年団
神田鯉栄 狼退治
三遊亭萬橘 代書屋
東京ボーイズ
春風亭柳橋 長屋の花見
春風亭昇太 看板の一
真打昇進・襲名披露口上
高田文夫・松村邦洋
神田松鯉 屏風の蘇生
ボンボンブラザーズ
神田伯山 グレーゾーン

プチメモ
まさか来れると思ってなかった伯山さんの末廣亭での興行。
昇太さんと鯉八さんが出る日を狙って、ちょっと頑張って整理券とりに行ったら立ち見かもな枠だったけど、入手でき。結果4時間立ち見ではあったけれども、最高の会でした✨
本当に歴史に残る会だったかもしれない。

番頭の鷹治さんも、鯉八さんも小痴楽さんもテンション高くいい高座。姉弟子の鯉栄さん、ゲストで萬橘さん、そして芸協副会長柳橋、会長昇太コンビという素敵な並び。

口上の司会が小痴楽さんというのも、ぐっときたポイント。つい数ヶ月前に先に真打にあがったばかりの小痴楽さんに司会を依頼するというのが素敵だなーと。成金愛を感じてね。
口上の昇太さんよかったなぁ。いいこと言ったなぁ…。じーんときちゃった。

ずっと伯山TVで松鯉先生のすばらしい人柄に、うっとりしていたこともあって、松鯉先生の高座も楽しみでした。
いまの若手が真打昇進のときにこぞってヒザ(トリの直前)に出てもらいたがるボンボンブラザーズさんにもニンマリして、そしてトリはとうとう伯山先生。
盟友、鯉八さんが主役の、4年間も封印してた新作「グレーゾーン」❣️ 「この興行で新作やるつもりはなかったんだけど」、といいながら、そしていつも今回の興行では脇で聴いてくれている松鯉先生にはお願いして喫茶店に行ってもらってる、って言ってたw
これを鯉八さんが出演したこの日にかけてくれたのは、春に真打昇進する鯉八さんへの餞なんだろうなぁ。鯉八さんへのレスペクトが感じられて、うるうるしちゃったよ💧伯山先生は、新作講談がお客さんを振り向かせる手段として有効だと思って、いくつもいい作品を作っていたのだけど、共に「成金」というユニットで活動した鯉八さんという1年上の先輩の才能を目の前にして、新作を書くのをやめた、と読んだことがある。

「グレーゾーン」はもう成仏、と伯山先生は今日のtwitterに書いているので、聴けることもない気がするけれど、以前に鯉八さんが語っているyoutubeがあるので貼っておく。

愛に溢れた7日目。観れて本当よかった😆
きっと末廣亭での10日、そして披露目40日終わったときに、「今日が一番よかった」と個人的満足できそうな、そんな日でした。

追記:
さきほど伯山ティービーにこの日の模様が掲載されて。本当に鯉八さんの感無量な表情が素敵すぎたので、こちらも掲載。


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