見出し画像

マネジメントにおける「勘定」と「感情」

アフターコロナに対応することで未来が早まっています。リモートワークが定着しつつあるのもその一つです。関連して、人事評価のあり様も変わるという議論があります。いよいよ年功序列的な評価を脱して、成果で見ていきましょうという話です。どちらかと言えば「リモートなのでプロセスを見ようがないから成果で判断するしかないよね」というニュアンスのようにも感じます。

そもそも人事評価って機能してました?

ただ、リモートであるなしに関わらず、今までもプロセスを見ていたかどうかなんて怪しいわけです。見なくても大体こんな感じだろうと評価していませんかね…? おそらく30年位前までは、それでも良かったんだと思います。評価者が仕事で積み上げてきた経験値がものさしになったからです。それに、社会全体として成長しているので、頑張ればなんとかなると思えていました。あえて極端に言えば、評価とフィードバックがあろうがなかろうが、関係なかったのです。ところが、そういう時代ではなくなった、変化が速い、VUCAだ…と言われています。にもかかわらず、評価のやり方、もっと言えば仕事のやり方は変わってなかった。制度は変わってたけど、実態は違った。アフターコロナを迎えようとする中で、ようやく切実なものとして評価の在り方に目が向けられたということだと思います。

理想と現実のギャップがつくる創造的な感情

先日、目標管理制度の改善をお手伝いしているお客様のところで、運用の状況について、管理職のみなさんと振返りのセッションを行いました。皆さんの声としては、目標のさじ加減が難しい、簡単な目標で済ませようとする、目標を立てるけど、もはや状況が変わってしまっている、そもそも目標を立てる意味がない仕事もある…などなどでした。多かれ少なかれこういう声は、どの会社でも出てきます。そして、制度の良し悪しの議論になりがちです。わたしからは、「経験上、制度をいくら変えても同じで、結局は、運用が成功のカギです」と伝えるわけなんですが、どう伝えようかと考えているときに、ふと「みなさんが困っているのは感情のマネジメントなのではないでしょうか」と問いを発しました。

目指すところやビジョンがあることで、ある種の緊張状態が生まれます。理想と現実との間にギャップがあり、これが引っ張り合っているのですね。そして、理想の方に引っ張られるとわたし達は創造的な仕事をします。これをクリエイティブテンション(創造的緊張)と言います。一方、理想と現実の間のギャップがストレスになることもあります。これを解消するために、目標を簡単な目標に変えることがあります。理想が現実に引っ張られたのですね。このときの緊張状態をエモーショナルテンション(感情的緊張)と言います。理想と現実の間にあるテンションをいかにクリエイティブにするか、そこにある見えない感情をマネジメントすることが大切なのです。

人を動かすのは「勘定」ではなく「感情」だ

組織は人間によって成り立っています。その人間が成果を出します。その時の評価基準は、利益だったり、生産性だったりします。したがって、お金やモノの流れを見ていくことが必要です。このときに見落としてしまうものがある、それが「感情」です。わたし達は、金やモノの「勘定」ではなく、「感情」で動きます。だからこそ、会社の目的やその志を語りあったり、どうやったらお客さんに喜んでもらえる商品・サービスを作ることができるか話し合うことが大切なのです。手法としては様々あります。OKR、それにもとづく1on1、ノーレーティング、ピアボーナス、などなど。どれも今の時代の変化の速さにあった良い制度だと思います。でも、わたし達が職場の「感情」に目を向けられないようであれば形骸化します。

セッションの中であるマネジャーが「目標のその先まで見ているかですよね。つまり、それで誰が喜ぶのか、誰のためなのか。じゃないとつまんないよねって、みんなが思えるようにしないとね」と発言しました。それを聞いて、参加者のみなさんがしみじみと同意していた姿が印象的でした。彼ら自身が、自分たちの感情に目を向けることのできた瞬間だったのではないかと思います。

こういう場面に立ち会えることがわたしの仕事の喜びです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?