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コロナの時代に、心理的安全性やパフォーマンスの高いチームづくりを考える

2017年頃から不景気を意識して組織づくりをやってきたが、コロナがいきなり来たのは多くの人と同じように想定外だった。

こうした景況感のなかでは、組織開発はスパンの長い話になるので後回しにされがちだ。

コロナのような大きな変化は、組織の無駄を削ぎ、シビアな面にフォーカスしたり、拡大解釈されていた部分の誤解を解くことで、生存するためにより環境に合理的に適した存在となるチャンスと捉えることもできる。適していなければ死ぬのだから、やれるならやったほうが良いだろう。

共通した不安や危機感は、合理的な組織になるためにチーム全体が協力するきっかけにもなる。パフォーマンスの高い組織づくりに取り組んできた皆さんと改めて心理的安全性をパフォーマンスにどうやって活かすのかを一歩踏み込み、より良い組織をつくるきっかけとしていけたら嬉しい。


1. 心理的安全性とパフォーマンス関係のおさらい

心理的安全性や組織開発に対して感度の高い人には蛇足かもしれないがおさらいをしておきたい。

心理的安全性とは「なにかリスクのある行動をとっても、それによって害を受けないとチームで信じられている考え」のこと。仲が良く、冗談を言い合える「空気が良い」関係性を指すわけではない。より良いOutcomeのために、経営者の意見や歴史ある慣習などに対して否定する意見を言っても害を受けない「空気を読まなくて良い」関係性のことを心理的安全性と言う。

心理的安全性が重要である理由は「変化・挑戦の結果から学習し、パフォーマンスを高める」ためである。心理的安全性が高いメンバーは、望んで変化・挑戦し、学習に活かす。優しい組織が心理的安全性のある組織ではない、心理的安全性とはパフォーマンスを出すための手段である。

また、パフォーマンスの高い組織についてはGoogleによる以下の図が有名だが、改めてじっくり見てみよう。心理的安全性だけではパフォーマンスの高い組織は出来ないことがわかる。

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Google Re:Work

上ほど重要で、心理的安全性がパフォーマンスに大事なのは間違いない。だが2番目以降に対しては言及している記事は少なかったので、あまり注目されてこなかったのではないだろうか。

2番目に重要なのは相互信頼となっている。この信頼とは仲が良いというわけでない。チームのパートナーは役割として果たすべき仕事を「期日内に高いクオリティで仕上げる」と信じられる実感である。

3番目に重要なのは構造と明確さ。誰が何を担うのか役割が明確であり、どんなアクションをとることで目標を達成するかの道筋が明確であることである。「みんなで頑張って目標を達成する」なんてものは戦略ではない。明確な役割分担と順序、具体的なアクション計画が必要となる。


この項目のまとめ

パフォーマンスの高い組織にするためには、①心理的安全性を保ちながら、②果たすべき役割を期日内に高いクオリティでこなさないメンバーには厳しく要求しなければならないし、③リーダーは明瞭な役割や計画、目標を示さなくてはならない。


2. 学習する組織のおさらい

学習する組織と心理的安全性の関係では以下の図が良く引用される。心理的安全性と説明責任(Accountability)がともに高い場合に、学習ゾーンになると説明されている。

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Amy C. Edmondson「チームが機能するとはどういうことか」より


説明責任(Accountability)はピンとこない部分もあるので、石井氏の言う「仕事の基準の高さ」がイメージしやすいかもしれない。

納期を守らなかったり、品質が低い場合でも「まあいいや」と流す組織は学習とパフォーマンスに繋がらない。目標やアクションのコミットメントを高い基準で厳密に求めることが学習する組織には重要となる。

つまり「当たり前のレベルが高い」という言葉が、Accountabilityのレベルが高いということを表しているかもしれない。だが、この言葉の問題点は「当たり前のレベル」という言葉の解釈が人によって異なることだ。

どのくらいのクオリティがチームの中で「当たり前」なのかをリーダーは言語化し、非一致性を発見していくことが重要だろう。

そのためにValueやAction Agendaを用いたり、ダイアログでディスコース形成をしたり、評価やフィードバックを活用して、基準を揃えていくと良いだろう。


3. 心理的安全性のマイナス面やリスク

心理的安全性さえ作れば、全てうまくいくのか?

答えはNOである。

チームに心理的安全性があっても、うまく機能しなかったり、悪影響が生じることもEdmondson(1999)によって指摘されている。​

面白法人カヤックの柴田さんの記事「心理的安全性のために取り除くべきは、「自分が変化することに対する不安」であり「組織内で"自分の生存"が危ぶまれる危機感」は維持したほうがよい」によくまとまっているのでいくつか引用させて頂く。

1. 心理的安全性があっても、メンバー学習が促進されない要因が存在する

・チーム目標に説得力がない
・個人の学習に対するニーズが低い
・個人の基本的な思考力が低い
・個人の努力が少ない

2. 過度な心理的安全性は、有害になる

カジュアルな会話に過剰な時間が消化され、リソースが奪われる

3. 心理的安全性が、組織内の緊張感を高めてしまう

心理的安全性の高いメンバーの振る舞いが、心理的安全性の低い人からは傲慢さや自己満足に見えてしまう

4. 心理的安全性によって、人間関係を悪化する

率直な意見の対立によって、根本的に意見が異なる人間とは合意できない

採用、オンボーディング、組織開発、経営者や事業責任者との協力などを通じて、こうした問題にも並行して対処していかなくてはならない。


4. パフォーマンスの高い組織をつくるために

この状況であるからこそ、踏み込んでチャレンジを阻害する要因を排除しつつ、リーダーや組織が役割や計画、ゴールを明瞭に示す必要がある。

また、相互に信頼関係を構築できるように、信頼とは何かを共通認識として社内に浸透させ、損なう人には改善を求めていかなくてはならない。

ここまでの記事では信頼は「仕事の基準の高さ(品質)」「納期までに完了させる」ことによって作られると説明した。

社会学の領域では、信頼は「相手の能力に対する確信(効率性・正確性)」と「相手の意図に対する確信(公正さ・正直さ・好意)」という2つの意味が存在するとされている(Andaleeb, 1992;山岸,1998;久保田,2003)。概ね今回の主張と同様のことを言ってると理解していいのではないか。


この項目のまとめ

リーダーに求められている役割は、明確な役割の合意、明瞭で具体的なロードマップ(Aをやり、次にBをやり、いつまでにCに至るといったような)とゴール(振り返るためのメトリクス)を示すこと。そして、チームにおいて基準となる「仕事の水準」を定め、チームの合意を形成すること。

リーダーでなくても良いが、その基準が果たされているのかチーム内で蔑ろにされてないかを明らかにすること。基準が守られていなければ改善を求めていくこと。


5. 全体のまとめ

パフォーマンスの高い組織を作るためには、心理的安全性(空気を読まなくて良い状況)を維持しながら、こうした取り組みを実現していかなくてはならない。

リーダー・メンバーともに要求される水準が高くなるなかで、心理的安全性も同時に担保し続けるというのはハードルが高い(殺伐としがち)。

だからこそ、要求には「公正さ」が必要となる。役職や年齢ではなく、データや言説の正当性で物事が決まることが重要である。また、リスクをとって道を切り開く人を後押しすることが心理的安全性を作る。言うのは簡単だが、根付かせるのは骨が折れるだろう。

組織デザインで第一に覚えておくべきルールは、「全ての組織デザインは悪い」ことだという。もしかしたらコロナの変化は「悪さ」がはっきり見えるだけに、ある意味HRにとっては力の見せどころかもしれない。

組織開発はゴールが無く、難易度が高いテーマだからこそ面白い。個人的に尊敬している八木洋介氏の「人で勝つ」を実感できる組織を実現するために苦闘を愛して、足掻き続けていこうと考えている。

この記事が、同じ様に足掻いている同士を少しでも勇気づけたり、気づきのきっかけになれれば幸いです。この変化の先には素晴らしいチームが出来上がっているはずだと信じて模索していきましょう。



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