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ガイナーレ鳥取アンソロジーVolume5(森岡・須藤10SPIRITS時代)

2017年にとっとと行こう。この頃から、ガイナーレは大きく方向転換をしたと思うので。
例の如く、登場する人名は敬称略なので、悪しからず。

2017年

たぶん、だけど、闘将さんはいろんな意味でガイナーレ鳥取向きの監督ではなかったと思う。
確かに超有名人だったが、単にそれだけでしかなかった。サポーター受けもすこぶる付きで悪いような印象しかなかった。

その点、闘将さんの後を引き継いだ森岡隆三は、熱意だけなら非常に大きくあった。

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何しろこの人は、理論家肌。ガイナーレ鳥取の公式Facebookページをこの頃に覗いたことのある人なら、何となく覚えているだろうが、森岡による戦術解説みたいな文章が、これでもかとばかりに書かれていた。
そこまで手の内を明かしても良いのか、と思いたくなるぐらい、あけすけに戦術論や戦術の内容、ヒント、キープレーなどについて記していた印象がある。
森岡としては、ファン・サポーターに「自分がやりたいサッカーはこういうものですよ」と理解してもらいたかったが故に、ああしたディープでコアな記述になったのだと思う。だが、一方で手の内をオープンにしすぎたんじゃないか、という気もした。
あと、チームが抱える経済的な体力事情もある。選手がいくら集まっても、その選手がベストのコンディションでプレーできかねる環境しか用意できない貧弱と言えるチーム環境が森岡を苦しめた。
2017年シーズンは最下位に終わった。しかもその上に、2015年のレノファ山口、2016年の大分トリニータに続き、この2017年もブラウブリッツ秋田に最終節で対戦し、目前で優勝を決められるという屈辱を味わった。
だが、屈辱とは言うが、自分らもいつかは必ず同じような状態になれば良いのであって、確かに悔しいが、その光景は焼き付けておいて決して損はないと思った。
それに、森岡だって、何もオープンリーチ状態で毎試合毎試合やりたいわけでもなかっただろうし、彼なりのファンサービスのつもりだったのだろうから、そのことをとやかく言っても仕方がない。
前年まで在籍していたフェルナンジーニョのような、「潰しの利く」選手が不在だったことも大きかったのではないか。彼の存在は殊の外大きかった。それをまざまざと痛感させられた。
このように、いろいろなことが噛み合わなかった感じのするシーズンだったが、一旦落ちるところまで落ちたら、あとは上がるだけだと思えば気も楽だった。

闘将さんのイメージがあまりにも悪すぎたので、森岡のイメージはそこまで悪くなかった。彼は懸命にやっていた。

チームのスローガンは、この年からしばらく(3シーズンの間)10SPIRITSのまま固定された。試合の前に読み上げられるあれだ。チームスローガンにするぐらい大切にしたい物事だというのはよくわかる。

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さて、明るい話もしていきたい。チュウブYAJINスタジアムで試合がある時などは、この写真のように米子市のコミュニティFM局のDARAZ-FMのブースが設けられることがある。
この局で「RADIO GS」というガイナーレサポーターのガイナーレサポーターによるガイナーレサポーターのための番組が毎週オンエアされている(初回は金曜日のAM7:30~、再放送が同じ週の土曜日AM8:30~と同日PM7:30~だそうだ)が、その番組の特設ブースが設営されることがあり、たまに試合前に生放送したりする。
時々特番とかにTwitterで参加したり、こういうブースの様子を覗くことがあるが、楽しそうにしていて、ちょっと羨ましい。

あと、そう言えば、こういうひどい目にも遭ったことがある。

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この年にチュウブYAJINスタジアムで行われたガンバ大阪U-23戦は、台風の最中に行われて、風雨がメチャメチャひどかった。
自分は、それでなくても病気の影響などでメチャクチャ痩せたので、寒さが非常に堪えた。恰幅が良かった頃は、こんな寒さにも耐えられたのに。たぶんガイナーレの試合を見始めてから初めてのことだったと思うが、試合を中座して、ハーフタイムにやってきたシャトルバスに乗り込んで、さっさと米子港に帰ってしまった。

自分のブログですらこの有様だ。

こんな天候でも中止にならない限りは試合をする。両チーム共に大変だったと思う。

自分としては、試合前に食いに行ったCoCo壱番屋のカレーがとても美味かった、としか言い様がない。

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最下位のシーズンでも、ゴール裏の熱量は高かった。

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こんなサインが出た時は大盛り上がりしたしね。ただ、何しろ勝てなかったことには違いない。最終節の試合終了後、大いに盛り上がるブラウブリッツ秋田の選手たちやサポーターたちを後目に、リベンジを果たしたいと誓うガイナーレ鳥取側の選手たちやサポーターたちであった。

2018年

森岡は留任し、選手が若干入れ替わった。何より、フェルナンジーニョが帰ってきた。彼と一緒にブラジルのサントスからヴィートルガブリエルとレオナルドという二人の若い選手がやってきた。このうちのレオナルドについては後ほどスペースを取ってお話しするとしよう。

でも、個人的にはこの二人の加入が嬉しかった。

まず一人目がこちら。松本翔(現・高知ユナイテッド)だ。

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この松本翔は、プレー以上(試合の出場機会は多くなかった。でも個人的には、選手としても大いに期待していた)にインフルエンサーとして大きくブレイクした。彼はアスリートフードマイスターという肩書きも持つが、この肩書きが伊達ではないことを披露した。
特にダメを押したのはこれだろう。もうひとつのルヴァンカップに参加したこの動画である。

これで、なんと第2位を取ってしまった。ガイナーレに来てからの松本は発信度合が以前より高まってはいた。だが、このもうひとつのルヴァンカップ効果は絶大だった。

自分にこんな記事を書かせてしまうほど、この人のインフルエンサーとしての無双ぶりは留まるところを知らなかった。

残念ながら2018年シーズン限りでガイナーレ鳥取の選手としての松本翔を二度と見ることはできなくなったが、その後に移籍した高知ユナイテッドに於いても、インフルエンサーぶりを遺憾なく発揮し、高知ユナイテッドのJFL参入を選手としてもインフルエンサーとしても支え、またアスリートフードマイスターとしても寮母さんとのタッグでこれも支えるなど、八面六臂の大活躍だ。
できれば鳥取でこういう意識改革をしてほしいとも思ったが、今の松本翔は高知でこそ生きるのだと思う。これからも高知のためにたくさん活躍してほしい。

一方、もう一人が可児壮隆。

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この翌年に来る福村貴幸もそうなのだが、自分としてはちょっと特別な印象のある選手で、元々は川崎フロンターレにいた。しかし、川崎では定着しきれず、湘南ベルマーレを皮切りに、複数のチームをローン移籍で渡り歩き、FC今治に行った時に、ガイナーレに来たら良いのに、と密かに思っていたのだが、よもや本当に移籍してくるとは思わなかった。しかも、ローン移籍ではなく、完全移籍でやってきた。
鳥取というチームは、移籍でやってきても、山陰地方にあるが故に利便性が良くなく、来るには相当な覚悟がいる土地だと思う。特に若い連中はいろいろと大変だろう。
その中で可児のような選手が来た。実力者である上に、多くのチームを渡り歩き、それぞれのチーム事情も含んで動くことが可能な選手だ。
今、彼は名実ともにガイナーレ鳥取の顔役になっているといっても過言ではない。今季も大いに期待したい。

さて、このシーズン、実は6月頭のブラウブリッツ秋田戦後に監督が交代している。

ブラウブリッツ秋田戦の二週間前に、とりスタでカターレ富山戦があり、2-3で惜敗しているのだが、この試合後に、どんなやりとりがあったのかは知らない。自分はこの試合を観に行っていない(ついでに言うと、二週間後のブラウブリッツ秋田戦も未観戦だ)。だから知る由もない。
ただ、動画を見てもわかるように、森岡と思しき人物が感情を露わにしている様子が窺える。この時、何かがあったらしいとは聞いているが、伝聞でしか聞いてないので、詳細は差し控えたい。

この出来事があって、翌週の天皇杯はJFLのヴェルスパ大分との対戦だった。

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90分では決着がつかず・・・

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120分でもダメで・・・

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こういう特殊な方式のPK戦に突入し・・・

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このスコアで辛くも逃げ切った。

この天皇杯と、リーグ戦の秋田戦とで、立ち直るきっかけはできたはず・・・だった。

だったが、6月4日に、森岡は監督の座を去らなければならなかった。だが、シーズン中で後任を立てる時間的余裕がない。しかし、後任を立てないといけない。

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で、クラブが白羽の矢を立てたのはこの人だった。須藤大輔。彼も彼でJリーグでの監督経験を有さない人物ではあったが、形振り構ってなどいられず、彼に三顧の礼を尽くした・・・かどうかは知らないが、ともかく頼んだ。

森岡では成績が上向かない、と判断したのでこうなったのだろう。もちろん須藤でも成績が良くなるとは限らなかったが、何も手を打たないよりはいいと考えたのだろう。そりゃあ、何もしないよりはした方が良い、と考えたくもなろう。当然だ。

で、この監督交代ギャンブルは、結論から言えば、ある程度は成功した。理由はいくつかある。
復帰したフェルナンジーニョが無双に近い働きを見せたことが、まず一つ挙げられよう。
守備陣もいざというところで踏ん張りを見せ、たくさん点を取られても、取り返すという攻めがあり、これで大崩れしなかったこと。

そして・・・

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この選手の存在がひときわデカかった。レオナルド(現・浦和レッズ)だ。彼は若い選手で、実際、少なくとも加入当初は若いだけの選手だと思っていた。しかし、シーズンが始まってみると、彼はコンスタントに得点を重ねていく。
気がつくと、シーズン24得点というハイペースで得点を重ね、遂にリーグ得点王にすらなってしまった。

ボールタッチが柔軟だし、ゴールを狙う力が長けている。あと、とてもクレバーに思える。
精神的には「鳥取は3部でカネがない」と獲得に行ったGMの岡野雅行に言われた時も「ボールさえあればいい。平和な日本でサッカーがしたい」と言ったそうで、若さに似合わぬ思慮深さもあるように思える。

レオナルド自身について言えば、このシーズンが終了したあと、翌年頭にアルビレックス新潟に移籍し、ここでもJ2リーグの得点王を獲得するなど、無双の活躍ぶりを見せる。そして、2020年シーズンはいよいよJ1に上り詰め、浦和レッズに籍を置くことになった。

残念ながらチームはあと一歩のところまで迫ったものの、3位でフィニッシュし、久々のJ2復帰はならなかった。
躍進を背後から支えた須藤監督はしかし、最終節後に、家庭の事情とかでチームを離れることを明らかにしてしまっている。家庭都合では致し方ないとしか言えない。
とはいえ、監督交代という衝撃も乗り越えた上でのこの成績だから、そこまで悪い話でもない。おまけにチームからリーグ得点王を輩出したのだから、喜ばしいことこの上ない。

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ガイナマンも大喜びだ。J2への復帰はならなかったが、総じてハッピーなフィーリングに包まれたシーズン、と言えると思う。

とりあえず、森岡・須藤時代まで何とか書いた。あと残すのは、髙木時代だ。オールガイナーレ時代である。

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