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意外かもしれない三つのちょっと好きな曲

私の趣味から大きく逸脱してるように見える、でも好きな三つの曲を紹介してみる。

ラッキーチャンスを逃がさないで:キャンディーズ

作詞:竜真知子
作曲:宮本光雄
編曲:渡辺茂樹

これは、その昔とても有名だった朝日放送系の「プロポーズ大作戦」というバラエティ番組の主題歌だった。
それを当時のトップアイドルグループだったキャンディーズがやっている。番組はキャンディーズが解散したあとも続いたが、構わず最終回まで起用され続けた。

キャンディーズにはご存知のようにラン(伊藤蘭)、スー(田中好子)、ミキ(藤村美樹)がいるわけだが、彼女たちは本当に何でもやった。
同じナベプロの先輩であるザ・ピーナッツの比ではなく、本当に何でもやった印象がある。例えば、ドリフターズの番組に出てきてコントをやったり、テレビ朝日系の「見ごろ、食べごろ、笑いごろ」でもアイドルグループとは思えないほどハジケまくっていた。

しかし、彼女らは「微笑がえし」という超有名曲でグループに事実上のケリをつけた。ラストの後楽園球場でのコンサートでランが吐いた「普通の女の子に戻りたい」の言葉は流行語にさえなった。
まあ実際には、彼女らがキャンディーズ解散後に普通の女の子に戻ることはなく、彼女らは彼女らなりに芸能の世界にいたり、そうでない世界にいたりした。

それはともかく、この曲について言う。

数あるヒット曲を差し置いて、別にシングルカットされたわけではないし、ただテレビ番組の主題歌になった、というだけの曲にスポットを当てたのは何故なのか。
実際のところ、「春一番」というアルバムにのみ収録されただけの三分足らずの曲なのだが、如何にもキャンディーズらしく元気や活気に満ち満ちた曲だと思う。
渡辺茂樹によるアレンジがそうさせている部分があるのだろうが、とにかく元気いっぱいでグループの個性にも合致していた。

キャンディーズには「年下の男の子」という大ヒット曲があるのだけど、これに近い路線だと思う。

この曲に見られるような、はち切れんばかりの元気さが、キャンディーズの存在感の源泉だったと思っている。
今の世代にもアイドルグループは多いが、その基礎を作った人たちだろうと思うし、そういう意味で、もっとリスペクトを受けるべきだと思う。
その作品にしても、テレビや映画への出演内容にしても、だ。1970年代を疾風怒濤のように駆け抜けて去っていったスーパーアイドルグループ、それがこのキャンディーズだった。

この曲はそんなキャンディーズの中で、さほど有名なわけではないけれど、だからこそこの直球の素晴らしさを、世に知ってもらいたい、というような意味合いで選んでみた。

Stardust:美空ひばり

作詞・作曲:Hoagy Carmichael

これは、日本の大歌手・美空ひばりのレパートリーの一つだけれど、彼女は英語が喋れたわけではなく、耳コピでこれを全て覚えてしまった。それでいてこの再現力である。これこそ「」でなくて何が「」なのか。
もちろん、細かく聴けば不自然な点、おかしい点もあるかもしれない。それにしても、英語ができないという前提があるのにこの堂々とした歌唱だ。
今、老若男女問わず歌手というジャンルで活動している人たちはたくさんいるが、その人たちにこの真似ができる人々がどれぐらいいるのか、という気がしてしまう。

それはともかく。

この曲を知ったのはフジテレビ系のバラエティ番組「北野ファンクラブ」のオープニングテーマ曲としてだった。

この「スターダスト」自体はバラエティ番組との親和性が非常に高い。古くは日本テレビ系で爆発的にヒットした「シャボン玉ホリデー」のエンディングでザ・ピーナッツが歌っていた。
それを意識しての起用かどうかは知らない。ただ、あのビートたけしが恐らく意図もなくこれをテーマ曲に持ってくるわけがないとは思う。

「北野ファンクラブ」の冒頭で聞かれるのはごく一部だけだが、それでも美空ひばりの説得力ある歌唱が、番組の馬鹿馬鹿しさを全て塗り替えてしまうほど強い印象を残していく。

後にこれを平井堅を含めたコンビで再現しているのだが、これはこれで良いと思う。美空ひばりとデュエットするパートになってからの平井堅の低音主体のメロディの取り方はなかなか面白い。

ホーギー・カーマイケルは、ザ・ピーナッツの歌唱は来日中に聴いたことはあり、それが縁で「シャボン玉ホリデー」にも出演したそうだが、彼がもし美空ひばりのものを聴いていたら、どういう反応をしただろう。
非常に興味深い。

いずれにせよ、日本が誇る名ヴォーカリストが、この曲を堂々とカヴァーしている。私たちはもっとそのことを誇って良いのではないか。
確かに美空ひばりという人自体、もはや古すぎて、その存命時代や、ましてその全盛期を知っている人の方が少なくなってきているだろう。

それでも、美空ひばりのこうした勇猛果敢なチャレンジ精神を継承する歌手が、今の日本に出てきてくれないことに、何というか、ちょっと残念な気分がしている。

乙女座 宮:山口百恵

作詞:阿木燿子
作曲:宇崎竜童
編曲:萩田光雄

山口百恵は、言わずと知れた日本のトップアイドルだった女性歌手なのだけれど、その数多いヒット曲の中から、敢えてこの曲を選んだ。

短調のヒット曲が格段に多い山口百恵なのだけど、この曲は必ずしもそうではない。確かに曲の終わりは短調で終わるけれど、ほぼ大部分は長調で占められている。

その意外性がこの曲に惹きつけられる最大の要因かもしれない。

山口百恵のヴォーカルは、こういう長調よりもむしろ短調に向いているウェットなイメージが強く、だから彼女のヒット曲にも圧倒的に短調の作品が多いと思っているのだけど、それでもこの曲は話が別だ。
最初、テレビ番組、たぶん、ザ・ベストテンだろうと思うけれど、ともかくその番組で聴いた時に、子供心に軽く衝撃を受けた覚えがある。

この短調長調の話をもう少しすると、先述の通り山口百恵には短調のヒット曲が多数あるため、こういう「乙女座 宮」のような長調の曲が目立ちにくいこともあり、逆に際立っている。
そしてそんな長調の曲でさえ、知らず知らずのうちに仄かな「憂い」を醸し出している。この人はそういう意味では、長調を歌うよりも、本質的に短調にこそ力を発揮できる歌手なのではないだろうか。

あと、細かいことに拘るようだが、ザ・ベストテンでは「乙女座宮」と記載することがあり、実際に番組内に出てくるランキングボードはこれを見る限り「乙女座」と「宮」の間にスペースがない記載になっている。
しかし、この曲の実際のタイトルは「乙女座 宮」であり、そのように表記されるべきだ。テロップはちゃんと「乙女座」と「宮」の間にスペースがついている。

閑話休題。

山口百恵は、この頃まだティーンエイジャー(確か19歳)だったはずで、今聴くとそれが20代後半ぐらいの、ちょっと落ち着くことを覚えてウェットなイメージを身にまとえるようになった女性に見えてくる。
10代後半にして「ちゃん」付けで呼ぶのが憚られる雰囲気を出せる女性アイドルタレントが、今の世の中にはいるのだろうか。
今の世の中だと、むしろ10代だろうが20代だろうが、場合によっては30代でさえも「ちゃん」付けで呼ばれてしまいそうだが、こと山口百恵という人には、そういうイメージは湧かない。

年相応でない山口百恵という、早熟と呼ぶべきかもしれない女性歌手は、その後多数のオマージュやフォロワーを生んだように思うけれど、しかしたぶん誰一人として山口百恵本人を凌駕できなかったのではないか。

そういう、圧倒的な存在感が彼女にはあると思う。そして、この曲はそんな彼女の中に於いて、少々異質なので個人的にも大好きだ。


ということで、自分の路線にない作品を三つ選んでみた。別に異論があっても構わない。あくまで私なりに選んだだけだから。

基本的に他人様にどうこう、と偉そうに提示するような文章ではなく、「こいつ、馬鹿でぇ」と軽くお読みいただけるような文章を書き発表することを目指しております。それでもよろしければお願い致します。