見出し画像

ジェンダーギャップなイベントの登壇をお断りすることにしました。

お疲れさまです、uni'que若宮です。

ちょっと色々と考えまして、当面、女性登壇者比率が低いイベントへの登壇はお断りさせていただくことにしました。(単独や対談は仕方ないものの)3人以上の登壇者がいるイベントで、25%以上女性登壇者(アシスタント的な人ではなく)がいない場合は、丁重にお断りしようと思います。
(ルールにしたいと思いますので「えらそうに断りやがって、天狗かよ」などとお気を悪くされないため、前もってのお知らせです)

逆に女性の比率が50%あるイベントなどの場合には登壇料をお安くもしくは主旨によっては無料でもお引き受けします。

以下、どうしてそういうルールを考えたか、少し書きたいと思います。


埋まらないジェンダーギャップ

先日、こんなニュースがありました。

僕はこれをきいた時、本当に目眩がしました。誰が得するのかよくわからない(というか一部の人だけが得をする)法案を強行採決したり、閣議決定を乱発するのに、あっさり10年先送りってどういうことだと。

そもそも本気で取り組むなら、まず組閣の際に女性比率を30%にするところから始めるべきでは、と思いますし、フィンランドの内閣とかと比べると本当に恥ずかしいと思うわけです。。。


しかしそんなことを言っていながら、実は自分もそれに今も加担しているのでは?と、ある時はっとしたのです。


実は自分も加担しているのではないか?

そのきっかけとなったのは、あるイベントへの登壇の打診を受けた時。タイミング的にちょっと出演が難しそうだったときなのもあるのですが、「僕が出るより女性とかZ世代とかに出てもらって、もっと多様性増やす方がよくないですかね?」という話をしたのです。すると「そういえば女性が一人もいませんでした」と返ってきて、これはまずい、と思った。

このイベントがテーマ的に特段女性を排除しているわけではなく、自然に(というのが根の深さなのですが)登壇者を選ぶと男性ばかりになる、ということが実に多い。改めて過去の自分の登壇イベントなどを思い返してみると、やはり9割近くが男性だった。


最近も「おじさんしかいない残念なカンファレンス」がプチ炎上していたりして、「おお、、これはないわあ、、、」などと思っていたのですが、よくよく考えると登壇者として自分もその片棒を担いでいた、と。

僕が登壇者の中に入るということは、男性比率を1上げるということで、同時に女性の登壇機会は減るわけです。言い換えれば「登壇する」ことでジェンダーギャップを広げてしまっている。他人事のように批評していたけれど、実は当事者だった。

そして、僕のように「無自覚な当事者」が、ジェンダーギャップの解消の障害になっている、ということについて考えるようになりました。


女性管理職の登用比率の改善はなぜ遅々として進まないのでしょうか?そもそも、人材登用なんて「決め」ですから、トップが本気でやる気になれば「できない」、それも「何年もかかってもできない」なんていうことはないはずです。なのにそれができないというのには構造の問題がある。

端的にいうと、一度「席」をもらった男性がどかない問題です。「席があかない」から変わっていかない。硬直化した組織には常に「既得権益者」が「手放さない」という問題があります。これから右側のような無重力な組織に少しずつ変わっていくとおもっていますが、これまでの組織は「高層ビル型」で「上にいくほど席が減るイス取りゲーム」です。

画像1

ここで「上」にいる人たちが席を空けなければ「入れ替わり」は起こらないし比率も改善できません。


バランス是正のために「席を手放す」こと

弊社uni'queは女性ターゲットの事業に特化しており、女性起業家創出のインキュベーション事業をやっているので、

取材の時にはなるべく女性メンバーに前に出てもらうように心がけています。しかし、個人としての登壇の依頼には「自分に依頼いただけるのはありがたい」としてしか考えていなかった。でもよくよく考えると、それ自体ある種の「優先チケット」であり、それを無反省に享受することは、既存の構造を肯定し再生産してしまっているなと。。。

それはuni'queのスタンスとしてはちょっと残念なのではないか。少なくともすでに全員男性の時にあえてもうひとり自分が出張ってまで、男性の比率を高める必要はないのではないか?そう考え、冒頭の「男性比率が高いイベントは辞退する」というルールにすることにしたのです。


こういう話をすると「女性を優遇している」とか「逆差別だ」とかいう声もあがります。しかし、これだけ偏りが出ているというのはそもそもの構造が不公平だったということであり、是正が必要です。シンプルに考えれば人口動態的にはほぼ半々な男性と女性の比率がこれほど非対称なのは、どう考えても異常なのです。


少し前には、医療業界において「女性が優秀だから」という理由で「減点による調整」がされていたという衝撃のニュースもありました。

こんな操作がされていたのに、それでもまだ「逆差別」などといえるでしょうか?これまでの構造がフェアでなかったのですから、公平さの観点からいえば一定数の男性が「席」を辞退して、その機会を奪われてきた「優秀な女性」に返上すべきです。

これは男女のことに限りませんが、「多様性」をいうのは簡単なのだけれども、本気で「これまでにない色を増やす」ためには「なにか一つ手放す」ということが必要だと思うのです。

ジェンダーギャップ解消は政府や誰かがやってくれるのを待っていてもだめなわけで、イベント登壇機会という小さなところからだけれども、「まずは自分が手放す」というところから取り組んでいきたいとおもったのです。


登壇辞退によって何が起こるか?

さて、僕が「女性比率が低いイベントには出ない」と決めると何が起こるでしょうか?

「あ、そうですか」とあっさり登壇者から外されることもあるでしょう。個人的に言えば仕事の機会が減ることですし、もちろん残念ですが、それで僕でなくていいくらいのイベントはそもそも多分僕じゃなくてよかった、ということだと思います(過去に明らかにコピペで名前を間違えて依頼があったケースとかもあり「これくらいの知名度で集客取れそうな人」を回してるだけということも結構あります)。いずれにしても「若宮じゃなくていい」機会なら手放して、新しい価値が増える女性や若い方に機会を譲ったほうがいい。


あるいは、もし主催の方がどうしても僕に出て欲しい、と思えば「女性比率を25%以上」にしようとするはずです。そうすると「女性のための枠」が追加されたりして女性の登壇機会が増えるでしょう。

とはいっても「若宮にどうしても出てほしい」なんて方はそんなにいませんから、ただ僕の仕事が減るだけで終わるかもしれません。僕一人だと対した影響力もありませんが、もし世の登壇する男性の半数がこの条件を出すようになったらどうなるでしょうか?辞退によって「席」が空きますし、企画段階から女性を入れようということになり、一気に女性比率は30%を超えるでしょう。


女性との共演登壇が増えるメリット

僕は女性が大変だからもっと応援しましょう、そのために自分が犠牲になりましょう、などと言っているわけではありません。自社が「女性特化」で事業をしているのも倫理的・社会的理由でなく、その方が事業機会や成功確率が高いと信じているからですが、女性の比率が増えることにはプラクティカルな意味でちゃんとメリットがあると考えているのです。

一つの大きなメリットは「違う視点に出会えること」。アート思考もそうですが、イノベーションの鍵は「異質性」からの「触発」であると僕は考えています。同じような属性の人が集まると、物事が片側からしか見えなくなり、定義や前提の見直しや「新結合」の機会は減るとおもうからです。

以前某テレビ番組に出た時のこと。その番組にはたくさん起業家が呼ばれていたのですが、男性比率はまさに95%でした。

番組内のテーマで「接待」という話題になり「ノーパンしゃぶしゃぶ」の事例が出たのですが、その時、出演タレントの方が「そりゃ、女性は履いてるよりは履いてないほうがいいに決まってますよ」と言ってスタジオが笑いに包まれる、ということがあったんですね。

僕はこの笑いにすごく違和感を感じました。おそらく、そこにいた少数派の女性も別に面白くなかったのではと思います。しかし、スタジオ全体としては「女性のノーパン」がジョークとして成立した。

誤解のないように言っておきたいのですが、僕はいわゆる「下ネタ」がNGだとは思っていません。「エロ」とつくものを片端から粛清するような過度な潔癖や正しさは文化の弾力性を失わせてしまうと思っていて、むしろ「卑猥さ」や「いかがわしさ」は文化のために必要だとすら思っています。

問題なのは、そこにある「多数派」の「当たり前」の空気モノカルチャーによる盲目だと思うのです。スタジオがもし男女半々だったら、あるいは逆に男性が5%で女性が95%だったら、おそらく「女性のノーパン」で笑いは生まれなかったでしょう。しかし、そういうことにも気づかないのです。


もう一つの利点は、女性登壇者が増えると「優秀なリーダー」に出会える確率があがることです。先程の医学界の事例にみるように、これまで構造的に言って、同じ能力の男女なら男性の方が(席が多い分)上がりやすくなっていました。逆にいうと、席が少ない中でも活躍している女性リーダーは同じような地位にいる男性よりも優秀である可能性が高い。そのような優秀な人たちとの出会いの機会が増えることは自分の成長のためにもとても有益です。


このように、登壇機会の何割かを辞退することで全数は減るかもしれませんが、むしろ触発や刺激の機会は増加すると考えています。

コロナ禍で、グローバルでみると女性やトランスジェンダーのリーダーが多く活躍しています。「VUCAの時代」と言われる不確実性の高い時代にはこれまで通りのモノカルチャーでは変化への対応力やレジリエンスが低く、ますます通用しなくなるでしょう。

自分の席に固執しているうちに、船全体が沈没仕掛けている。「優先チケット」をいま手にしているみなさん、その何割かで手放して多様性と新しい可能性を増やしていきませんか。

→続編

---
◎2020/9/15追記:こちらの投稿をきっかけに受けた取材など

■CS TBS NEWS『Dooo』9/5前編, 9/12後編放送

■朝日新聞 9/6朝刊

■Business Insider Japan 8/12

■president woman 8/5





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?