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体質改善というパワーワードに要注意


妊活・不妊治療のご相談の中でも多いのが「体質改善」に関する質問やご相談。「まずは体質改善から取り組みたい」そう言われる方も少なくありません。

しかし、ちょっと待ってください。
そもそも「体質改善」って何なのでしょうか?非常に抽象的な言葉が、大きな影響力を持って独り歩きしてしまっている気がしてなりません。

そして何より怖いのが、この「体質改善」という言葉に振り回された結果、妊娠の時期を逃してしまうことです。
30代のうちは「体質改善」で妊活を頑張り、40歳になって慌てて不妊治療を始めたけど…という人は実は少なくありません。

そもそも体質改善とは何なのか?
体質改善を優先するデメリットとは?
についてこの記事ではお伝えしてしていきます



体質改善は定義が不明瞭

そもそも「体質改善」って何なんでしょうか?

例えば、食事が不規則な人や、糖質や脂質に偏りがちな人が「食習慣を改善」したり、普段運動しない人が「運動習慣を改善」したり、睡眠が不規則な人が「睡眠習慣を改善」するのであればわかります。

でも「体質改善」って何がどうなれば改善されるのか?非常に定義が不明瞭です。そしてそもそも「体質」って改善できるものなのでしょうか?

「自分の体質」にあわせて、食事や生活習慣を変えていくことで日々の不調などと上手く付き合っていくことは出来ても、本来「体質」って人がそれぞれ産まれもったものであり、そうそう簡単に変えることは出来ないものだと思います。

不妊は自己努力では解決できない

そもそも食習慣や生活習慣の改善だけで解決しないのが「不妊症」です。
特に女性の場合は食習慣や生活習慣を改善してもなかなか妊娠に至らないのが現状です。

太りすぎて排卵が上手くいっていない場合などは減量を指示されることもありますが、そうでなければ食習慣や生活習慣の改善はあくまでもサブ的な位置付けでしかありません。

ただ男性不妊で精索静脈瘤など明らかな原因がなく、精子の状態がよくない場合は、禁煙や食事や運動習慣の改善で精子の状態が改善がすることがあります。そのため食事や生活習慣の改善は男性不妊の方が効果がみられる可能性があります。

甘い言葉に惑わされないで

体質改善とセットにしてよく謳われるのが「卵子の質の改善」や「着床環境(子宮内)の改善」ですが、こちらも何を持って「改善」というのか、検査方法も検証方法も不明瞭です。

そもそも現時点で「卵子の質」は改善出来ません。正直なところ「年齢」以外は何がどのように「卵子の質」に影響を及ぼすのかわかっていないことの方が多いのです。
煙草は百害あって一利なしなしと言われ、私達も禁煙を勧めますが、かといって煙草を吸っている人はみな妊娠に至らないのかと言えばそういうわけでもありません(とはいえ煙草は吸わない方がいいですが‥)

着床環境に関してもまだまだはっきりしない事の方が多いのが現状です。子宮内フローラー(細菌叢)のバランスが悪ければ抗菌薬などを用いて治療したり、乳酸菌入りの膣剤などを処方しているクリニックもありますが、まだまだ確立された方法とは言えないようです。

しかし、残念ながらSNS等をみているとこのまだわかっていないところに入り込み妊活における「体質改善」を謳っている人達がいます。

あえて名称は出しませんが、独自のオリジナルメソッドで「卵子の質改善」や「着床環境の改善」を謳っています。そして不妊治療をしないで済むなら…と吸い寄せられていく人もいるのです。

本当にそのメソッドに効果があればいいのですが…2年、3年とお金だけ費やして時間が過ぎていってしまう人も少なくありません。

オリジナルの「体質改善」に取り組む前に確認してほしいこと

適切な内容であれば、生活習慣の改善が全く無意味なわけではありません。

食事が不規則、運動不足、睡眠不足であればそれらを改善して健康的な生活を送ることは妊娠を考える上でも大切です。

しかし既に、多嚢胞性卵巣症候群や無排卵など排卵障害と診断されているにも拘わらず、「体質改善」だけに拘るのは妊娠を望むなら避けてほしいなと思います。

また、妊活を始めて1年・2年経っているのに、クリニックで検査を行わずに「体質改善」を探し求めるのもお勧めできません。このような場合はまずはクリニックを受診し二人で検査を受けてください。

もちろん、「自分達は不妊治療はしない、自然に任せる。」こう決めるのも一つの選択肢です。しかし後々、やっぱりクリニックを受診したい、不妊治療をしたいと考える可能性があるのであれば、やはり早めにクリニックを受診されることをお勧めします。

クリニックを受診しながらでも、気になる「体質改善」メソッドは、健康を害するものでなければ行うことは可能です。

だからこそ「体質改善」にこだわりすぎるのではなく、医療の力もかりつつ上手く自分達に合う「生活習慣改善」を取り入れてほしいなと思います。

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