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日本神話ヒルコの伝承から辿るタイムリープアニメ「サマータイムレンダ」


昨年密かに高評価を受けていたらしいアニメ「サマータイムレンダ」を今更ながら見てみた。

2シーズン全25話とボリュームもある。

巷では「神アニメ」や「つまらない」と評価もよく別れている作品。配信されているところも当初は独占されていたようで話題にはなっていなかった。

タイムリープや伏線の考察について述べている人が多かったが個人的にはその辺の要素は面白くなかったので、

この作品の話のモデルである日本神話の関連性と紐づけてネタバレ感想を書いていきたい。


あらすじ
家族同然に育ってきた幼なじみの少女・潮の訃報を聞き、18歳の慎平は帰島します。 そこで聞いたのは、潮が事故死ではなく、誰かに殺されたという可能性と、「自分の“影”に出会うと死ぬ」という不吉な噂。

ネタバレあり感想




ハイネの正体とヒルコ神の伝承

裏の影の首領ハイネの正体は、作品の舞台である日都ヶ島の神ヒルコノミコトであった。

ヒルコノミコトは実際に西宮などで伝わっている神様であり、商業や海の神として祀られている。作品の話もモデルや背景はここに繋がっていることが多い。

ヒルコ神(蛭子神)は古事記の中では、イザナギとイザナミの初めての子供として、日本書紀の中では、アマテラスオオミカミ、ツクヨミノミコトの次に生まれる神様です。

ヒルコ神は古事記によりと生まれた時から不具の子として扱われ3歳のころには船から海に流されている。そこから御神像として漁師に釣りあげられた説や摂津の方に流れ着いて海の神として祀られていた説があるらしい。

サマータイムレンダでは300年前に鯨の姿でヒルコは日都ヶ島の海岸に流れ着いた。そこに近づいてきたハイネをコピーして食らったことが作品の事件元となる「影」の始まりになる。

人間の姿になったヒルコ神は人間の味を好み生贄として人を食らいながら300年生きながらえた。

海の神としても祀られているヒルコ神は人間にとっても祟りを逃れるために見て見ぬふりをして隠した不吉な存在となり、実際の伝承の悲しい背景を日都ヶ島の舞台でさらに悲しい存在としてリンクさせた話になっている。

そして自らが新たな存在を生むのではなく存在する人間の影として分娩し続けているのも、不具の子として海に流された話に皮肉と怨念も感じさせる。

ヒルコ神は時間軸のない永遠の国で自分が選んだ影と故郷に帰るという目的のため人間を食い体力をつけていたが、̪シデに利用されていたため帰れなかった。

最後はまだ胎盤の中にいる未成長の赤子の姿となったまま慎平らと300年前の過去に戻り潮の手によって影の元凶となった鯨のヒルコを故郷に返して世界を戻した。

アニメでは描かれていないヒルコ神の過去の悲しい背景をやりなおすためにヒルコは鯨の姿で現れた。だが潮の手により鯨の姿ごと消えていくことでハイネが食われることなく幽閉されずに救われていくという終わり。

鯨というのも海に流れ着いたら神様の別の姿だと捉えられていたが、作品では不吉な予兆として人々が恐れ始めていく象徴になっているのも現代に上手く解釈した話に思える。

最後のヒルコの姿が胎盤にいるようなあの姿であったのも、ヒルコ神が四肢がない障害を持ったイメージで描かれている胎盤から排出された不具の子として伝えられていたという胎盤の姿であるという説にもおそらくつながっている。

作中の話でもあの姿のまま海に流されていたということだったのだろう。

足が衰えたまま消えたヒルコも障害を持つことで初めて見える問題を解決し恵比須様として祀られる現存の世界線に戻っていったともいえる。

人間側の慎平や潮などは元の世界線に戻り歴史的には彼らも何もしていなかったかのような歴史であったが、

ツクヨミのような目を手にしていた彼らも本家ツクヨミのように歴史文献にもほとんど記載されない影のような存在だったという終わりだということかもしれない。


最初はドッペルゲンガーをモチーフにしたタイムリープアニメとも思ったが、終盤で徐々に歴史の奥行きも出てきたのは良かった。

ただ正直2クール目はそれぐらいの視点でしか興味は持てなかったな。異能力バトルが多くて話の興味は完全に薄れた。

結果的に奥行きやキャラクターの時間軸の話になるまえのシンプルな事件性のあるときの話の方が面白かったのはある。

時が繰り返されるのは過去の作品で慣れていても人物と影の両方で時間軸が複雑になると追いつけなくなる。

こうして作品の舞台や神話をモチーフに描かれた関連性を考えるぐらいでしか若いコンテンツについていけなくなってきた。




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