サくら&りんゴ #79 こぼれ落ちていく
耳もとでスマホが鳴った
びっくりして起き上がる
ホテルのベッドで眠っていた
慌ててスマホを開けると見慣れない画面
コンタクトを外した目で顔を近づけると寝ぼけた私が写っている
エ?ハ、ハーイ?ハ?誰?
耳に入って来たのは完全に寝起きの自分の声で向こうからは応答なし
そして切れる
切れてからようやく、位置確認のアプリMySOSだとわかった。
強制隔離中であった。
自動コールがあるから、自分がいる背景を映しながら(隔離状態である証明として)録画すると聞いていた。位置情報が”入国者管理健康センター“に送られるのだ。
あの寝ぼけてげっそりした顔が送信されたのかと思うとぞっとしたが、後の祭り。
日本時刻午後5時
カナダの東時刻で午前3時
体は真夜中モード
今ここにいる私の体が一昨日の私とまだつながっていない
さて、一夜明けると成田空港周辺では強制隔離者の宿泊先が満杯で大変な状況であることがわかった。韓国からの便の渡航者は成田空港から政府チャーター便でセントリアまで移送されての隔離だとか。
なんかすごいことになってる・・・
カナダでも、アメリカが入国1日前のantigen testを課すようになったので、注意を促している。ハハ~ン、それでバンクーバー空港ではこのantigen test やらの特別ブースが設けられていたのだ。
ホリデーシーズンを前に人々が大移動(トロントの空港で自分の目で確認済み)。そこに規制が加わり空港への問い合わせが殺到。なんでも国内便もランダムにPCRテストをすることになったらしい。
さて私の強制隔離生活はというと
ホテルは思っていたよりも広くて
配給(笑)食はこんな感じ
到着の夜
普通食、イスラム食、ベジタリアン、ヴィーガンの中から選べる。
私は普通食。
分量が足りないのでお菓子やカップ麺を用意した方がいいと言う体験者のyoutubeを見て、私も準備した。渡航3日前にカナダ・オンタリオ州が強制隔離地域に入ってしまったため、あわててSobeysに買いに行き、おかげでスーツケースひとつに納まらなくなったという経緯あり。
隔離先のホテルには、ケトルはあるが電子レンジはないと言う情報で、すぐ食べられるビストロシリーズのスパニッシュとメキシカンライス。お湯を注ぐだけのタイヌードル、クノールスープシリーズ。果物はないだろうと予測して人参とピーチの入ったアップルソース。
このMOTT‘Sのアップルソースは夫のお気に入りのブランド ;)
そしてお菓子
ところで私の頭が悪いせいで厚労省水際対策のページが意味不明で困った。
1ページ読んで、ってことはつまり?
今日の隔離追加国はわかったけど、じゃあそれ以前のは?
詳細は***とあるのにリンクが張っていないけど何処探せばいいの?
そんなわけで大いに助かったのがyoutuberのノマドダイスケさん。
厚労省のページの“翻訳”をしてくれて、日々変わる強制隔離国もわかりやすく表にまとめて示してくれる。視聴者からのリアルタイム体験談も入ってこれがかなり有益。
これから帰国、渡航予定の人はチェックすることをおススメ。
明日は強制隔離最終日。(強制隔離は終わっても自主隔離は続く)
PCR結果が陰性で、なおかつ同じフライトの席が近かった人や、移送バスのグループの中から陽性者が出なかったら、の話だけれど。
(陽性者発見の場合はどうなるのかしら?)
ああ~でも、そんな もし を考えるのはもうめんどうになった。
クノールのリーキスープを飲んでから時差解消の昼寝をしよう。
ゆっくり大きなベッドで。
エリックから6インチ(15cmくらい)雪が積もったとメッセンジャーが来ていた。ヨガのオンラインクラスのレノアに新しいクラスのお知らせをこっちにも送ってくれと頼んでおいた。
そして
色々な事が心の中で
ふっと不確かになった
色々な夫とのことが
私の体がカナダを離れても
エリックやレノアは変わらずそこにいて
でも夫はいない
本当に私たちは共に生きていたのかなと
あの未完成の湖畔の家で
ただの夢だったのではないか
私の頭がPCRの検査結果に囚われているうちに
確かにあったはずのことが
どんどんこぼれ落ちていく
こうやって
現実に心奪われて
過去のことが曖昧になっていっても
それでいいじゃないと
受け入れるときが
来るのかもしれない
けれど
今は
まだ来てほしくない
どうしてもまだ
あの大きな手のぬくもりを
思い出していたいから
リーキは白ネギに似た野菜