長期人工呼吸管理の離脱について,何をどうみていくか。


アメリカでは,年間に30万人もの人が4日以上人工呼吸器管理となった状態であるProlonged acute mechanical ventilation(PAMV)の状態となる。2020年には2倍になるといわれている*1
(COVID-19の影響でもっと増えただろうな。。。)
3-7%のPAMVが21日以上人工呼吸器管理となるProlonged mechanical ventilation(PMV)へ移行すると言われている*2

*1 Zilberberg MD, Luippold RS, Sulsky S et al. Prolonged acute mechanical ventilation, hospital resource utilization and mortality in the United States. Crit Care Med 2008;36:1–7.
*2 Macintyre NR, Epstein SK, Carson S et al. Management of patients requir- ing prolonged mechanical ventilation: Report of a NAMDRS Consensus Conference. Chest 2005;128:3937–3954.


今回の論文は↓

Dermot Frengley J, Sansone GR, Shakya K, Kaner RJ. Prolonged mechanical ventilation in 540 seriously ill older adults: effects of increasing age on clinical outcomes and survival. J Am Geriatr Soc. 2014;62(1):1‐9. doi:10.1111/jgs.12597


この長期人工呼吸器管理についての研究は少なく,本研究はその中でも大規模研究として行われた貴重な研究である。

このPMVの状態においての,転帰に及ぼす年齢および平蔵疾患,生理学的指標の影響について調査した研究です。


研究デザインは,後ろ向きコホート研究です。

対象者は単施設のLTACH(Long-term acute-care hosital:ICUの後方施設のような病院)で2001年1月~2006年12月の間に入院した957名を受け入れている。
今回はそのうち,65歳以上の高齢者540名(56%)を対象として,年齢別に比較検討した。

weaning protocolを提示
医学的に安定しており,自発呼吸が可能な患者について実施。
生理学的指標↓
・換気量10L/min以下
・RSBI<105
・吸気陰圧 25cmH2O
・呼吸数 25>
・動肺コンプライアンス:25ml/cmH2O<
・静肺コンプライアンス:35ml/cmH2O<


統計学的処理は
・年齢別の
人口統計学的比較
合併症の有無
在院日数
呼吸機能
人工呼吸器離脱割合
離脱必要期間
死亡率

・離脱/非離脱においての要因をロジスティック回帰分析において要因検討

・Cox比例ハザード回帰において,死亡リスク要因の検討

を行っている。

Key results

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・年齢によって,離脱基準に該当する割合や成功率がよい

画像2


・PMVの離脱可能性でよいのは合併症の少なさ,呼吸生理学的指標としてRSBI,静肺コンプライアンスが挙げられた。

画像3

画像4


・離脱成功は死亡率のリスク軽減につながっている


結論
・年齢は因子として重要であるが,生理学的指標や併存疾患の状態などについて確認し,離脱可能性と長期生存について検討する必要がある。


私見
・換気能力が高くても離脱できない例は実際にいる。また換気が悪くても離脱できてしまう例もまたしかり。

・合併症について呼吸を含め全身の臓器が連携しているということが,長期人工呼吸管理の離脱を検討する際に非常によくわかる。

・年齢で判断するのは,早合点であり,生理学的指標や全身状態を評価して離脱可能性を探る必要がある。呼吸機能で言えば,RSBIは急性期でも慢性期でも,換気効率を見るうえで非常に重要な指標であると思う。しかしどういう原因でそのRSBIの値?という解釈が必要。

つまり,呼吸筋力?コンプライアンス?低酸素?など,なぜそのRSBIになったの?という意味で,今回の研究では静肺コンプライアンスがヒットした。吸気陰圧はそんなではないとのことで,広がりやすい肺を有しているということが重要とも考えられる。

・離脱できたほうが生存できるのではなく,離脱する能力があるから生存できるという解釈のほうが正しいと思う。


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