先生ごめんなさい

 午後息子の担任から電話が来た。休校中の様子確認のための定期的な電話だ。

 先生:「生活の様子はどうですか?昼夜逆転になっていませんか?」
 わたし:「なんとも言えません。今日は昼まで寝ていて、昼ご飯は食べました。今は起きています。」
 先生:「しっかり食べてしっかり寝るのが一番だと思いますので、○○君に規則正しい生活をするようにとお伝えください。」

 先生:「宿題はやっているようですか?」
 わたし:「一度もやっているところを見たことがありません。」
 (心の声:『やっぱり勉強の話になるのね。ワークブックは学校からもらって手提げ袋に入ったままで、開いてもいません。』)
 先生:「お母さんと一緒に確認しながら、できるところからやってみるといいと思います。」
 わたし:「わかりました。」
 (心の声:『えー、そんなの無理だよ。』)

 ふだん息子が学校に行くのは、部活の時だけだ。授業には出ていない。宿題もほとんどしたことがない。興味があることは熱心に調べている。自分が必要だと納得したことしかしない。振り切っているなと思う。先生は息子のことをよく理解してくれているが、さすがに中3ともなると、学習の進み具合は気になるだろう。

 正直、息子と勉強の話はしたくない。余計なプレッシャーをかけたくない。でも、学校には属しているので、一応、宿題のことを少し伝えてみた。息子はため息をついて、返事はしたが、休校前にどっさり渡されたワークブックとプリント類に手を着ける様子はなかった。今はパソコンを覗いて笑っている。

 わたしはその様子を見て、成長したなと思った。以前の息子は、勉強の話をされると、俯いてしまい、しばらく動けなくなったものだ。そして、わたしも成長した。息子が不登校になる前のわたしだったら、息子に宿題をするようにしつこく迫っていただろう。だが今は、息子が自分で納得して、必要だと思ったらやればいいと思っている。

 息子の担任はいつも穏やかで誠実な、有り難い先生だ。宿題をやっていないからといって、責めたりなど絶対にしない。息子のことを理解してくれている。それでも、先生も組織の中の一人で、学校のルールに則って仕事をしなければならない。

 緊急事態宣言が出て休校になっても、実質、息子の生活は今までとあまり変わらない。しかし、世間ではいろいろなことが今までとは同じようにはいかなくなった。学校教育も今までの常識を変えるべきだと、たくさんの人が言っている。だが、学校休みにします、じゃあワークブックとプリントね。のパターンの繰り返しで、本当に変わるんだろうか。少なくともわたしが住んでいる町の教育委員会は変わる気がしない。

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