作曲家修業の思い出(8)曲はパーツでストックする?

さて、リズムプロダクションにダメだしをされ、デモテープ作成講座でも「リズムで9割が決まる」と言われ、限りなく本チャンに近い形まで仕上げないとダメなんだなあということを痛感したわたくし。

とりあえず打ち込むためのネタが足りないとみて、サンプラーと音ネタを入手することにします。デザインの世界でいえば、Photoshopを買い、アマナやPixtaのような素材サイトに登録するようなイメージでしょうか。しかし時代は2005年。コンピューターで打ち込むDAWの時代とはいえ、まだまだサンプラーはソフトサンプラーのパワーがヘボかったので、ハード系のお高いものを揃えます(ここから先はタダの機材オタクネタになるのでやめます)

「まず機材を買う」という形から入る定番のパターンを社会人の財力を持って一気に実現し、次に苦労したのが曲の量産でした。なにせ月に最低5曲。週1で1曲。というか週末で1曲。4-5時間で1曲と考えればいいでしょうか。

今までのバンド時代のように、のらりくらりとは作れません。これまでも、

作曲家修業の思い出(5)リズムプロダクションがダメ

のとおり、できるだけの効率化はしてみましたが、これでも調子が乗らない月は追いつかない。そこでこれまでも時々やっていた、「パーツ組み上げ作曲」を実践することにしました。


曲ではなく、構成ごとに分解してストック=パーツ組み上げ作曲

特にJ-POPの場合、たいてい

イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→A2メロ→B2メロ→2サビ→間奏→ブリッジ→3サビ(大サビ)→(場合によってサビ転調)→アウトロ

で成り立っています。スマホ動画時代の今は各パーツがどんどん短くなり、特にイントロと間奏・ブリッジはほぼない時代になってきましたが、上記のパターンが王道です。

そこでAメロ、Bメロ、サビの3つ、場合によってはイントロも入れた4種類をバラバラに保存しておくという策に出ます。

なぜそんなことをしたか?

曲作りをスタートして、「あ、これいいかも」と思って作ったAメロに続けてBメロを作っても「悪くないんだけどしっくりこない」というケースが結構多かったのです。そうすると、たいていボツ作になってしまうのですが、どこかのタイミングで敗者復活戦で蘇らせることもできるんじゃないの?と思ったわけです。

そこで、今までは頭の中にしか貯めていなかった使わなかったモチーフ類を、別名保存して「ネタフォルダ」に格納することにしたのです。


結果として、量産はできたけど.....

この効果はなにげに絶大で、量産するにはずいぶん役立ちました。「確かこんなのを作ってたよな」といってピックアップすることが多かったのです。

たぶんビジネスの世界でいえば、パワポでビジュアルアイコン類を貼りたいときに、ビジュアルライブラリーを自分で作っておくと、探す手間がなくなって超楽、というのと同じような効能だと思います。

ただ、楽曲の質が上がったかというと、なんとも言えませんでした。以前もご紹介したこの曲などは、実はイントロ、A-Bメロ、サビの3種類が別々に作ってボツ作だったものを組み合わせて1つの曲にしたものでした。


が、結局この曲↑以上の質(というか自分で良い曲だと胸張って言える)のものはできませんでした...。

考えられる失敗要因として、、、

・Bメロからサビに向かう盛り上がりが勝負なのに、メロディのつながりに欠けやすい
・A→B→サビの流れが分断されがちで、そういうアレンジはあくまでも飛び道具
・結局イントロからサビまで一気通貫できない楽曲は、熱意が伝わらない(それ言っちゃおしまいという話もありますが...)


まあそんなわけで、流れが分断されないように別途稽古する必要がありました...。


ただ、この方法はアーティストコラボにはいいかも

作曲家修行から2年後、DJ・クリエーターの瀧澤賢太郎くんのアルバムで共作させてもらう機会がありました。


この曲は、Trans of Lifeのギターである富樫兄、キーボードのぼく、そして瀧澤くんの3人でバラバラにモチーフを持ち寄って完成させています。


・イントロ~Aメロ部分:富樫兄(0'00"~2'18" シンプルなコードライン)
・Bメロの展開部分:ぼく(2'18"~2'56" なんか複雑なコードライン)
・ブリッジ部分:瀧澤くん(3'58"~4'29" ブレイクしてアンビエントなところ)


富樫兄とぼくは、それぞれコードによる構成を作り、それぞれメロディラインを載せ、ソロワークを載せ、これに瀧澤くんのブリッジ部分を組み合わせて、全体のミックス・トリートメントを行っているんですね。(余談ですが、この曲ができたとき、ちょうど3人が知り合って5年だったので「Five Years Circle」なのです)

こんな作り方もあるんですね~、くらいのノリで解釈しておいてください。笑


というわけで、J-POPな作曲家としての修業はもうちょっと続きます。

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