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建築・選挙もする!?ハチが天才すぎるはなし

久々の投稿になります。今回は、今年度に入ってもレポーターを続投させていただいているCSグリーンチャンネル『なるほど!畜産現場』について。今シーズン初回は「養蜂」がテーマでした。畜産と聞くと乳製品やお肉のイメージが強いと思われますが、実は「ハチミツ」も畜産物の1つなんです!一体、なんで??今回は東京都町田市にある玉川大学と千葉県の館山にある「ひふみ養蜂園」の2箇所に取材していきました。番組ではお伝えできなかった裏話も、ここでこっそりと!

①ハチミツってどう作られるの??

まず、玉川大学ミツバチ科学研究センターの中村純教授にミツバチとハチミツに関する基礎知識を伺いました。はじめの問いに戻りますとハチミツにおいても、動物を扱って食品を生産して人間に配給する点から畜産の一部をなすとされているんだそう。しかし、ハチミツが他の畜産物と大きく異なる点は「生産や加工に至るまで人間の介入がほとんどいらない」点なんです!ハチ自身が生産したハチミツは処理を加えずともその場ですぐに食べられます。

そもそもハチミツとは植物が花粉をミツバチに運ばせるよう、太陽光エネルギーを糖質に変換した中の花蜜が材料となっています。そして、その花蜜をミツバチは口から取り込んで、お腹の中にある蜜胃(Honey Stomach)と呼ばれる器官を通してハチミツを生成するんです。

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ですが、これだけじゃないのがハチのすごいところ!!実は、ミツバチが持つ器官の中には「ハチミツを作る」器官と「ハチの巣を作る」器官と複数あるんです。そして、同じ花蜜という材料を使ってハチミツだけでなくハチの巣まで一挙に作れてしまうんです!言うなれば、『ヘンゼルとグレーテル』のお菓子の家を自分たちの手で建築し、その中に食料としてハチミツを保存するというのがハチの生態なんです。食と住を同じ素材で賄えるハチのすごさに驚いています。ちなみに、コムハニーという、ハチの巣がごろっと入ったハチミツの商品を食べられたことはありますか?つまるところ、ハチの巣って食べても問題ないんです!このハチの巣の魅力については別の記事で改めて!

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さあ!そんなハチミツは地球史上最古の昆虫による保存食として数千年の歴史がありますが、ミツバチにも種類があります。大きく分けてニホンミツバチセイヨウミツバチです。このうち、日本の養蜂においてもセイヨウミツバチが利用されることが多いらしいですが、賛否両論あるそうです。というのも、やはり文字通りセイヨウミツバチは外来種であるため、生物多様性の観点から疑問視する声もあるみたいなんです。議論の行く末はどうなるんでしょうか。

②ミツバチと地理、季節の密接な関係

ミツバチは花蜜を材料とするというお話を序盤でしました。したがって、ミツバチの生息地の近くにある花の種類に応じてハチミツの風味が大きく変わるんです!よく、アカシアのハチミツなんて聞き馴染みがあるかと思うんですが、まさに、アカシアのお花畑の近くでハチを飼育することで、特定の味をつけられんだそうです。また、複数のお花畑がある場所であれば、それらの花蜜がブレンドしますので、いろんな風味をカクテルのように混ぜ合わせることができるんです。多くの種類の花蜜が混ざったハチミツを「百花蜜(ひゃっかみつ)」と呼びます。

さらに!もちろん花は季節の移ろいの中で咲いて散ってを繰り返しますよね。したがって、目的のハチミツの商品を生産するためにそれぞれのお花畑の近くにハチの巣を移動させることもあるんです。あるいは、お花畑がたくさん近くにある場所に定住するか。このように、養蜂には「移動型養蜂」と「定住型養蜂」の2つのスタイルがあるんです。もしかしたら、皆さんも春から夏にかけてすれ違った車の中にはハチを積んでいるものもあるかもしれません。

③ハチが選挙する!?8の字ダンスとは!?

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お待たせしました。タイトルにもある通り、ハチには独自の生態・習性があります。ハチはもちろん単独ではなく、多くの個体が集まった群で行動しますので、「真社会性昆虫」にカテゴライズされます。そのため、グループで効率よく生存するためのノウハウが蓄積されているんです。

1つは「8の字ダンス」と呼ばれる行動。ハチはブンブン飛び回るなかで8の字にクネクネ飛ぶこともあるってご存知でしたか?よく、この行動は「エサの場所を知らせる」目的があるとされていました。しかし、先の中村教授との取材で聞いたのは別の情報でした。というのも、お花の位置を知らせるためにダンスをしても、ハチの描く8の字の大きさよりもお花畑の方が目に留まりやすいから効率が良くない。ということは、別に8の字ダンスの理由や意味があるのでは、という指摘も研究の中であったそうなんです。そして、最近の研究発表では8の字ダンスはエサのありかではなく、「ここに巣を作ろう!」という巣の位置の提案と考えるのが最適なのではと考えられているそうです。

そして、働きバチの中ではそのように巣の位置を立候補するものが複数現れ、残りのハチの群れが好きな方向に飛んでいって同じように8の字ダンスを真似するんだそうです。まるでフラッシュモブのように8の字ダンスをするハチが多い方が、最終的に巣の位置として適切と判断され、ハチの群れが巣を作り始めるんだそう!つまり、ハチは多数決を行い、選挙によって巣の位置を決定してるんです!そこまで頭がいいとは!

④プロポリス、ローヤルゼリーの正体とは?

ここまでハチの行動学・生態学的な専門知識を並べてきましたが、少し消費者に近い視点に移しましょう。よく「ハチミツはノドに良い」、「ローヤルゼリーやプロポリスが決め手」というようなイメージがありますよね?では、それらは一体どんなものなのでしょうか。

まず、プロポリスとローヤルゼリーはハチミツの成分ではございません

え?でも、ハチミツに入ってるんじゃないの?と思われるかもしれませんが、どちらもハチミツとは別のものなんです。というのも、プロポリスというのは植物の樹液・樹脂にハチの唾液の酵素が混じったものなんだそう。そして、このプロポリスの用途はハチの餌というより、巣に細菌が入らないよう清潔に保つバリアのためだそうです。一方で、ローヤルゼリー(Royal Jelly)というのは、文字通り女王バチの食べ物と女王バチ幼虫への餌として働きバチから生成されます。より多くの幼虫を産むためのエナジードリンク、といったところでしょうか。ですから、女王バチはローヤルゼリーを摂取することで毎日2000個の卵を産むんだそうです。したがって、やはりハチミツそのものと同じくらい栄養価が高く、人間にも疲労回復等の良い作用をもたらすという点は間違いありません。

⑤実際に、ハチミツ採取に挑戦!

座学のように知識を連ねてきましたが、番組後半では実際に「ひふみ養蜂園」へ取材し、養蜂の体験をさせていただきました!人生で最も身体を張ったロケだと自負します。刺されたらどうしよ...という不安しかなく、ちゃんとレポートできるか心配でした。事実、素でビビってる様子がカメラで抑えられました。

まるで、モンスターハンター。巣箱がたくさん並んでいるんですが、遠くからでも羽音がめちゃくちゃ聴こえるんです!こっわ、と正直思いました。防護服もわりかし薄手で突き破ってくるんじゃないかと。養蜂園の尾形さん曰く、「服の中に入ってきたら指で潰してください」とのこと。いや、そう言われましても!

ガクブルで巣箱に近づきますと、尋常じゃない数のハチがブンブンと飛んでおります。そして、巣箱に近づけば1メートルほどしか離れていない尾形さんの声が聞こえないくらいハチの羽音が凄まじかったです。なんと1つの巣箱に2万匹もいるとのこと!真っ向からこの数のハチと対決して、せっかく貯めてくれているハチミツを採取するのですから当然ハチも抵抗します。しかし、自分がロケに行った時には晴天でハチたちも機嫌よく気前よくハチミツを取らせていただきました。なんでも、雨天曇天のときはハチたちもイラついているようで臨戦態勢を取るとか。

ハチの巣箱は長方形で厚みは薄い板のような形。両面にハチは巣を作り、このような板が垂直にレコード屋にあるレコードのように何枚も配置されております。この1枚1枚を取り出すのですが、「取らないでえ」と追っかけるハチたちを無力化させるために「燻煙器(くんえんき)」というアイテムを使います。その名の通り、煙を焚いて吹きかけるんです。「ひふみ養蜂園」さんの入り口にはまさに燻煙器とくまのプーさんが置かれていて、養蜂の象徴となる必需品です。取り出した板は遠心分離機にかけて蜜を遠心力で巣箱から飛ばしてかき集めます。詳細は動画にて!

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⑥大物アーティストがなぜ!?

さあ、ここからちょっとだけ裏話。

養蜂の撮影を終えて、同日の午後に控えていたリモート撮影の準備のとき。このリモート撮影は養蜂の次の回の『なるほど!畜産現場』に関するもので、養蜂園とは別の撮影空間を探していました。

ディレクターがダメもとで「ここら辺に静かでリモート撮影しやすい密閉空間はありますか?」と聞いたところ、尾形さんから驚くべき回答が。

尾形さん「うちの裏手にX JAPANのメンバーの機材が置いてある倉庫があるのでお貸ししますよ!」

撮影クルー&自分「....え?」

実は、YOSHIKIさんやTOSHIさんと千葉県館山は密接な関係がありまして、メンバーが利用していたスタジオの移転地としてひふみ養蜂園の近くに機材や資料などが保管されているんです。

ちなみに、ひふみ養蜂園さんにはカフェ123も併設されていてハチミツを利用した料理を美味しくいただくことができます。砂糖を使わずにハチミツだけで甘さを引き立たせる料理でしてソフトクリームからカレーまで美味しくいただきました!

そして、そのお店の中で見つけた写真がこちら。

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X JAPANのYOSHIKIさんです。

ですから、この次の回でコロナ禍における肉用牛生産現場の取り組みをリモート取材した時には、自分はX JAPANの使っていた機材に囲まれていました。そして、僕自身が座っていた椅子には「YOSHIKIさんが座ったイスです」とテープが貼られていましたね。

それでは次回の記事で、実際のリモート取材の動画を埋め込んだ上で、別のテーマについて綴りたいと思います。

展示やイベントレポート、ブックレビューなどを通じて、アート・テクノロジーなど幅広いジャンルを扱った記事を書こうと思います。また、役者としても活動しているので劇場などでお声がけさせてください!