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「幸せ」の構成要素とは?ウェルビーイングの視点から“ikigai”を考えよう!〜マネプロ#40

こんにちは!
DeNAでHRビジネスパートナーをしていた坪井(@tsubot0905)です。

マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第40回目です。

このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。

さて、今回のテーマは「beingです。

キャリア(≒人生)について考えた時に、人としての「幸せ」「生き方」の探求に向かいたいと思います。

大きすぎるテーマに身震いしておりますが、キャリア編を書く上では避けては通れないと思ったので、がんばります笑。

目次はこちら!

<幸せについての研究>

幸せについてなんて私一人で背負うには大きすぎるテーマですが、幸いなことに、幸せを科学的に研究するポジティブ心理学というジャンルが存在しています。

このポジティブ心理学という学問ジャンルは、1998年に生まれたばかり。私よりはるかに若いのです。

心理学といえば、元は人間のネガティブな面に焦点を当て“マイナスをゼロにする”ことに主眼が置かれていました。

そのため、人の「喜び」や「幸せ」についての研究はごくごく少数に限られていたのですが、悪いところばかり見つめるより、いいところを伸ばそうよと提唱した方がいたのです。

それが、当時の米国心理学会会長であったペンシルベニア大学心理学部教授のマーティン・E・P・セリグマン博士。

彼によってポジティブ心理学は創設され発展します。

そんなわけで、今では、人の幸せに関する研究成果が積み上がってます。怪しい世界ではありません(笑)

参考:

<幸せとは「満たされた状態」>

科学的に幸せを探求するのであれば、
「幸せ」を定義する必要があります。

最近よく見かけるようになってきたウェルビーイングがそれにふさわしい言葉のひとつです。詳しく見ていきましょう。

well-being(ウェルビーイング)ですが、日本語では「幸福」「健康」「福祉」と翻訳されることが多いです。

この言葉が初めて登場したのは、
WHOの憲章における次の一文。

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会仮訳)

ここから、基本的にウェルビーイングは身体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態にあることを意味する概念として扱われています。

似た言葉としてHappinessがありますが、こちらは瞬間的な幸せ(幸福感)を表し、ウェルビーイングとは「持続的な幸せな状態」を表す言葉として、区別されて使われています。

幸せ=ハピネス(短期の上下する感情)+ウェルビーイング(中長期の良い状態)と考えればいいでしょう。

そして、まさにこの二つをテーマに研究するウェルビーイング&ハピネスという研究分野があり、その研究によると、幸せな人は創造性が3倍高いこと、生産性が1.3倍高いこと、寿命が7年から10年長く、しかも健康であることがわかっているそうです。

ですから、ビジネスの世界に幸福学やウェルビーイングの概念が持ち込まれはじめているのも納得ですね。

<幸せを形成する5つの要素>

世界では幸せを構成する要素の研究も進んでます。

ポジティブ心理学を創設したセリグマン教授は、研究成果から幸せを形成する5つの要素を提唱しました。

5つの要素のイニシャルをとってPERMAモデル」と呼びます。この理論は、ポジティブ心理学創設から13年後の2011年にできたもの。

これらを全てを並列で捉えるのではなく、
私なりの解釈で構造化してみた図がコチラ。

私の感覚ですが、この図のより内側の部分が満たされていると外側も安定して満たされやすいのではないかと感じます。

詳しくみていきましょう!

中心にあるのは「人生の意味・意義」。これは私たちが生きる上での核となるものです。ただ、これを見つけるのは難しい…と感じた方がいるかもしれません。

このコアを自覚できるかどうかで、日々の行動に意味が加わるのだと思います。そこから、生き方が豊かになり、人生が意義あるものへと進化していくのではないでしょうか。

続いて、もうひとつ外側にあるのは、「良好な人間関係」と「没入できること」。端的にいうなら「ヒト」と「コト」ですね。

「ヒト」については、次の章で取り上げてますが、人間にとって最終的な幸福度は人とのつながりが決め手です。

「コト」については、「やりたい」と「やるべき」の一致が熱中や夢中を生み出します。頭の中だけではなく、実際の行動に意志や想いが乗っかるかが大事。

さらに、その外側には「達成感・自己効力感」があります。何か達成したいことを設定し、ゴールへ向かって成し遂げる経験をする。これが幸せにつながると。

また、ゴールに向かう中で、やれることが増えていくことは、自己効力感(「私ならできる」「きっとうまくいく」感覚)につながり、これも幸せであると。

さて、最後に一番外側にあるのが「ポジティブ感情」。内側にある他の要素が満たされていると、ポジティブ感情を受け取れるシーンが増えるはずです。

逆に、幸せになるためにポジティブになりましょう!と言われても、それで変わるのって難しいですよね?

大事なことは、外側よりも内側から幸せを感じられるように、自分自身と向き合えているかだと思います。

意義を感じることに没頭していて、それによって築かれた人間関係があって、目標に向かってできることが増え、前向きな気持ちになっている。そういう状態を目指したいものです。

<75年間の調査でわかった幸せの教訓>

寄り道になりますが、先ほどの「良好な人間関係」については面白い研究があるので紹介させてください。

なんと、戦前の1938年から70年以上にわたって数百人を追いかけた、幸せについてのハーバード大学の調査があるのです。4代にも引き継がれた研究者の並々ならぬ情熱が伝わってきますね。

研究によると、人を幸福にし、健康にするのは、何よりも良い人間関係なのだそうです。そして。人間関係については、大きな教訓が3つあることが明らかになりました。

(1)家族、友人、コミュニテイ等、周りとのつながりを持っている人はそうでない人よりも幸せで健康で長生きする
(2)身近な人たちとの関係の質が重要である
(3)良い関係は脳も守る
参考記事:人生を幸せにする3つの教訓:75年の追跡調査でわかったこと

前回のマネプロで有山さんとプロティアン・キャリアについて対話した際も、キャリア資本の中で一番大事なのは「社会関係資本」だという話がありました。

心身の健康にとっても、キャリア面の充実にとっても、他者との良好な関係は財産だといえますね。


<ikigai(いきがい)について>

さて、PERMAモデルの紹介で「人生の意義・意味」が中心にあるという話をしました。

これって、日本人にとって
馴染み深い言葉でいうと「生きがい」ですよね。

ある調査によると、生きがいを持っている人々の方が心血管疾患にかかるリスクが低く、死亡率も低いことが分かっています。

そんな「生きがい」についてを要素分解した図があります。それが「ikigai(いきがい)」のベン図。こちらです。

このベン図を作ったのは、日本在住のスペイン人の方。2016年に出版された『IKIGAI』の中で紹介されています。この本は、世界で200万部を突破する大ベストセラーとなりました。なぜかインドで13ヶ月連続1位にもなったそう。

ベン図の中身の話に戻ります。

ここでの「ikigai」は、「好きなこと」「社会貢献になること」「稼げること」「得意なこと」の4つの視点が全て重なった領域を指します。

この図のおもしろいところは、ベン図にしたことでさまざまな組み合わせを一目で網羅できる点です。要素が2つだけ、あるいは3つだけ重なっている部分の状態まで描かれているので解像度が高いですよね。

ここから着想を得て、以前のマネプロで書いた
3つの大事なing(being/having/doing)の重なり
についても考えてみました!

この図を見ていただくと

beingdoingの間にwillがある
having
doingの間にcanがある
being
havingの間にmustがある

となっています。イメージを伝えると下記です。

自分ってこうだというあり方(being)をふまえて、いろいろ行動していると(doing)、「これが好き」「やりたい」(will)という気持ちが浮かび上がる。

蓄えた知識やスキルを(having)、実際に活用していくと(doing)、経験をした「できること」(can)が増える。

だんだん自分が定まってきて(being)、世の中のために自分の持てる力を使って(having)、この「使命を果たす」という(must)という役割が見えてくる。

いかがでしょう?
イメージをつかむ説明になっていたでしょうか。

will/can/mustというのは、初めから個人の中にあるものではありません。ingの現在進行形の行動がつながって、心の中に生まれはじめるものだと思います。


<ウェルビーイングになるための4つの因子>

最後に、
日本でのウェルビーイング研究の話をしましょう。

日本における幸福学研究の第一人者である慶応義塾大学の大学院教授である前野隆司さんは、1500名へのアンケートから因子分析を行い、幸福度の高い人の4つの因子を特定しました。

幸福になる人の特徴であり、
4つの要素についてはこちらになります。

ひとつずつ見ていきましょう。

やってみよう因子:自己実現と成長

やりがいや強みを持ち、主体性の高い人は幸せです。他者の役に立っている実感、成長している体感、なりたい自分になれている感覚と直結します。

 ありがとう因子:つながりと感謝

人の喜ぶ顔が見たい、私を大切に思ってくれる人がいる、感謝することが多い、親切でありたいなどの実感がある人は幸せを感じやすいです。

なんとかなる因子:前向きと楽観

前野さんは楽観性を「幸せのためになくてはならないスパイス」と呼んでいます。楽観性が強い人は、他の要因が多少グズついても意に介しません。

ありのまま因子:自分らしさと独立

他人と自分を比較せず、自分の軸を持っている人は幸せを感じやすいです。
これが欠けていると他の因子を阻害することがあります。他者と比較したり、他者に合わせてばかりだと幸せが長続きしないのです。


4つ全てがひらがなで一般に普及しやすいよう、
分かりやすくされているのでありがたいですね。

この幸福度を測る無料診断があります。
ぜひ、やってみてください。

ちなみに、私の総合値は85.9。幸せ者でした(笑)

実は、1ヶ月後に前野さんとの対談記事をマネプロ#42で発信します。そこで、企業とウェルビーイングなどのテーマも詳しく掘り下げるのでお楽しみに!


<幸せに必要なのものは「選択」>

幸せは、ハピネス(短期の上下する感情)とウェルビーイング(中長期の良い状態)で考えるものでした。

ハピネスについてももう少し掘り下げましょう。

元ユニリーバCHROの島田さんは
“Happiness is choice”と話されていました。

人は、自分の外側の出来事に対して、
それをどう捉えるかを選ぶ自由があります。

物事をどう捉えるかは自分次第。
「選択」は訓練できる。

あいだみつおさんも、こんな言葉を残してます。

しあわせは いつも 
じぶんの こころが きめる

「心からの選択」が
幸せを引き寄せるのかもしれませんね。


<今回のQuestions>

以上が40回目のマネプロで
お届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?

ということでマネプロ恒例、最後の問いです。

今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!


<次回にむけて>

今回はbeingに関連する考え方を紹介してきました。

幸福学の専門家である前野隆司教授と対話した記事も予定してます。その記事で更なる探求もお楽しみに!

さて、次回は私の転職についてのご報告noteです。

いつもとは違った形になりますが、私のキャリアを実例に、幸せに近づく「心からの選択」をした事例に触れてもらう記事になればと思っています。

次回は2週間後の水曜日。
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最後まで読んでもらえて嬉しいです。
ありがとうございました!

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2022
年から「変化をリードするコーチ」として社外のリーダーへのコーチ業も取り組んでいます。HR経験者限定のコーチコミュニティも運営中です。ご興味ある方がいたら連絡くださいね!

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