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【考察】石神が花岡を妬まない本当の理由とは?(*ネタバレあり)【PART8】

▼YouTubeでは考察動画を公開


◆容疑者Xの真相 PART8


◇パート1〜7の概要


こんばんは!Kazukiです!
それでは今週もさっそく投稿の内容に入っていきましょう!


本日は、

先月要約した東野圭吾(ひがしの・けいご)先生の『容疑者Xの献身』と、

今月解説した山本圭(やまもと・けい)先生の『嫉妬論』を用いて、


ある考察に取り組んでいきます。


したがって、今回の考察では、
東野圭吾先生の『容疑者Xの献身』および、
山本圭先生の『嫉妬論』の内容を大変駆使していきますが、

もし、それらの内容というのを、この考察で、

ネズミに齧られたチーズのようにまばらに把握するのではなく、
しっかりと先に把握しておきたいという方がいましたら、

そのような方たちはぜひ、
先月から今月にかけて公開した、
パート1からパート7の投稿を先にご覧ください。


◇はじめに


それでは前置きはこのぐらいにして、
さっそく本日の投稿内容へと入っていきますが、

本シリーズ【容疑者Xの真相】の最後のパートで、
読者の皆様にお届けする投稿内容、

それがコチラになります。




【考察】石神が花岡を妬まない本当の理由とは?




ここで挙げた「石神」「花岡」という人名は、

先月に完全要約をしました、
東野圭吾先生の第134回直木賞受賞作、

『容疑者Xの献身』に登場する、
主要な人物たちの名前になりまして、

後ほど詳しく解説はするのですが、

本作『容疑者Xの献身』の考察に絡めたストーリーを、
ここで簡単にその掴みだけ紹介しておきますと、

本作『容疑者Xの献身』では、


「石神」という高校数学教師の男性が、
弁当屋で働く「花岡」という女性に恋愛感情を抱いている、


という設定のミステリー小説でして、

そして、そのような設定からすると、
そのストーリーはなにか「恋愛」をテーマにした、
甘酸っぱいものかと、


思いきや、


花岡とその娘が自衛のために殺害した元夫「富樫」の隠蔽に、
石神はあろうことか加担してしまうという、


甘酸っぱさなど皆無、


むしろ、


辛酸を極めまくった超弩級サスペンスで幕を開ける小説なのです。


では、なぜ石神は、
自身に全く関係のない殺人事件に対して、
自ら共犯になる案を申し出たのかというと、


それは石神が花岡を愛していたからに他ならず、


「すべては愛する人を守るため」という至上命題の上に、
石神はこの事件の隠蔽に謀略の限りを尽くすのですが、


そんな最中、


なんと花岡は、
水商売時代の馴染客である会社経営者の「工藤」との邂逅を果たし、


あろうことか、


その工藤と懇意にしているところを、
石神に目撃されてしまうのです。


もちろん、そんな意中の相手の他人との蜜月を、
目にしてしまった石神の胸中は決して穏やかではいられず、

恋敵の工藤に対しては、
ストーカーまがいの行動をとるようになってしまい、

一方の花岡には、「お前を許さない」と、
自らの恋心を踏み躙った当てつけとも取れる呪怨を抱いてしまい、

もうヒッチャカメッチャカになった……




かと思いきや、


それらの嫉妬心の暴走とも取れる石神の行動は、
じつは警察に石神が富樫殺しの犯人だと思わせるための策略でして、


それはすなわち、


石神は自身に振り向かず、
工藤に振り向いた花岡を妬むどころか、


その花岡を守るために自らを警察に差し出すという、


「自己犠牲の精神、ここに極まれり」とも解釈できる、
慈愛に満ちた行動を我々読者に見せつけてくるのです。




では、なぜ石神は花岡に対して、
妬み嫉みの感情を抱かなかったのでしょうか?




もちろん、その理由が窺える箇所というのは、
本作『容疑者Xの献身』の作中でも登場するのですが、

筆者の東野圭吾先生は、あえてなのか、


その理由というのを若干ぼかして表現しているんですね。


むしろ、そのぐらいぼかした方が、
人間の心理描写的には映えるでしょ、と。
趣があるでしょ、と言わんばかりなんですよ。




しかしです。


これ、声を大にして言いたんですが、

この石神が花岡に対して妬みを抱かなかった理由が、
若干ぼかされてしまっているせいで、

本作『容疑者Xの献身』を傑作たらしめたあのシーン、


石神が慟哭したラストの描写の意味までもが、
不可解なものになってしまっているんですね。


全ての罪を背負って江戸川署で拘留されている石神のもとへ、
刑事に連れられて花岡が姿を現したかと思えば、

首を垂れて、目に涙を浮かべながら、

「ごめんなさい、ごめんなさい」

と謝る彼女の姿を見て、

石神は「どうして」と言葉を詰まらせて、
獣の咆哮のような叫び声をあげて彼は泣きますが、


石神は花岡に本当は何を伝えたかったのか?


それがわかりにくくなってしまっているのです。


しかし、
その不明瞭さに一筋の光明を見出してくれているのが、
今月解説をしました山本圭先生の『嫉妬論』でして、

今しがたの紹介でもご理解いただけたかと思いますが、
本作『容疑者Xの献身』では、


この「嫉妬感情」というものを大変駆使していまして、


そのことから、
この「嫉妬感情」がどういったものなのかを把握していくと、

必然的に本作『容疑者Xの献身』でぼやかされていた、
石神が花岡に嫉妬しない本当の理由が明らかになっていき、


そこから芋蔓式に、
物語ラストの石神の涙に隠れた花岡への真意も、
汲み取ることができてしまうわけなのです。


したがって、大変前置きが長くなりましたが、
この【容疑者Xの真相】シリーズの最後では、

その石神の真意が隠されてしまった、
東野圭吾先生の『容疑者Xの献身』と、

その真意を読み解くための鍵となる、
山本圭先生の『嫉妬論』を用いて、



【考察】石神が花岡を妬まない本当の理由とは?



に取り組んでいこうと思います。


史上最高の直木賞とも名高い大傑作の裏に隠された、
容疑者Xの真相をその目で確かめにいきましょう。


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