コロナ禍での挑戦:紅茶の取引手法にデジタルトランスフォーメーションを取り入れたスリランカ  ~クラウドベースのオークションシステムを活用し、購入者と出品者のソーシャルディスタンスを保ちながらも 150 年の歴史を誇る産業を守り、約 200 万人の生活を保護することが可能に~ (2020/7/21、ブログ更新のお知らせ)

※米国マイクロソフトからブログ更新のお知らせが来ました!

+++++
コロナ禍での挑戦:紅茶の取引手法にデジタルトランスフォーメーションを取り入れたスリランカ

~クラウドベースのオークションシステムを活用し、購入者と出品者のソーシャルディスタンスを保ちながらも 150 年の歴史を誇る産業を守り、約 200 万人の生活を保護することが可能に~
+++++

※本ブログは、アジア時間 5 月 12 日 に公開された
“Brewing up change under COVID-19: Transforming how tea is bought and sold in Sri Lanka”の抄訳です。

< https://news.microsoft.com/…/brewing-up-change-under-covid…/ >

ジェフ スペンサー (Geoff Spencer) マイクロソフトアジア ライター

やかんを火にかけ、ポットをお湯で満たし、カップで祝杯を上げましょう。スリランカの名高い紅茶産業では、19 世紀の取引方法を 21 世紀のデジタルイノベーションに移行させ、大打撃となる新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) による休業の恐れから逃れることができました。

業界のリーダーらが迅速に導入したのは、バーチャル電子オークションシステムです。これにより、世界中で人気のある紅茶の購入者と出品者が、安全に離れた場所でソーシャルディスタンスを保てるようになるのです。

購入者も出品者も、いつも混雑しているオークション会場に入れない状態となっていましたが、クラウドの迅速性と安全性により、ビジネスを継続させ業界の機能を維持できるようになりました。その結果、紅茶の栽培や生産、輸出に携わって生計を立てている約 200 万人の人たちを守ることができているのです。

イギリスの植民地時代にセイロンとして知られていた熱帯のスリランカでは、約 150 年前の東インド会社の時代から高品質の紅茶を栽培しており、現在も世界最大級の紅茶生産国となっています。

この地では、茶葉の摘み取りや選別、加工、等級分けといった作業で生活が成り立っています。世界中の人にチャイやアールグレイ、イングリッシュブレックファースト、オレンジペコといった種類の紅茶を日々飲んでもらうことが、この地域の経済と雇用には欠かせないのです。

こうした状況をすべて維持するため、この数百万ドル規模の産業では Colombo Tea Auction を実施しています。これは、同国の首都で毎週開催されるイベントで、ルールと手順は 1880 年代と 1890 年代に最初に策定されて以来ほぼ変更されていません。

これまでは、高品質のセイロン紅茶を競売に出し輸出する作業は、騒がしくて肉体的にも大変なことでした。入札の声が響き渡る劇場のような 3 つのオークション会場には、何百人ものブローカーや関係者がすし詰め状態になることも多く、そこで多数の人が紙に数字を書き留めていました。

このような光景が見られたのは 3 月中旬までのことです。イベントが終了したのは、時代遅れや非効率だとみなされたからではなく、まさに健康と安全のためです。

スリランカの紅茶事務官であるジャヤンタ エディリンゲ (Jayantha Edirisinghe) 氏は、「COVID-19 のパンデミックがスリランカにも襲いかかりましたが、伝統的な紅茶オークションではソーシャルディスタンスや他の健康ガイドラインに従うことができなかったのです」と振り返ります。

オークションのスケジュールは 2 週間停止となりました。破滅的な経済ショックが迫り来る可能性もあったため、スリランカ紅茶委員会と同国紅茶貿易協会では、スリランカに拠点を置くマイクロソフトのパートナーである CICRA Solutions に声をかけ、これまでのシステムの精神と手法を取り入れた高速なデジタルシステムを構築してもらうことにしました。

CICRA Solutions にはすでに紅茶産業界での実績がありました。複雑な紅茶仲介業務の自動化や、紅茶委員会のバックオフィスシステムの最新化を手掛けたことがあったのです。今回はパンデミックの悪化により、オークションのプロセス全体をデジタルトランスフォーメーションしなくてはならない状況でした。

CICRA Solutions では、マイクロソフトの専門家による指導も受け、2 段階のアプローチを進めることになりました。最終的には長期利用できる高度な電子オークションプラットフォームを開発するのですが、まずは重要な第 1 段階として、最小限存続できる製品 (MVP: Minimum Viable Product) に向けた MVP ソリューションを迅速に開発し、事業継続性を再確立しました。

現在、売買は Microsoft Azure 上で安全かつ確実に行われており、業者も自宅やオフィスからオンラインにて入札しています。初回の電子オークションは需要も高く、順調に終了しました。

CICRA Solutions でエンジニアリングマネージャーを務めるブディカ ガヤン氏は、「私たちの誰もが、非常に困難なプロジェクトだと感じました」と語ります。「製品を完成させ、完全な開発ライフサイクルを管理するまでたった 6 日しかありませんでしたから」

コロンボ周辺では移動制限もあったことから、「チームメンバーは全員自宅で作業し、成果を出しました。Microsoft Teams があったので自宅で作業が行えたのです」とガヤン氏は述べています。

●新システムの構築にあたって

「データベースのホスティングには Azure SQL サービスを利用したので、迅速に開発しながら設定も容易に進められました。パフォーマンスの要件に応じてサーバーをスケールアップできたのも良かったですね」とガヤン氏は語ります。

「アプリケーションサーバーには Azure App Services を利用しました。UAT 環境と本番環境は、別々のデプロイメントスロットで管理されています。アクセスを制限する必要があったため、Azure CDN とジオフィルタリング機能を使いました。本番運用中は、システムのパフォーマンスを Application Insights でモニターしましたが、製品のスケーリングで必要な行動を取る際にとても役立ちました」

「長期的な目標は、このソリューションの開発をさらに進め、AI と分析機能を備えた世界規模の紅茶および商品オークションソリューションとして世界で販売することです」

紅茶産業各方面の関係者は、インパクトのあるソリューションを迅速に開発した CICRA Solutions を称賛しています。

セイロン紅茶貿易協会で対策本部を率いているアニル クック (Anil Cooke) 氏は、電子オークションソリューションにより「スリランカの紅茶産業で働く約 200 万人の人々が COVID-19 による休業の影響を受けずに済むようになり、彼らの生活も一変しました」と述べています。

「電子オークションは、非常に競争力があり意味のあるものですが、1 週間足らずで立ち上げました。これには、超人的な努力と熱心さ、そして関係者たちの強力なコラボレーション、そして CICRA Solutions が休むことなく非常に賢明に作業を続けてくれたからこそ築き上げたものです」とクック氏は語ります。

Talawakelle Tea Estates PLC で副本部長を務めるイーシャン ペレーラ (Eashan Perera) 氏は、今回の移行が「まさに大いなる幸運であり祝福」だとしており、これによって「パンデミックで他の多くの産業が不振に陥っている中、農場部門に必要なキャッシュフローを生み出しました」と述べています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?