アセンション：ブレイブ・ニューワールド・オーダー

あらすじ：性別や年齢を自在に決めることが出来る近未来、ウエスト・イングランド下院議員のフレデリックは、ある日IDを抹消されてしまう。性別や年齢で自己を判断できないため、自分は本当に自分なのか、疑念に蝕まれたままフレデリックは全てを失う。やがて、それが倫理委員会の上位意思決定機関『オーバーロード』が画策した陰謀だと掴むも、希釈された意思は長く持たず、『オーバーロード』の狙い通り、集合意識に取り込まれてしまい、個人としてのフレデリックは消滅してしまった。しかし、フレデリックが女性だった頃、不義の子として産み落とされたアルバートが、フレデリックの消滅と入れ替わるように目を覚まし──…

解脱(アセンション)した父の声がこだまする。歓喜、悲嘆、憤怒、快楽。

父はあらゆる意識と一体化した。個を棄て、物理体から解放され、次のステージへと人類を昇華(アセンション)させることこそが『オーバーロード』達のねらいだった。

揺籃から解き放たれ、ぼくは、父の声を聞いた。肉体という枷から解き放たれた声は、あらゆる感情を剥き出しにしていた。──『オーバーロード』達への憎悪も。

ぼくはそれに感化された。

【続く】