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影アナを熱く語ってみる。


地味な仕事、名前も出ない仕事、
「誰の声?」
なんて思われることは少ない仕事。

でも私は大好きな仕事の1つ。

影アナウンス。

コンサートなどで開演前に
「携帯電話をお切り下さい」
などの注意事項が流れるアレです。

わたしは観客としてコンサートを聴くときも
影アナがとても気になる人です。

1ベル

影アナ

本ベル

客電(客席のあかり)が暗くなり

舞台があかるくなる

この流れが
開演直前のコンサートの空気を作り、

その空気が
客席にいる人たちを日常から解き放し、
舞台上の世界へ誘(いざな)うのだと思うのです。

その空気がうまくつくれると、
観客は、その世界に入り込みやすくなります。

それによって、
TVやネットでは得られないような
生のステージに足を運んだからこそ
体感できるもの
が大きくなると思うのです。

舞台上の世界にすっかり入り込むと、
終演してから日常に戻ってきたときに満足感や幸せな気持ちで
満たされると思うのです。


私は、影アナをするとき、
会場にどのくらい自分の声が響いているのか、
少し聞こえる方が好きです。

ときどき、全くわからないホールもあります。
観客の前に姿を現さない影アナでも、
まったく会場の様子がわからないのはとてもやりにくい。

それは、会場の空気を感じて、
会場の空気に調和させるようなアナウンスをしたいから。

なにより、調和できたと感じられたときは、
私自身の気持ちが高揚するから。

5分前の1ベルがなって、
一呼吸おいて影アナウンスを始めると、
大抵の場合は、すーっと観客が静かになっていきます。

その雰囲気を感じながら。
スピードをごくわずかに変えてみたり、
声の音色をごくわずかに変えてみたり、
半分無意識に、半分意識的に行なっています。
客席の空気を感じながら。

もちろん、静かにならないときはならないときも、
客席に座っている人の注意をひきつけられるようなスピードにしたり、
声の方向性を調整したりしながら、
伝えたいことが
(主に携帯を切ってね〜ということですが)
しっかり伝わるように工夫しています。

我ながら、「職人か!」とつっこみたくなるような感覚です。

そんなことをバックステージで思いながらアナウンスしています。

プロのオーケストラの公演も、
プロの音楽家のリサイタルやコンサートも、
コンクールの全国大会も、地方大会も、
セミプロの方々のコンサートも、
アマチュアの方々の発表会も、
どんな公演でも私の思いは同じ

影アナを音声配信してみたので、
影アナについての思いを書いてみたら、

「影アナをこんなに熱く語る!?」
となんだか少し恥ずかしくなってきました。

でも、これから舞台にあがる人たちが輝く空気をつくること。
影アナの大きな役割だと思うのです。

だから、公演を主催する方にお願いしたいこと。

プロの公演はもちろんですが、子どもの発表会であっても
公演を主催する方は影アナも演出の1つと考えて頂きたいこと。
(会場の音声さんも、そういう意識で音を調整してくださっているはずです。)

そのためには安易に「自称プロ」を使わないこと。
「アナウンサー」と名乗る人にも色々な人がいます。
姿の見えない声だけの影アナは粗(あら)が目立ちます。
だから、発声や発音があまり良くない方、
イントネーションが不自然な方が影アナをすると、聞きづらいです。
場合によっては、どんなに良い公演でも、全体の公演のイメージを下げてしまいます。

でも予算がない…
そんな時は、あえてプロを使わない方がましだと思います。
子どもの発表会なら、手伝ってくれる保護者の方や、年上の兄弟姉妹、
丁寧にしゃべってくれる仕事仲間、
そんな人の方が良いです。
なぜなら、自称プロで影アナに向かない人は「上手そう」に読もうとするので全く「伝わらない」上に、アラが耳障りになります。
プロじゃ無い人ほど、丁寧に伝えようとするので、上手じゃ無くても素直に聞けるのです。発声発音があまりよくなくてもあきらかに素人さんなら「上手なふり」はしないので、聞きやすいのです。

今度、どこかの会場で影アナを耳にしたら、こんな話を少し思い出して聞いて頂けたら面白いかもしれません。

書いてみたこと、発信してみたこと、 それが少しでもどこかで誰かの「なにか」になるならばありがたい限りです。