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週刊金融日記 第202号 早期教育の効果と副作用、日経平均株価のPERは民主党時代に戻った、麻布十番で天然トラフグ、ピルの副作用で病気になり性交渉に拒否反応、他

// 週刊金融日記
// 2016年2月23日 第202号
// 早期教育の効果と副作用
// 日経平均株価のPERは民主党時代に戻った
// 麻布十番で天然トラフグ
// ピルの副作用で病気になり性交渉に拒否反応
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 もうそろそろ、花粉の季節がやってきますね。抗アレルギー剤を飲みはじめた人も多いのではないでしょうか。僕も、そろそろ処方してもらってきます。

 さて、世間のスキャンダルへの反応を見ていると、考えさせられるものがあります。清原氏のように違法薬物を長年使用していても、世間の人はむしろセカンドチャンスを、などとやさしい言葉をかけているのに、何の犯罪もしていない、ベッキーさんや本当に素晴らしい政治家であった宮崎けんすけ議員たちが、たかだか結婚している人と、あるいは結婚しているにもかかわらず、セックスしたというだけで、社会的に抹殺されようとしています。
 恋愛工学を実践していく上で、今後もコンプライアンスを徹底しなければいけないのは言うまでもありませんが、我々はいつでも蜜壺自警団やチンポ騎士団の連中に後ろから刺されないように気をつけなければいけないということです。

「沈黙は金なり」

 いま一度、この言葉を噛みしめていきましょう。そして、真実は、このメルマガなどの秘密のスペースで、選ばれた人たちだけで語り合えばいいのです。世間がどうであれ、我々はいつも励まし合って、お互いに助け合いながら、がんばっていきましょう。

 今週も、多くの素晴らしい読者の投稿がありました。

―科挙とは特権階級を作るシステムです
―大企業orベンチャー論争について
―沈みゆく日本と海外移住について
―朝食不要論
―ピルの副作用で病気になり性交渉に拒否反応

 さて、今週は国公立大学の入学試験があります。
 受験とは、孤独な戦いです。最後は自分ひとりで答案用紙に向き合わないといけません。
 しかし、苦しいときに励まし合ったり、わからないことを教え合ったりする仲間がいれば、受験勉強はずいぶんと違ったものになるでしょう。いくつかの名門高校が、素晴らしい進学実績を残し続けているのは、入り口の偏差値が高かったり、授業がいいだけではありません。こうした、皆で助け合い、学校全体でいい実績を出そうと一丸となってがんばるという文化があるからです。同級生は、蹴落とさなければいけないライバルではなく、受験をいっしょにがんばる仲間なのです。受験は個人戦ではなく、団体戦です。
 恋愛も同じでしょう。受験生が最後には、ひとりで答案用紙に向き合わなければいけないように、恋愛でも最後には1対1のアポに向きあわなければいけません。そういう意味で、恋愛は個人戦です。しかし、こうしてみんなで励まし合いながら、これまで切磋琢磨してきたからこそ、僕たちは最後にはいい結果を出せるのです。だから、僕は言いたいのです。

「恋愛は、団体戦だ」

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.早期教育の効果と副作用

 現代受験工学の最前線の中編として、今回は、このテーマを考えてみたい。早期教育の効果と副作用について書こうと思う。
 まず、議論の前提として、早期教育の定義を書いておこう。ある意味では、小学4年生ぐらいから本格的な勉強がはじまる中学受験は、早期教育とも言える。また、いまでは私立の中高一貫校はどこも文科省の高校指導要領を高2までに終わらせて、高3は大学入試のための演習としている。これも、ある意味では早期教育だ。
 しかし、本稿では、こうしたことは早期教育とは呼ばないことにする。あまりにも一般的になっているからだ。本稿では、物心ついた頃から、将来のエリートを目指して行われる本格的な一連の英才教育を早期教育と呼ぶことにする。フラッシュカード(幼児の目前でカードを高速で裏から表にめくって大量に見せることで膨大な漢字や英単語などを暗記させる方法)などによる幼児教育や、幼稚園からはじめる公文教育、難関小学校に入学するためのいわゆるお受験のための教育などの一連の知的訓練、過度な先取り学習を、本稿では早期教育と呼ぶことにする。
 ところで、書店に行って、慶應義塾幼稚舎、聖心女子学院初等科、雙葉小学校、白百合学園小学校などの入試問題を見ると、かなり本格的な知的パズルになっていることがわかると思う。中学受験と同様に、これらの筆記試験も、幼稚園児に本格的なトレーニングを受けさせなければ突破することは不可能であり、そういった塾の月謝は月に10万円を超えることもめずらしくない。

【早期教育に対する僕の個人的な意見】

 まず、僕は、早期教育の効果については否定的だったことを述べておこう。それは個人的な体験による。
 僕は公立のふつうの小学校に通っていたのだが、教育ママの子がクラスにいて、彼女は、僕たちがファミコンをしている間もずっと習いごとをしていた。確かに成績も良かったのだが、僕は小学5年生から塾に入れられ、勉強をはじめたら、あっさりと数ヶ月ぐらいで僕のほうができるようになってしまった。ちなみに、僕は塾に行くまでは、ふつうの公立小学校で成績は真ん中ぐらいだった。幼心に、習いごとに何年も行くのって意味があるのか、と思ったのだった。
 次は大学受験のときだ。僕は高2の秋になっても、ふつうに公立に行っていた人たちが中2ぐらいでやる因数分解などもあやふやだった。中学入学以降、主な活動の場をゲームと漫画に移していた僕は、勉強をしてこなかったからだ。
 僕が、自由な校風の中高一貫校に否定的なのは、多分にこうした個人的な体験による。学校はサービス業である以上、生徒の「学力」の向上にコミットしなければいけない。しかし、授業料だけもらって、授業中に漫画を読んだりゲームボーイに夢中になっている生徒、宿題をやらない生徒を放置し続けるというのは、悪徳業者と言う他ない。僕は高3になって、授業にはまったく出席せず(それまでの積み重ねが前提になっている授業で勉強するのは著しく効率が悪い)、結局、ひとりで参考書を買って勉強せざるを得なかったのだ。つまり、授業料は全て無駄になった。しかし、フタを開けてみたら、中1からコツコツと塾に通って勉強していた同級生をかなり追い抜いていた。またしても、早め早めに勉強するって意味無いじゃん、と思った。

 さらに、僕が早期教育や先取り学習に否定的になったのは、中学受験塾で講師をしていたときのことだ。僕は5年生の下から中の上ぐらいのクラスを担当することが多かった(一部の中学受験塾の内情は、下のクラスは大学生のアルバイトが授業をしているということだ)。こうした中学受験塾で、4年生までトップを走り続けるのは、早期教育を行っている家庭が多い。小さい頃から公文などに通わせ、さらに、思考力を養い知能指数を引き上げると謳う低学年向けの塾に通わせている。家でも、親がしっかりと勉強のめんどうを見ている。
 しかし、こうした子供の多くが、5年生の中盤ぐらいから、問題が難しくなってきて単純なパターン認識だけでは解けなくなると、どんどん失速していく。そして、それまでずっと遊んでいたが、5年生ぐらいから塾に入ってきて、勉強に新鮮味を感じやる気が溢れている子供がぐんぐん伸びて、上位クラスに上がっていく。5年生の秋ぐらいの中学受験塾の真ん中ぐらいのクラスは、塾に入って間もないが素質のある子供が上のクラスに駆け上がっていき、逆に、これまでずっとトップを走っていた早期教育組の子供たちが下のクラスに転がり落ちていく、そんな子供たちの人生が残酷にもクロスする場所だった。
 僕はこうした現実を目の当たりにして、中学受験は、身もフタもないことを言えば、小学4年生ぐらいまでの勉強はほとんど何の役にも立たず、出来る子は出来る、出来ない子は出来ない、というそういうものだと思った。だから、中学受験の勉強は、5年生からはじめれば十分だと確信した。

【日本人のノーベル賞受賞者のスペック】

 そして、大人になってからの経験もある。幸いにも、僕はアカデミックな研究でもそこそこ成功し、ビジネスでもそこそこ成功し、アカデミック、ビジネス双方で成功した人たちのコミュニティに属している、あるいは属していた。そこで成功した人たちを見ると、ビジネスの世界ではもちろんのことだが(中卒から海外の名門大学MBAまで経歴は多種多様)、学者の世界でさえ、小さいころから塾で勉強していたような人は見かけないのだ。
 たとえば、最近の日本人のノーベル賞受賞者を並べてみても、このことははっきりする。

梶田隆章(2015年ノーベル物理学賞)ニュートリノ振動の発見
 東大宇宙線研究所所長
 出身大学:埼玉大学
 生い立ち:埼玉県の農家の家に生まれ、自然の中で走り回っていた。県立高校での成績は中の下程度で埼玉大学へ進学。古文と漢文がまったくできず、地学が好きだった。大学では弓道に熱中し、あまり勉強しなかった。東大の大学院の入試はまったく解けなかったが、なぜか合格したという。

大村智感(2015年ノーベル生理学・医学賞)微生物を使った新規化合物による感染症の撲滅
 北里研究所所長
 出身大学:山梨大学
 生い立ち:農家の家に生まれ、高校時代はスキーに熱中し、国体にも出場した。県立高校卒業後に山梨大学に進学。卒業後、夜間高校の教師をしていたとき、生徒たちが仕事を終えたあとにも勉学に励んでいる姿に心を打たれ、自分も研究に励もうと東京理科大学の大学院に進学した。

中村修二(2014年ノーベル物理学賞)高輝度青色発光ダイオードの発明
 米カリフォルニア大学照明・エネルギー電子工学研究所所長、ベンチャー企業経営
 出身大学:徳島大学
 生い立ち:四国のサラリーマン家庭に生まれ、海や山で遊ぶのが好きだった。高校時代は物理と図工は得意だったが、それ以外の科目の成績は悪く、徳島大学に進学。その後、四国の中小企業に就職した。

赤崎勇(2014年ノーベル物理学賞)窒化ガリウムの結晶化についての研究
 名城大学窒化物半導体基盤技術研究所所長
 出身大学:京都大学
 生い立ち:中学時代は学徒勤労動員のために工場勤務を余儀なくされ、勉学に励むことができなかった。空襲で一命を取り留め、紆余曲折を経て京都大学に進学。

天野浩(2014年ノーベル物理学賞)窒化ガリウムの結晶化についての研究
 名古屋大学教授
 出身大学:名古屋大学
 生い立ち:技術者の子供に生まれ、小学校ではアマチュア無線に熱中した。静岡の県立高校から名古屋大学へ進学。就職しようと迷っていたが、指導教官の赤崎教授に説得され、大学院に残ることに。赤崎教授の研究室の最初の学生であった。

山中伸弥(2012年ノーベル生理学・医学賞)様々な細胞に分化する能力を持つiPS細胞の作成
 京都大学iPS細胞研究所所長
 出身大学:神戸大学
 生い立ち:両親がミシン部品の町工場を営んでいたため忙しく、幼少期は鍵っ子だった。塾にも行ったことがない。しかし、そのおかげで親からほうっておかれ自由だったため、いつも子供だけで好きなことができたのがよかったと回想している。大阪の公立高校で勉強をがんばり、神戸大学の医学部に進学。

 このように並べてみると、世界で最も認められている日本人科学者たちの誰もが、現代の受験エリートたちとは程遠い生い立ちをしていることがわかる。こうしたこともまた、僕を早期教育否定派、そして、先取り学習の効果にもかなり懐疑的にさせていた。
 日本人のノーベル学者たちを見ると、早期教育など関係ないどころか、むしろ有害に思えてくる。もちろん、彼らが子供の頃には、SAPIXも鉄緑会もなく、私立の中高一貫校もいまほど人気がなかった時代であったことは割り引いて考えなければいけないが。

【早期教育の効果はマダラ模様】

 このように僕は、早期教育についてはかなり否定的だったのだけれど、日本の「学力」最上位層の研究をはじめると、また、その評価を改めることになった。早期教育や先取り学習にも、確かに大きな効果が現れる可能性があるのだ。

 中学受験の最上位層、そして、大学受験の最上位層を見ると、明らかに、早期教育組が席巻しているのだ。
 彼らは偏差値の定義からして非常に数が少ないし、一部の学校の狭いコミュニティでかたまっているため、あまり目立たない。ほとんどのふつうの子供とは接点がない。最難関中学でも大学受験でも、大多数は合否を分けるボーダーライン上にひしめき合っており、それゆえにこうしたふつうの環境で育ってきた人たちが入学者の多数派を占めるため、東大でもマイノリティである。
 こうした最難関の学校でも確実に受かる圧倒的な「学力」を備えた子供たちの多くが、佐藤ママの本に書かれたような育成過程を経ているのは、前号で紹介した通りなのだ。

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『週刊金融日記 第201号 現代受験工学の最前線 前編』

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