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週刊金融日記 第420号 予想当てゲームとリスクマネジメントの違いを理解する、S&P500のPERは20倍超、政府要請によりレストラン紹介コーナーは休止、外出禁止令の中での恋愛活動、他

// 週刊金融日記
// 2020年5月18日 第420号
// 予想当てゲームとリスクマネジメントの違いを理解する
// S&P500のPERは20倍超
// 政府要請によりレストラン紹介コーナーは休止
// 外出禁止令の中での恋愛活動
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 14日間の香港での強制隔離生活ですが、今日でめでたく12日目で、残すところあと2日になりました。なんか隔離と言うより、税務などでやらないといけない、しかし面白くない、それでいて神経使う仕事をたくさんやっていたので、むしろふつうに仕事でストレス溜まるなぁ、という感じです。香港の街の中心にいるので、世界中の美味しい食べ物がUberEatsなんかでスマホでピッとやれば届くんで、快適といえば快適な暮らしをしています。

★香港での空港でのPCR検査から隔離生活までの流れはこちらのスレッドを読んでください。

★毎日こんなもの食べてます。残った分は次の日の朝ごはん。

★今日は2回目のPCR検査です。10日後に再検査をするのは潜伏期で1回目をすり抜けるのを防ぐためです。しかし、これがあるので隔離義務期間にどっかで人と会って、万が一にもらってきた場合も引っかかり、そうなったら接触者はみんな検査されるし、隔離義務に違反したこともバレるのでかなりの抑止効果もあると思います。

 日本は、安倍首相の緊急事態宣言などに国民が応え、もともと公衆衛生に対する意識が高かったこともあり、自粛で人と人との接触が大幅に減り、見事に感染者数を抑えることができました。
 緊急事態宣言の前に、不幸なことですが志村けんさんが亡くなっており、小池都知事が都内の医療機関が溢れそうになっている状況で自粛要請をかけていたこともあり、この志村けん→小池都知事→安倍首相の緊急事態宣言という三段攻撃が、新コロに対して思いっきり決まったな、という感じです。おかげでかなり早期に収束させることができつつあり、経済へのダメージもかなり少なくなりそうです。夏の間に韓国や台湾や香港などの東アジアの感染症対策が進んでいる国や地域と同様に、しっかりと封じ込められる体制を作り、秋冬に新コロを復活させないことです。
 そして、期限が5月末までになっている緊急事態宣言を安倍首相がどうするかが注目されていますが、僕の考えはだいたいこのスレッドに書いてあるので興味のある方は読んでください。

★緊急事態宣言に関する僕の意見はこんなところですね。

 さて、新型コロナウイルス対策で経済活動の制限をすることに反対していた人たちが一番の論拠にしていたポイントである、景気が悪くなると自殺者が増える、という予想ですが、4月の統計では自殺者の数がびっくりするほど減りました。やはり仕事と学校がゆるくなり、家に引きこもっていてもいいんだよ、と社会から言われると自殺するような人たちは救われるんでしょうね。新コロ禍は大変で僕も一刻も早く人類がこの疫病を克服し元の経済活動ができるようになることを願っていますが、それにより現在世界で起こっていることは、大気汚染の大幅な改善、交通事故や凶悪犯罪の減少、自殺者の大幅な減少などであり、ちょっとうがったものの見方ですが、あれほど我々が大切にしていた経済とはいったい何だったのか、という気もします。

★この記事を書いた人が調べられた統計(過去5年分)では最大の減り幅です。この手の統計量で20%ダウンは尋常でない減り方ですね。

 さて、アメリカは新型コロナウイルス禍の対策に最も失敗している国のひとつとなっており、病院で新型コロナウイルスに感染していると診断されその後に死亡した犠牲者だけでもすでに9万人を超えており、感染が収まりそうにありません。一方で、この疫病が最初に発生した中国は早々と封じ込めてしまいました。この悲惨な状況で、トランプ大統領も怒りの矛先をどこかに向けないといけないわけで、当然のように中国政府にそれは向かっており、本日、なかなか衝撃的なニュースが流れてきました。

★半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)が、中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)からの新規受注を止めたそうです。

★TSMCからの半導体チップの供給がなくなればファーウェイは大変な痛手を被り、中国政府もそれを阻止するために、いろいろ抜き差しならないことが起こりそうな気配がしてきました。米中関係は非常に悪くなっており、ただでさえ新コロ禍でシュリンクしている世界経済は、米中の報復合戦というさらなるリスクを抱えることになりそうです。

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

- モバイルWiFiでオススメのものは
- 新コロに有効な薬剤を知るためのTIPSとTwitterでのクソリプにイライラしない方法について
- なぜキャバクラおっパブは店名公開されないのですか
- 満員電車の方がパチンコ屋より感染を広げるのでは
- 自粛反対派の人たちの意見について
- ロックダウンされ外出禁止令が出ている街に住んでいるのですが恋愛活動はどうしたらいいですか
- ニューヨークで非モテ日本人男子がアメリカ人白人彼女を作った方法

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.予想当てゲームとリスクマネジメントの違いを理解する

 僕は教育工学の本を書いているが、日本の大学入試に最適化された教育を否定し、欧米型の教育を良しとしているわけではない。日本のペーパーテストでいかにいい点を取るかを競い合う教育にもいい点はいろいろある。悪い点もある。たとえば、日本の偏差値教育からすっぽり抜け落ちている非常に大切な知性が「メタゲーム」に関するものだということは、これまでたびたび解説してきた。
 勉強ができるかどうかより、そもそも何を勉強すべきかを決めるほうが大切なのだ。それゆえに日本型教育で非常に優秀であった人たちも、ビジネスはもちろんだが、受験勉強とは似て非なるものであるアカデミックの研究が得意かどうかはまた別の話なのである。ぜんぜん違うゲームがはじまるからだ。

週刊金融日記 第395号 成功し続けられるかどうかは目的合理性とメタゲームと全体最適だと思った
週刊金融日記 第404号 メタゲーム的考察の重要性を学ぼう

 もうひとつ日本の教育に欠けていると僕が常々思っているのが、大学入試の数学でも扱いが軽い確率・統計分野とその応用であるリスクマネジメントである。しかし、リスクマネジメントと言っても何も難しい金融工学を学ぶ必要などない。ちょっとした確率計算と期待値だけわかればいい。今週号ではリスクマネジメントの簡単な考え方について解説したい。
 じつはちょっと地味なバックナンバーなのだが、すでに恋愛戦略での期待値(Expected Value、EV)について過去に書いている。これはあらゆることに使えるとても基本的な考え方である。

週刊金融日記 第48号 恋愛戦略のEV計算

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