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週刊金融日記 第334号 ビジネスも恋愛もパーセプションのゲーム、台風直撃で関西国際空港が麻痺し北海道は地震で全域停電、恵比寿でパリを思わせるビストロ、名古屋~栄プロトコル、他

// 週刊金融日記
// 2018年9月10日 第334号
// ビジネスも恋愛もパーセプションのゲーム
// 台風直撃で関西国際空港が麻痺し北海道は地震で全域停電
// 恵比寿でパリを思わせるビストロ
// 名古屋~栄プロトコル
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 マーケット・コーナーのほうにも書きましたが、台風21号が関西を直撃し関西国際空港が麻痺したり、北海道の地震ではいくつかの火力発電所が止まり北海道全域が停電するという惨事になってしまいました。果たして、それでも消費税は増税されるのでしょうか……。
 被災してしまった方にはお見舞い申し上げるとともに、一刻も早い復旧を祈っております。ふるさと納税は被災地に振り向けましょう!

●関空重要施設、台風21号で機能せず 地下配置で浸水
https://mainichi.jp/articles/20180910/k00/00e/040/143000c

●冬までに泊原発を再稼動して命を守れ
http://agora-web.jp/archives/2034628.html

『週刊金融日記 第299号 ふるさと納税すごい!』

 ビジネス情報誌週刊SPA!での映画評論で『愛しのアイリーン』を紹介したのですが、原作が連載されていた1995年って、つい最近のようですけど、そのころの中国のGDPって日本の足元にも及ばず、ほとんど見えないレベルで、アジア全部足しても日本のほうがはるかに大きかったんですね。いやはや隔世の感があります。それで、思い出すと、そのころに大前研一さんとか賢い評論家の人たちがこのままでは日本は落ちぶれる、落ちぶれる、とみなが同じようなことを言っていたんですけど、本当にそのとおりになったな、と思います(笑)。株価や為替の予想は難しいですが、マクロ経済の大きな流れはかなりの精度で予測できるのですね。

●農家の非モテ男と18歳フィリピーナの壮絶な愛の物語
https://nikkan-spa.jp/1506868

●世界の名目GDPランキング 1995年
http://ecodb.net/ranking/old/imf_ngdpd_1995.html

 今週も興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

-家賃は月収の何割程度が妥当でしょうか
-「ネットで稼ぐこと」をテーマにしてほしいです
-名古屋~栄プロトコル 栄周辺編
-どうすれば勤め人は上司を超えていけるのですか
-お酒を飲まずに恋愛活動をするには

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.ビジネスも恋愛もパーセプションのゲーム

 ふろむださんの本を、メルマガ読者が面白いと言っていたので、読んでみた。SNSが流行る前のブログ全盛時代、彼の『分裂勘違い君劇場』というブログは、僕のブログと並び、最もPVとはてブ(当時はTwitterのリツイートよりFacebookのいいねより、はてなブックマークにブックマークされることが重要だった)を集めていたブログのひとつで、やたら長文の彼のエントリーを僕もよく読んでいたからだ。
 ダイヤモンド社から出ているので、すでにうちにあった(インフルエンサーになると、本などはあわよくば紹介してもらおうと出版社からたくさん送られてくる)。

『人生は、運よりも実力よりも勘違いさせる力で決まっている』ふろむだ
https://amzn.to/2QeMiJ7

 恋愛工学を学んでいれば明らかなのだが、女はイケメンや金持ちが好きなようで、そうではなく、他の女にモテている男が好きなのだ。イケメンや金が「実力」だとして、実際のところ、確定申告書や財産債務調書をふたりで確認しながらデートするわけではない。また、見ればわかると思うかもしれないが、イケメン度とて、しょせんは主観的なものだ。だから、女はこうした「実力」を、ちょっとしゃべってみた「感じ」や、知り合いの他の女からの評価を基準に推し量ろうとするのだ。そして、そうした彼女たちのいい男を見つけるためのセンサーは、人間の本能がほぼ完成した旧石器時代のサバンナの環境に最適化されてしまっているので、現代社会の環境の中ではバグだらけのポンコツというわけだ。恋愛工学はそこのバグを上手く突いていくための一連のテクノロジーだ。
 この本は、ビジネスでも大切なのは真の実力ではなく、パーセプション(Perception)なのだとわかりやすく書いている。

『週刊金融日記 第327号 世の中のほとんどのものはPerception(=認知、認識、人がどう感じたか)のゲーム』

 恋愛工学では、さも自分は他の女からもモテモテで「余裕」がある男であると演じることが重要である。テクノロジーの力で女に「実力」を勘違いさせ、股を開きやすくする。そして、皮肉なことに、いったんこの成功ループ(=モテスパイラル)に乗ってしまえば、あとはふつうに振る舞っているだけで女が切れなくなる。もはやそれは錯覚でも何でもなく、真の実力だからだ。
 本書の要旨をかいつまんで紹介すると、恋愛工学で言うモテスパイラル理論のキャリア版、悪く言えば詐欺師版のことだ。あたかも有能な人物のように振る舞い、心理学的な錯覚を利用して、他人を出し抜き、キャリアを有利に進めていくのだ。そこでふつうの人ができないような経験を積めば、実際に実力そのものが上がっていく。そして、その実力はさらに次のよりよいオポチュニティを呼びこんでくる。このスパイラルこそが成功者を作り出すものなのだ。
 最近大量にいるネット詐欺師の場合は、SNSでフォロワーを買ったり、借金したり仲間内で金を集めて高額なもの(たとえばフェラーリ)を借りてきたりして、自分が成功者だと振る舞う。そして、こんなに成功したかったら、俺の高額の情報商材を買え、と。こうしてひたすら金をだまし取っていく。そして、こうして一定額以上をだまし取ってしまえば、彼はもはやフェイク金持ちではなく、実際に本物の金持ちなのである。もはや、仲間内から金を集めて、レンタカーからフェラーリを借りてくる必要もなく、自分の金で買えばいい。そして、インチキ情報商材はもっと売れる。
 ところで、ふろむだ氏はこのように人をある意味で騙すことによって引き上げられた自分の価値を「錯覚資産」と呼び、それに騙されるな、というややネガティブなトーンでこうしたメカニズムを描いている。しかし、この錯覚資産とは、マーケティングの世界ではブランド力のことに他ならない。また、恋愛工学でもモテる男のように振る舞うテクノロジーが倫理的に悪いと考えられてはいない。もちろん、情報商材屋のようなあからさまなものは、さすがに……、という気もするが。
 ちなみに、ぜんぜん話が変わるが、僕を含めて「まともな」ビジネスマンは、やはり倫理というものがあり、たとえそれが合法で儲かるとしても情弱から金を毟りとるようなビジネスはやらないものだ。しかし、経済学で考えると、そうやってまともな人がこういうビジネスに参加しないために、まともでない詐欺師にとってはこの市場がブルーオーシャンになり、ますます簡単に儲かってしまうようになるのだ。これは、ミクロで個人が社会を良くしようと思って行動しても、マクロでは必ずしもそうはならないことの典型だと思われる……。

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