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第五十四話【餅米】(Vol.531-540)

Vol.531
年末はバタバタする。
年始のスケジュールを決めたり
大掃除したり
そして、大イベント!

餅つきである。

そんな週末がやってきた。

朝からどこかワクワクする。

そういえば、餅なんてついたことがないな?
ボクが幼児の頃、母の親戚一同が集まって
していた記憶がある程度だ。




Vol.532
管理員のおっちゃんが忙しそうに
道具を準備していた。

石臼に杵、
横にはドラム缶に湯をたっぷりと沸かしている。

薪のパキパキなる音が心地よい。
木の焼ける匂いがテンションを上げてくれる。




Vol.533
朝食を終えると
子供たちがおっちゃんの周りに群がる。

そう。
この日は特別に火遊びが許されているのだ。

薪をくべるだけなのだが、
これが実に楽しい。

ドラム缶に薪をぶち込んでいく。
入れた瞬間に

パチ・パチと音が響き
煙が上がる
それがまた心地よい。




Vol.534
「何するん?何するん?」
幼児さんも外に出てきて
気になる様子。

おっちゃんが
「悪い子をこの中に入れるや」と

一歩間違えたら
マジ虐待?
(昭和なら“躾“なんでしょうが)
とも言えることを言いながら

幼児さんは
キャー と言って走り回る。

それもまた可愛い。




Vol.535
学園の餅つき大会(勝手に命名)は
めちゃくちゃゆるい。

“今から始めます“
みたいな会ではなく、
準備ができたら始めていく。

そこへ自然と人が集まって
盛り上がり、自然に終わるというものだ。

人の賑わいで人が集まる
ゆったりとした生活の流れの中で
行われる行事なのだ。




Vol.536
沸いた湯のうえに
蒸篭を置く。

餅米が蒸気を巡って
蒸されていく。

パチパチ
と時折なる薪をBGMに

ボクらはまった
餅米が蒸しあがるのを

「よっしゃ。ええやろ」

おっちゃんが蒸篭を一つ取り上げると
そこにはツヤッツヤの餅米が
白く光り輝いていた。




Vol.537
白く輝き立った 餅米を
ガサっと 手で掴んだと思うと
口へ運んだ おっちゃん。

びっくりした。

「うん。ええ感じや」

っておっちゃん!
(めっちゃうまそうやん!食べてみたい!)

そんな衝動が心を駆け巡る。

「ボクも食べていいですか?」

「ええで」

おっちゃんは優しく頷いた




Vol.538
蒸したての餅米を手に取って
口に運んだ。

ふんわりと湯気がたち
口の中でハフハフ

甘い香りと
もっちりとした弾力が口の中に広がった。

「おっちゃん!ういまいっす」

「そやろ、これに塩をつけたらもう最高やで」

ニカっと白い歯を見せておっちゃんは笑った。




Vol.539
おっちゃんが
臼に餅米を移す

湯気が立ち上がり
ホクホクの餅米が光り輝いている。

「よっしゃ、やろか」

おっちゃんは気合いの掛け声で
まわりにいた職員が杵をもつ。

餅つきはすぐに餅米をつくのではない。
ある程度、杵ですり粘りを出して
一塊にしてからつきだすのだ。




Vol.540
「よっしゃ。これぐらいでええやろ」

おっちゃんがGOサインを出した。

「わしがやり方見せるからよーみとけよ」
おっちゃんからスタートだ

周りで見ている子供たちも
うんうんと頷きながら
餅つきショーに期待していた。

よっ

掛け声と同時に杵が高く上がった

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