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第四十一話【休暇】(Vol.401-410)

Vol.401
「いやいや。今日は十分な仕事したよ。なんかあったら聞くから、ゆっくり休み。呑んでるやろし。しんどいよ。俺もそーやったもん」

ケンタ兄の優しさに胸が熱くなった。
「ありがとうございます。では、甘えさせてもらいます」

頭を下げてボクは
少し早めに仕事を上がらせてもらった。




Vol.402
ボクも、ケンタ兄みたく
この思いを次に繋いでいける職員になりたいと改めて思った。

ちょうど夕暮れどきと重なり
夕陽が眩しかった。

明日の休みを今から楽しもうとしている酔っぱらいが一人
黄昏ていた。

ボクはそのまま
バタンQで布団になだれこんだ。

こうして辞令交付式が終わった。




Vol.403
気がつくと夜中の2時。
マジか。

ガッツリ寝ちまった。
お腹がすいたし、
汗臭い。

流石に風呂には入れない。
静まり返った職場で、
いかにすごすかを考えた。

(コンビニに行こう)

それしか残された道はなかった。




Vol.404
薄暗い廊下を抜けて
階段を降りる。

保育園一階まで降りると
シンと静まり返ったホールに
初代の自画像が
どかーんと掲げられていた。

目があまりにもリアルで
どこから見ても
目が合うのだ。

“どこへ行くのだ“
と心に響く声に

「コンビニに行ってきます」と
こっそり答えた。




Vol.405
シャッターが上がるときの音が嫌いだ

何か悪いことをしている気になる。
(やましいとはないのだが)

潜って通れる隙間さえできればすぐに
シャッターを降ろすボク。

小心者だ。

施設の目の前にあるコンビニが
オアシスに見えた。




Vol.406
眩しい光が目を圧迫する

深夜になると
人もまばらで
お弁当も惣菜も減りつつある。

(仕方ないな)と
思いつつ

呑み直しの儀式として
麒麟淡麗極生500ml×2
をカゴに入れて

ポテチ
焼きそば
地鶏の炭焼き(真空パック)
を購入。

スーパーで購入すれば1000円までで納まるのだが
仕方ない。





Vol.407
支払いを済ませたボクは
少し散歩することにした。

ちょうど施設の近くには神社があって
わりと大きい。

地域の憩いの場だ。

子供たちとも遊びに来る。

ベンチに座ると
ふと1本呑みたくなった。

(やるか)

プシュ

いい音が深夜の公園に響く。
ハタから見たら不審者マチガイナイ!




Vol.408
見上げると
街灯に小さな虫が2匹飛んでいる

ときに
コツンコツン
と音を立ててアタックしている

(何をしているのだろう)

灯りに向かう習性なのだろうが
その意図はなんなのかと思いながら
発泡酒を流し込む

見ているうちに
何度ぶち当たってもやめない姿に

“チャレンジ精神“を見出した




Vol.409
“チャレンジ“
ふとそんな言葉が
ボクの頭をよぎった

今日の辞令交付式を終えて
ボクは何を誓ったのか。

そうだ

“子供たちと一緒に歩んでいく“
ことを誓ったのだ。

これがチャレンジなのだと
言い聞かせて
1本呑み干し
ベンチを後にした。

帰りに追加で酒を購入したことは
言うまでも無い




Vol.410
部屋に戻って
テレビ灯りを頼りに
ポテチを食う。

この背徳感がたまらない。

テレビは深夜の映画がやっていた。

特にこれと言ってどう?
というものではないが、
BGMというか
酒の相手に流しながら観て過ごす。

酒の力も借りて
段々と眠くなってきた。
“微睡“に至福を感じたボクだった。

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