体と心の健康について考えてみました

体の健康って、イメージしやすいですよね。毎年健康診断する方も多くいらっしゃいますし、健康状態が数値で現れるので、自分が今どのような状態で、どうすればいいのか、というのもなんとなくわかるような。例えば、体脂肪率が25%でちょっと太り気味なので毎日ジョギングをしよう、血圧が130越えたので塩分控めの食事にしよう、とか。

では、心の健康ってどうなんでしょう?数字で測れるのか、よくわからないのでググってみたのですが、出てくる結果は殆どメンタルヘルスの話題ばかり…心の健康が良くないことに対する情報が殆どです。どのような状態が健康な心を保っているのか、心の健康の定義って体ほどには明確になっていないように感じました。ちゃんと勉強すれば、脳内伝達物質のセロトニン取り込みを増やして云々、とか言えるんでしょうけど、それって体の健康の話になってしまっているようにも…

数字で心の健康を評価するのはちょっと無理そうなので、色々探してみたところ、仏教の考え方にヒントがあるかも、ということがわかってきました。
仏教では、命というのは肉体(=体)と心が共同作業するもの、と定義されているようです。体は物質であり、常に変化しています。どんどん壊れています。古い組織が壊れて新しい組織で前よりも強く大きくなることを成長、壊れる組織の量が新しい組織の量を上回るようになることを老化、と定義するということです。(仏教的には成長も老化も変化し続けていることであり大差はない、と考えるそうです。)今ある組織はどんどん壊れていくので、新しい組織を作らなければいけません。新しい組織を作るには材料が必要で、体の中に材料となる物質を取り込むことが必要です。取り込む材料の量が壊れる組織の修復に必要な分を上回る状態を「成長」、壊れる量と同じ量を取り込むことを「成長が止まる」、壊れる量を下回る量を扱うことを「衰える」と定義するとのこと。冷静に考えれば成長=善、老化=悪、ということではなくて、不健康な成長もあれば、健康な老化/衰えというのもありますね。

要はエネルギー保存の法則ですね。インプットとアウトプットを比較して、プラスだと成長、マイナスだと衰える、という概念です。では、この材料って何だと思いますか?仏教では「地」「水」「火」「風」の4元素というらしいのですが、元素として取り込むということは、要は「食べ物」である、と私は解釈することにしました(、細かく言うと酸素とか太陽光とかあるのかもしれませんが)。

体は食べ物でできている、そしてどんどん壊れる組織を修復するには食べ物を取り込む必要がある、と考えると、健康な体の作り方って、健康に体を壊しながら、健康に新しい組織を生成するということと言えるのでは。ジョギングや筋肉トレーニングは健康に良い感じがしますよね。これは「健康に体を壊していく」活動であり、体に良い食べ物(有機栽培の野菜とか無添加の食材とか)を取り込むことは「健康に新しい組織を生成する」ことにつながると。更に、細胞再生が活発に行われるのは睡眠中であると想定すると、「よく食べて、よく運動して、よく寝ると健康になる」という極めて自然な答えにつながります。

では、仏教において心はどう定義されているのでしょうか?肉体は単なる物質であり、やることなすことは全て感覚=心がやっている、という関係性があるということになります。食べたい、とか寝たい、というのは全て心が作用しているのです。心が体を支配し、命令をしているという関係です。一方で同時に心は体に依存しています。全面的に依存しながら命令しているので、心と体の間でトラブルが起こります。心がやりたいことは沢山あるのに体が応じない、無理にやると体が壊れる、ということも起こり得る、ということです。

心は、物質=体の法則とは違う動きをします。瞬間ごとになくなり、新たな心がすぐ生まれる。隙間なく心が生まれているそうです。心=感覚であり、感じるための対象・刺激が無いと心が生まれません。人間には絶えず対象・刺激が流れ込むチャネルがあります。いわゆる五感+頭(で考えること)の6つがそれに該当します。目に見えるもの、耳に聞こえる音、鼻に匂い、舌に味、触感、頭にアイデアや概念が絶え間なく入ってきます。これらの対象・刺激が心を作るエネルギーになる、ということです。

さて、心の生まれ方にもエネルギー保存の法則は適用されるでしょうか?インプットをこれらの対象・刺激と考えた時に、アウトプットは何か、というとインプットによって得られた思考・それによる行動や表現、ということになるのでは、と考えてみます。アウトプットにより心はどんどん壊れ、瞬時にインプットによって生成される、というループが繰り返されます。また、この仮定にたつと、アウトプットがその瞬間に同時にインプットになる、というループが形成されます。無限にループを繰り返しながら、さらに別の新しいインプットが入ってくるので心が成長していく、ということになります。この時に、このループの容量を越えて無理やりインプットを増やそうとしたり、無理やりアウトプットを引き出そうとすると、心が壊れてしまうのかもしれません。

健康な体を作るには、「健康に体を壊し」「健康に新しい組織を生成する」と想定をしました。これを心を生成する仕組みに適用すると、「健康に心を壊し」「健康に新しい心を生成する」ことが健康な心を作ることになります。つまり、適切に思考や行動・表現を行い、それらによる刺激や適切な新しい刺激に触れ続ける、ことが健康な心を作ることに繋がるのでしょう。
 

とはいうものの、適切な思考や行動/適切な刺激って何?どうやってスクリーニングするの?というところはさっぱりわかりません。現状では結局のところ、場当たりしかないように思えるんですよね。どなたか良い方法をご存知の方、ぜひご教示下さいませ。

参考文献:アルボムッレ・スマナサーラ, 欲張らないこと, サンガ新書, 2011年.

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