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家紋に込められた母の想い

嫁ぎ先で恥をかかないようにさ、ちゃんと準備したからさ、お父さんには内緒だよ。

今時嫁入り道具なんていらないし、そもそも都会のマンションじゃ狭くて箪笥なんて入らないよ。と伝えておいたが、冬用夏用の着物喪服一式と、それがちょうど納まるローチェスト型の桐箪笥を用意してくれた母。父には内緒ということは、そんなのいらないだろと言われたのかもしれない。

家紋はウチの家紋を入れたからね。黒留袖は柄の好みもあるし、必要になった時に嫁ぎ先の家紋をいれて用意したらいい、と母。親類一同集まる葬儀に、長男の嫁が嫁ぎ先の家紋が入った喪服を着ていたのでは、格好がつかないのだそうだ。”実家で用意してもらえなかったんだ”と思われるらしい。主人も私も田舎の出だが、家紋をみて、そこまで考える人が平成の時代(結婚当時)に果たしているのだろうか。と私は思った。


あれから十数年、一度だけ袖を通した。ありがたいことに、家紋がどうこう言ってくるような陰気な親類はおらず、両家共々仲良くやっております。


お母さん、見ていますか?こちらはみんな、元気でやっています。



都内で着付け師着付け講師をしております。この秋からは、七五三セレモニーサービスを新しくスタートさせるため、ただいま準備中。

こちらのnoteでは着付け教室に通ってくださっている生徒さんや、出張着付けのご依頼を頂いたお客様、着物好きなお友達などから見聞きした、着物にまつわるエピソードをご紹介していこうと思っています。

親から子へ、子から孫へ。受け継がれていく着物とともに私たちのもとに届いた素敵なエピソード。着物に興味がない方にも届いて欲しいな。


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