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『「介護時間」の光景』(69)「ラフ」「人々」「かげろう」。8.5.

   いつも、このnoteを読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして記事を、書き続けることができています。

 この『「介護時間」の光景』を、いつも読んでくださってる方は、「2007年の頃」から読んでいただければ、これまで読んで下さったこととの、繰り返しを避けられるかと思います。
(前半は、「2007年8月5日」のことを、後半に、今日、「2021年8月5日」のことを書いています)。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

自己紹介

 元々、私は家族介護者でした。
 1999年に介護を始めてから、介護離職をせざるを得なくなり、介護に専念する年月の中で、家族介護者にこそ、特に心理的なサポートが必要だと思うようになりました。

 そうしたことに関して、効果的な支援をしている専門家が、自分の無知のせいもあり、いるかどうか分からなかったので、自分で少しでも支援をしようと思うようになりました。

 介護をしながら、学校へも通い、2014年には、臨床心理士の資格を取りました。2019年には公認心理師資格も取得しました。現在は、家族介護者のための、介護者相談も続けることが出来ています。

「介護時間」の光景

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。

2007年の頃

 毎日のように、母の入院する病院に通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に義母の介護を続けている時には、将来のことは、少し先のことさえ考えられなくなり、ただ、目の前のことだけを見るようになっていました。

 そんな日々が2000年から続き、そして、2007年5月に、母は病院で亡くなり、大きな変化がありました。ただ、その頃、義母の状態が明らかに下降線になってきていたので、やはり、妻だけではなく、私も一緒に在宅介護を続けようと思いました。

 私が、何かを始めて、介護に関わる時間が減ったら、妻が過労死してしまうのではないか、と思ったからです。ただ、同時に、臨床心理士になるため、大学院受験の勉強も本格的に始めました。

 大きめの本屋に行き、何冊か参考書を買い始めた頃です。

2007年8月5日

「庭に出て、出かける前。
 靴ひもを結んでいるとき、今の生活に慣れてきたと、自分が思っているのが分かる。
 立ったら、立ちくらみがして、目の前が少し暗くなる。
 暑い。
 今日は、父の命日。亡くなったのは11年前だった。
 
 お墓は、静かだった」。


ラフ

 短い路線の終点が近づく。
 ホームの一番端のところ、ずっと白い線が続いているはずのところが、端っこだけ、なぜか角が削れて、ざらざらなコンクリートという感じがむきだしになっている。

 そこだけ、ただの白い線のところよりも、生きている、というのは言い過ぎだけど、なんだかいい感じの線に見えた。まだラフだけど、魅力的に見える線。


人々

 電車に乗る位置を、降りた時に出口に近いところになるように調整するつもりでホームを歩く。実は、けっこうな距離。
 うしろの方から、自分が歩いていくのと同じ方向へ向かう電車が隣のホームにやってくる。
 自分の視点から見て、斜め前にどんどん電車があらわれて、視界の中に大きくなっていく。

 向かいのホームには人がたくさん立っているけれど、その電車が進んでいって、その人達を、まるで消しゴムで消すように、電車が消していくように見えた。


かげろう

 ビルのかべにある大きな垂れ幕。
 宣伝のための巨大な短冊。

 風が吹いてきた。
 かなり薄いせいか、その風に垂れ幕が敏感に反応している。細かく振動するように揺れていて、陽炎で表面の文字が揺れているようにも見える。

                          (2007年8月5日)


 それから、義母の介護は続いた。心理学の勉強を始めて、2014年には、臨床心理士の資格をとった。2018年の年末に、義母が103歳で亡くなり、急に介護は終わった。「介護後の生活」になったが、体調が整わず、ようやく動き出せると思った頃に、コロナ禍になった。今も焦りと、怖さが続く。


2021年8月5日

 組織のトラブルのようなものには距離をとるようにしてきたのだけど、どうも巻き込まれそうで、力のない個人というものは、こんなに怖さを感じるんだ、と改めて思い、昨日の夜は、暑さもあって、よく眠れなかった。

 そういう時は、心理士としての原点を改めて思い出さないと、などと思う。

 この道を志し、歩み入ったならば、自分の中の知見(これはただの暗記でなく、自分の経験と知識に照合し、自分の中を潜らせて、自分のものとして納得し、使いこなせるものになっている)を豊かにするべく不断に努め、安易に自分の生の感情に自分を委ねるのではなく、考える、その結果生じる感情を大切にする、という態度を磨いていくことが求められていると思われるのです。

トラブル

 それは、もちろん、「介護者相談」に関わる組織ではない。「介護者相談」を続けている場所は、いつも恵まれていると思う。

 だから、そのトラブルは、別の場所の話なのだけど、こういうことが日常的な場所で、しかも長く働いて、辞められなければ、本当に「地獄」なので、組織というものを、もう少しでも居心地のいい場所にすることは、とても大切なことだと改めて思う。

 毎日、そうした大変な組織で働かれている方から見たら、とても生ぬるい話だと思うけれど、私は、これまで、とても恵まれていたのかもしれない。

 この本でも、「心理的安全性」が強調されていたけれど、本当にそうだと思うし、そういう部分では、心理職が貢献できるかもしれないとも思う。

自宅療養

 そして、新規感染者が増大する中で、基本は「自宅療養」という「政府方針」が発表されたらしい。

 こういう見出し↑を見ると、より怖くはなるものの、これから先は、個人的には、とにかく感染しないように、これまで以上に萎縮するような毎日になるかもしれない、と思った。

 そんな目の前が暗くなるような決意をしなくてはいけないなんて、いつの間にか、現実の社会も「地獄」のようになってしまったように感じる。

 それでも、この中で、やるべきことや、やれることは、やろうとは思うけれど、目の前に、ずっとしんどさがあるような毎日になってしまったのも事実だった。

暑さ

 今日は、なんだかやけに暑いと思ったら、35度以上になるかもしれないらしい。

 少し外へ出ただけで、暑くて、日差しがまぶしくて、空の青が強い。

 セミが鳴いている。
 玄関の引き戸にも一匹止まっている。その斜め上には、抜け殻があって、うちの庭から、毎年、何匹もセミが誕生しているから、今のこの瞬間にも、どの深さか分からないのだけど、かなりの数の幼虫がいるのだろうと思う。

 今日は父の命日だった。もう、25年前になる。あの時、62歳で父は他界したけれど、年数がたつごとに、まだ「若い」といってもいい歳だったと、思うようになる。

 病院に通っていたあの夏も、確かに暑かった。それだけは、ぼんやりと覚えている。



(他にも介護のことをいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、ありがたく思います)。



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越智誠  臨床心理士/公認心理師
おち・まこと。臨床心理士/公認心理師。元・家族介護者。専門は「家族介護者への心理的支援」。家族介護者への個別の『介護相談』の仕事をしています。介護に関しても、様々なことを、お伝えしたい、と考えています。週2回更新予定です。(シリーズごとにマガジンにしていく予定です)。東京都在住。
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